馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

陰部の蹴創

2016-11-14 | その他外科

朝、5歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

その前に、黒毛和種子牛の開腹手術を頼まれたが、関節鏡手術のあとに予定を入れた。

ほとんど同時に、蹴りあって陰部近くを怪我した繁殖雌馬の診療依頼。それも、あとで。

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関節鏡手術は1時間かからないで終わる。

怪我の馬が先に来た。

馬が後ろ向きで蹴りあうと、けっこう陰部や内股を怪我することがある。

丈夫な皮膚に守られていないし、窪んでいるので力が集中するからだろう。

きのうの怪我だそうだ。

もう「外傷治療のGolden time」(一般に6-8時間。それを過ぎた傷は感染していて、一次癒合を期待しない方が良い。)をとっくにすぎている。

傷は腫れて、汚れて、感染も進行している。

それでも、鎮静剤を投与し、尾椎硬膜外麻酔をして、さらに局所浸潤麻酔もして縫合した。

陰唇裂を縫い、

陰部の横から膣内へ穿孔している傷を閉じて、

直腸の横が深く裂けているのも縫合した。

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待たせておいた子牛を診療室に入れる。

2日前から腹囲膨満して、内科治療に反応しない、とのこと。

開腹したら、腹水が汚く、消化管の一部が腹壁に癒着していた。

さらに探ると、第4胃が大きく破裂していた。

一度穿孔し、癒着して部屋をつくっていた部分が壊死して破裂したようだった。

予後不良だ。

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午後は血液検査をして、

3歳競走馬の腕節の骨折の関節鏡手術。

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スーパームーン。

きのうの月の方がきれいだった。

でも、満月じゃなかった。

 


安静が大事

2016-11-11 | ワンコ修行

土曜日に捻挫して、日曜日までは負重不能。

月曜あたりから肢をつけるようになって、水曜にはもう散歩に行っても痛みも見せないし、大丈夫だなと思っていた。

今朝はこの冬一番の冷え込み。氷の上でゴロゴロ。

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しかし、まだ右の足根下腿関節は腫れていたし、熱感もわずかにあった。

今朝、シカを見て追いかけたがるので放してやった。

すごいスピードで走っていった。すぐあきらめて戻ってきたのは本調子ではなかったのかも。

それでも、こんだけ走れるならフリスビーして遊んでもイイナと、遊んでやった。

何せ元気が余っている感じだった。

そしたら、昼には肢を痛がって、少し浮かせていた。

捻挫して靭帯損傷しているのだろうし、まだ関節液が増えているように触るのは関節内に出血もしていたのだろう。

やっぱり安静にしていないとダメだね。

いつも牧場にはそう言ってるのに・・・・・・畜主側の気持ちと、安静の大切さを理解した今日でした。

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今日は、当歳馬の種子骨炎の関節鏡手術。

まだ原因もわかっていない難しい嫌な病気だ。

午後は、当歳馬の創傷性角膜炎の検査と結膜下チューブ留置。


立位での大円鋸手術

2016-11-10 | その他外科

すっかり顔が腫れて変形してしまった繁殖雌馬。

x線撮影では、右副鼻腔に曇りがあり、鼻中隔を左へ圧迫変形させている。

副鼻腔蓄膿だろう。腫瘍の可能性もある。

Bone flapと呼ばれる骨開窓手術をすることが多いのだが・・・・・

この馬は、もう骨が膨らんでいるので、健康な骨でなくなっていて、めくった骨を元へ戻しても癒合せずに壊死する可能性があると考えた。

出血が多い手術なのだが、立位でやった方が出血は少なく済む。

もう外貌を気にする馬ではないので、大きく円鋸して、骨はそのまま開いていても問題ない(皮膚で蓋はする)。

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毛を刈って、消毒して、皮膚をフラップ状に切って・・・

径5cmほどのドリルで大きく円鋸する。

透明な漿液が噴出してきた。

いくらか膿もある。

右の前頭洞はすっかり広くなっている。

健康とは思えない薄い組織で内張りされていた。

中隔を圧迫して左へ押しやっている。

背鼻道はよくわからない。

鼻道へ大きくドレナージしておきたいところだ。

感染は自浄作用で押さえ込まれたのだろう。

粘液も多くないようだ。

鼻道へ開通していれば、徐々に変形は修復され、鼻のとおりもよくなるはず。

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衆愚。

今に不満があるからといって、良くなるための方策を考えもせずに変えたり破壊したら、今より悪くなることの方が多い。

 

 

 


飛節軟腫 ワンコの

2016-11-07 | ワンコ修行

今年は急に寒くなったし、相棒は皮膚炎の影響か冬毛の伸びが悪いような気がする。

そんなこともあり、夜は玄関フードに入れてやることが多い晩秋だった。

毛布をかけてやったりはしません。

この写真はいたずら。

雨の土曜日の朝、外へ出したら急いで戻ってきて、玄関の段差を上りそこねたのか戸にぶつかった。

左後肢をぶつけたと思ったのに、そのあとから右後肢を着けなくなった。

しばらく様子を観たが、痛くて肢を着けない。

触ると痛がる。

異常可動はなさそうだが・・・・

Dyson先生の8段階グレードで言うと、7/8かな。

まったく負重できないが、身動きできないわけではない。

X線撮影してもらった。

うわっ!中足骨が何本もあるよ。が、馬のじゅういさんの見立て。

真面目にしげしげと見ても骨折はしていないようだ。

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翌日曜日は若い獣医さんたちを集めてのX線撮影の研修会。

借りた実習馬で50回近くのX線撮影をした。

相棒は夕方は少し痛みがひいたようだった。

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今朝のようす。

右の下腿足根関節が腫れている。

たぶん濡れた玄関の段差を上り損ねて捻挫したのだ。

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まだひどい跛行なのだが、動き出すと痛みを忘れるらしい。

散歩に連れ出すまでもなく、リードもつけずに逃げ出した。

やれやれ、きのうキャストを巻いたりしなくて良かった。

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小動物外科の教科書のコピーをもらった。

イヌの足根関節も靭帯損傷や脱臼・亜脱臼がけっこうあるらしい。

靭帯再建手術や関節鏡手術や関節固定手術が載っている。

獣医学って進んでるのね・・・・・


ひどい裂蹄のその後

2016-11-02 | 蹄病学

朝、シカに襲われた1歳馬が上腕骨骨折のようだ、ということで来院。

左胸に角で突かれた傷があり、肋骨も折れている。

そして、右前肢は負重不能。

X線撮影して上腕骨骨折を確認した。

斜骨折だが、粉砕しているようだ。

助ける術はない。

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ひどい裂蹄をおこし、蹄関節もひらいてしまった重種の仔馬。

ほぼ1ヶ月経って再来院。

歩きはとても良い。

前回の術後もほとんど痛みを見せなかった、とのこと。

Distal Limb Castをはずす。

傷の状態も素晴らしい。

もちろん蹄壁は癒合しない。しかし、軟部組織は癒合したようだ。

ただ、これから蹄球や蹄冠が開いてしまうと、そうなってからでは処置のしようがない。

せっかくうまく癒合しているので、またキャストを巻くことにした。

キャスト擦れもまったくない。

正直、ダメかな、と思うような怪我だったが、何が幸いしたのだろう。

発症してから時間が短かったこと、

徹底したデブリドメントと関節洗浄、

ワイヤーによる蹄壁の縫合、

キャストによる不動化、

これらは重要な要件だったように思う。