北海道獣医師会のランチョンセミナーで、河合先生の乳房炎の講義を聴いた。
乳房炎の起因菌について、頭の中を整理することができた。
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乳房炎とまとめて呼ばれるが、感染する細菌によって起きていることは別なのではないか?
私はそう考えるようになっていたが、それに近いこともおっしゃっていて興味深かった。
ロタウィルスの下痢と、サルモネラ腸炎と、コレラ、これらは全部腸炎だろうが、病気として一緒に考えることはない。
牛の細菌性乳房炎も、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌に感染するのと、大腸菌によるエンドトキシンショックを起こす乳房炎になるのと、連鎖球菌による乳房炎と、ひとまとめに考えようとするところに無理があるのではないだろうか。
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そして、専門家が原因菌をとらえようとしても、相変わらず約4割は細菌培養陰性なのだ。
このことも細菌性乳房炎の病態、診断、治療、予後を考える上でとても大きな鍵だろうと思う。
間違いなく細菌感染している。しかし、原因菌を分離培養することができない。それも4割の症例で。
原因菌は乳汁に含まれていて生存しているのに培養できないのか、
あるいはもう免疫機構によって殺されたり排除されているのに炎症が治まらないのか・・・・
そういうとき抗生物質を乳房内へ注入して意味はあるのか?
かつては、細菌検査と薬剤感受性試験が万能だと考えられた時代があって、
「乳房炎なんてちゃんと細菌検査して、効果がある抗生物質を選べば治る」
という獣医師もいた。
しかし、そんなふうにはいかないことが、細菌検査が普及して明らかになった。
それでも臨床獣医師は薬剤感受性試験に頼ろうとする。
それしか頼るものがないからだろう。
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小さな膿瘍ができてしまっているコアグラーゼ陽性ブドウ球菌の感染や、
エンドトキシンショックを引き起こしている大腸菌の感染や、
炎症が強くて乳管が閉塞してしまっている連鎖球菌の感染や、
それぞれの病態を別物としてとらえ、治療法を考えれば見えてくることもあるのではないだろうか。
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そして、牛の細菌性乳房炎は治療より前に予防を考える病気なのだと思う。
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別の話になるのだが、最近、家畜共済の給付基準の締め付けが厳しい。
かつては認められていたものも認められなくなっている。
しかし、そんな締め付けをしても、国が家畜共済で負担する費用が下がりはしないだろう。
それより、乳房炎などはもう家畜共済の対象からはずしたらどうか?
多い酪農家と少ない酪農家ははっきり分かれている。
それは搾乳衛生や乳牛の飼養管理と大きく関わっている。
もう保険で対応しなければならない事故や災害ではないと思うのだ。
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馬の後肢の怪我を麻酔なしで縫えという方がよほど理不尽だと思う。
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今日は、競走馬の腕節の剥離骨折の関節鏡手術を2頭。
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最初は相棒と一緒に、立って観た。
首が痛くなるし、寝転びたいのだが、寝転ぶと流星には興味ない相棒が大喜びして乗っかってくる。
それで、相棒をつないで置いて、寝転がって観ていた。
数個観ることができた。
私より視力が悪い娘が、私には見えない流星を見つけることができるようだった。
歳いくと、暗闇での視力や、動体視力が落ちるのだろう。
白内障でなくても、レンズも濁っているのだろう。
そして、願いごともかなわなくなっているのだろうナ・・・・・・・・・
理不尽ですね!
・・・なりたてのころ、2才馬の後肢の蹄冠内側の切傷を縫うことがありました、傷が小さく単純で、馬も落ち着いた性格の場所にも慣れた馬でしたので、強力な鎮静剤でことなきを得ましたが、それでもまあしたくない試練ですネーー;
外来の、繊細なサラブレッドの外傷をたくさん診られる病院には、あてはまらないことだとおもいます~☆!
・・・興奮と恐怖のため、記憶が増幅していたもようです^^;
うちの茶色のチワワも今日、シャンプーしたのですが、誰も気付いてくれません。
治療の道が狭められるのは牛さんにも酪農家の方々にもお気の毒に思います。
大動物のお医者様は危険も多く、ほんとに大変なお仕事ですね。
オラ君、首輪の色と空の色がいっしょ。さわやかな笑顔(?)!
プロだからこそ危ないことはしてはいけないと思います。
医療者を蹴り殺せる患者さんの医療。面白いですね;笑。
本人はサラサラ無臭ヘアーは気に入らないようで、今日はマイマイカブリを背中ですりつぶしてました;笑。
まだまだ大動物医療に対する理解が足らないというか、この程度で良いという侮蔑さえ感じます。家畜共済制度がなければ、もっと混沌の中に放置されるのでしょうけど。
相棒の写真を撮るのは難しいです。近寄っちゃいますし、カメラを齧りますから;笑。
あらゆる疾患に関して(怪我さえも!)農場の偏りが観察されますが、とりあえず乳房炎と似た状況にあるのは肺炎でしょう。
臓器の構造からして慢性化=難治となるわけでして、感受性に関しては治療効果のプライマリーでしかないでしょう。
乳房炎軟膏は肺炎における吸入の有効性に近いものでしょう。
喘息のステロイド吸入はてきめんと伺いますが。
肺炎にはウイルスという要因もありますが、多様なワクチンもある。
乳房炎の予防にたどり着くにはまだまだでしょう。
治療できないのに検査する、という次元に達しているなら私は廃用の論拠にすべきだと思いますね。
耐性菌や難治性菌を検出した場合、廃用にするべきでしょう。
薬剤の選択が乏しいのは仕方がないのですが、比して共済制度は治癒を求めすぎですね。
家畜共済以外にも、知識もスキルもない私事務職だからの一般職員が多すぎるかと思います。
診療報酬に関して言えば、薬品代を対象外にしたらよいでしょう。
生産者に利用してもらわなければならないですから、業者も安くすると思いますよ。
検査技術料に関してもっと細則かつ高いレベルのものも設定する。
高いレベルのものに関しては、それを実施できる診療施設を指定したらよいでしょう。
スケールメリットが出てきますから、ちょっと勉強して顔売ったら個人開業してガンガン稼ぐ、などという獣医師は多少減ると思いますよ。
流星群は一昔前のしし座流星群で果ててしまいました~
乳房炎を減らすための搾乳衛生はほぼ確立されていると思います。しかし、理想に近い実践をしている酪農場は少ないですよね。乳房炎になっても初診料だけで治療してもらえる。駄目になったら廃用にしてもらえる。今度はあの牛で、その次はあれ。となっていないかということです。
検査は保険でできますよ。あるいは乳質改善、乳房炎防除したいなら損害防止事業でお手伝いできますよ。しかし、治療や淘汰はもう自己責任です。として良い時代ではないかと考えています。