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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

立位での大円鋸手術

2016-11-10 | その他外科

すっかり顔が腫れて変形してしまった繁殖雌馬。

x線撮影では、右副鼻腔に曇りがあり、鼻中隔を左へ圧迫変形させている。

副鼻腔蓄膿だろう。腫瘍の可能性もある。

Bone flapと呼ばれる骨開窓手術をすることが多いのだが・・・・・

この馬は、もう骨が膨らんでいるので、健康な骨でなくなっていて、めくった骨を元へ戻しても癒合せずに壊死する可能性があると考えた。

出血が多い手術なのだが、立位でやった方が出血は少なく済む。

もう外貌を気にする馬ではないので、大きく円鋸して、骨はそのまま開いていても問題ない(皮膚で蓋はする)。

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毛を刈って、消毒して、皮膚をフラップ状に切って・・・

径5cmほどのドリルで大きく円鋸する。

透明な漿液が噴出してきた。

いくらか膿もある。

右の前頭洞はすっかり広くなっている。

健康とは思えない薄い組織で内張りされていた。

中隔を圧迫して左へ押しやっている。

背鼻道はよくわからない。

鼻道へ大きくドレナージしておきたいところだ。

感染は自浄作用で押さえ込まれたのだろう。

粘液も多くないようだ。

鼻道へ開通していれば、徐々に変形は修復され、鼻のとおりもよくなるはず。

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衆愚。

今に不満があるからといって、良くなるための方策を考えもせずに変えたり破壊したら、今より悪くなることの方が多い。