風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「山神を見た人びと」

2012-03-18 | 読書
岩手県の北部
下閉伊郡岩泉町は広大な面積を持つ。
ここ10年ほどの町村合併の前は
全国で一番面積の広い町だったはず。
とはいえ人口は1万人あまり。
人口密度は10人/平米をちょっと越える程度の
全国屈指の過疎の町であり、
かつては「日本のチベット」などという蔑称があった。

地底の湖で有名な龍泉洞が観光資源だが
あとは旧村ごとの地域別に独自の文化を持ち
昔からの慣習に沿って人々は慎ましく暮らしている。
「安家(あっか)」「卒郡(そっこおり)」
「有芸(うげい)」「鼠入(そいり)」
「宇霊羅(うれいら)山」など
町内各地に今も残る地名を聞いただけで、
いかにも土着の民俗文化が残っている感じがする。

その町に今も残る・・・というより
今も生きている言い伝えや伝説、生活慣習などを
何年もかけて丹念に収集したのがこの本。
お年寄りの語り口は古い伝説もつい先頃のような口調で
ごく身近な話のように語っている。
そしてその中身は、軽妙な話もあるが、
総じて人間の根源に迫るNative Spiritsだ。
人々は働き、食べ、産み、そして唄い、祈る。
自然を畏れつつ自然に生きる。

読み進めながら、どんどん惹き込まれるのを感じた。
そして自分の生活の中にも一部残っている慣習も
その根源を発見したような気もしている。
読みながら、久しぶりに神楽を舞いたくなった。

「山神を見た人びと」高橋貞子:著 岩田書院
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする