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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

一条先生

2024-02-03 | How to 馬医者修行

恩師一条先生が亡くなられた。

那須に居るときに研究室の後輩が連絡をくれた。

          ー

私は一条先生を獣医師としての自分の父とも思い過ごしてきた。

奇しくも同居している父と一条先生は同い年。昭和4年(1929年)の生まれ。

先生の教えを受けなければ今の自分はなかったと思う。

          ー

研究室の教授と一学生だったので、親しくお話しできるような関係ではなかった。

卒業してからも電話をするにも緊張した。

お忙しいかも、と思いながら電話すると、「はい、一条です」と暗い声で出られる。

「higです」と名乗ると、

「お~、hig君、元気かい」と、急に声のトーンが明るくなる。

いつも、なんだか嬉しくなった。

          ー

学生の頃から、ご自身の臨床への情熱も何度も語って下さった。

「もっと臨床をやりたい気持ちもあったんだけどね」

帯広市街にあった家畜病院分院の閉鎖も残念がっておられた。

閉鎖されたのは昭和45年(1970年)の話。

「臨床家は腰が軽くなきゃだめだ」ともおっしゃっていた。

面倒がらず、自分で診に行き、自分で調べてみること、やってみることの重要性を教えて下さった。

ご自身では、臨床と研究をつなぐ研究を進められ、多くの論文を書かれていた。

          ー

私が研究室に所属していた頃でも、

白筋症の研究で、微量元素セレニウムを測定していたし、

液体クロマトグラフィーでヴィタミンEを測定も測定していたし、

大脳皮質壊死症の研究で、ヴィタミンB1を測定していたし、

イヌとネコのパルボウィルスの感染実験をしていて、骨髄検査もしていたし、

電子顕微鏡で感染病理も調べていた。

それでいて、一条先生のところにはあちこちから難症例の相談が来るので、

それらが来院したり、ときには往診することもあった。

          ー

だからその当時の帯広畜産大学内科学教室に居ると、

ヴィタミン欠乏症、微量元素欠乏症、小動物、ウィルス感染症、血液病、骨髄穿刺、神経病、皮膚病、真菌症、などなどなど、

今から思えば、信じられないような多彩な症例を診て、多岐にわたる勉強をすることができた。

そして、一条先生は馬の経験も豊富な先生で、

馬の扱い、眼結膜の観察の方法や、重種馬を枠場に入れて肢を平打ち縄で固定する方法などを、手際よく見せてくださったりした。

          ー

多くの委託研究も受けられていたので、ホル牡㸿の農場を回って抗菌剤の効果の試験をしたり、実験馬を集めてイベルメクチンの駆虫試験をしたりもした。

それらの手伝いをしながら、学生たちは多くのことを学ぶことができた。

          ー

全道の農業共済組合の家畜診療所に教え子、卒業生、知合いが居るので、研究調査の依頼ができたり、

学生の臨床実習を頼んでくださったりもした。

私も大学院生のとき、「馬の診療を見てみたいんですけど・・・・」と言ったら、

「あ~それなら電話しといたげる」となって、三石へ実習に行くことになった。

          ー

日高地区農業共済組合に就職が内定していたころ、

「hig君、挨拶に行こう」

と、組合長をはじめ組合に一緒に挨拶に出向いてくださった。

忙しい1日を割いて、卒業生ひとりのために。

修士論文のテーマとして取り組んだ子馬の白筋症の調査が良い結果が出たので、

就職してすぐになるが、春の日本獣医学会で発表させてやってほしい、と頼む目的もあったようだ。

          ー

「hig君、早く論文にまとめろよ」と急かしてもくださった;笑

「学会発表だけじゃあダメなんだ。何も残らない。書かないと価値がない」と何度もおっしゃった。

私が、臨床をやりながら、少しずつでも調査研究論文を書いてきたのは、先生の教えによる。

evidenceとか、EBMなどという言葉さえなかった時代だが、一条先生もまたその先駆者のお一人だった。

教授になると、ろくに研究せず、教育にも情熱を失っているのが学生にもわかる教官もいる時代だった。

          ー

私に、大学の教官に来ないかという話があったとき、一条先生のお宅を訪ねて相談した。

「昔から10年以上勤められるなら大学へ移ったら良い。それより短期ならヤメテおいた方が良い、って言うんだ。

君ならまだ十分時間があるから、やったらいい」

と勧めてくださった。

大学の仕事に慣れ、まとまった仕事をするためには10年かかるという、長く大学に勤め、自らだけでなく多くの教授たちを見てきた一条先生のアドバイスだった。

諸事情で私は大学に勤めることはなかったが、貴重なアドバイスだったと思っている。

          ー

一条先生が定年退官された平成5年(1993)に刊行された「四十三年の回想」。

当時、帯広畜産大学の定年退官は63歳になった翌年3月ということだった。

研究業績目録によれば、論文が196編。

著書が12冊。

翻訳書が2冊。

総説その他が51編。

学会発表が207題。

修士論文と卒業論文が41編。

            ー

この序文に、内科学教室で勉強し、酒を酌み交わした「多くの未来ある学生」との出会いが最も強い印象であった、と書いておられる。

臨床と、研究と、大学人としての業務と、いそがしい中で教官、教育者としての覚悟を持った先生であった。

            ー

「ボクらがしっかりしないと、卒業生が肩身の狭い思いをするんだからね」

と何度もおっしゃっていた。

臨床と大学をつなぐ仕事をされ、卒業生とのつながりを大切にされた先生でもあった。

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ご経歴の賞罰で、二度だけ北海道獣医師会長賞が記されている。

「私は教育者で大学で研究をしているのだから、他の獣医さんと同じように賞をもらうわけにはいかない」

と、獣医師会の学会での受賞はいつも辞退されていた。

学会発表の内容や態度についても、いくつも厳格な視点をもっておられた。

それでいて、「あそこでボクが手を挙げてコメントすると萎縮させるから遠慮したんだ」

と優しい配慮をされる先生でもあった。

            ー

私は善い師に出会えて幸せだった。

            ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 


全国公営競馬獣医師協会研修2024 part2 腸管手術

2024-01-31 | How to 馬医者修行

私の担当の研修2日目は開腹手術。

馬の腸管手術について概要を説明したあと、実習馬を使って腸管手術の実習。

リクエストで、空腸切除、空腸盲腸端側吻合を練習してもらった。

安楽殺のあと、参加者全員に腹腔内探査を体験していただけた。

実際には、馬の獣医師をしていても腹腔内に手を入れて探る経験をすることはほとんどない。

自分で腹腔に手を入れて腹腔臓器の位置と触感を知っておくことは、内科診断学的直腸検査にも、体表からの超音波検査にも役に立つはず。

            ー

実習中、現役競走馬の疝痛で、小腸を3m切除吻合した馬が復帰戦で1着になった、とI先生から報告。

素晴らしい。

この研修の成果でもあるのだろう。

乗馬でも小腸切除した馬が競技会で好成績を挙げました、とS先生からも報告。

現在進行形で、教養センターの訓練馬も腸管手術の術後経過観察中。

開腹手術は、当初は「腸管手術までは・・・・・」と研修メニューに入っていなかった。

疝痛は馬の宿命。

獣医師が対応できないと、馬は悲惨な痛みの中で残酷な死に方をするしかない。

この研修は、日本の獣医さん達が馬の疝痛をなんとかできるようになる役に立ってきたのだ。

            ー

二日間、ほとんど立ちっぱなしで、しゃべり続けてかなり疲れた。

飲み過ぎたせいじゃないよ;笑

今年は寮の門限が10時に設定されて、9時には飲み会も必ず解散。

それはそれでなかなか良かったと思う。うん、間違いない;笑

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2002年から呼んでいただいてきたこの研修

2週間のうち2回行って、2往復したことがあるし、

2年間は7月にも開かれたこともあった

2021年と2022年はコロナ禍で開催できなかった。

2023年は開かれたが、寮が使えなかったのでホテル泊まりだった。

だから私はのべ24年、25回インストラクターを務めたのだと思う。

四半世紀。

私はこれでお終いにしようと思う。

物江名誉会長、上田会長をはじめ多くの方にたいへんお世話になった。

楽しかったし、多くの獣医さんと知合いになれたし、私もまた多くのことを学べた。

とても感謝している。

できればこれからも長く続いていってもらいたいが、運営、開催するのはたいへんな労力を要する。

もうお手伝いするのをやめる私がどうこう言えることではない。

1年に1回、集まって交流し、研鑽を積める。

こんな素晴らしいことはない。

           /////////////

帰り、千歳空港へはプロペラ機だった。

ジェット機より低い高度を飛ぶのだと思う。

鳥海山。

津軽半島、津軽海峡、渡島半島の西側の出っ張り松前半島。大千軒岳。

函館と渡島半島の東南側にある駒ヶ岳。

苫小牧、そして樽前山。

帰ってきた。

そして・・・・

 

 

 

 

 

 


救急外傷の診察の進め方 「整形外科基本手技」から

2023-11-30 | How to 馬医者修行

イラスト図解・整形外科基本手技

現在のヒト整形外科でどのような手技が行われているか、知るためには良い本だ。

その第一章、診断スキル。

病歴聴取に始まって、脊椎、肩、肘・前腕、手、股関節、膝関節、下腿・足、神経学的所見、

と部位ごとに解説されている。

その最期が、「救急外傷の診察の進め方」となっていて、実践的で面白い。

          -

まず、患者到着までの準備。

その最初が・・・・

「自分は外傷医であると心がまえする」

・自分の力量、病院の規模や施設、緊急手術対応可能か判断する。

・手順をふんだ診療を心がけ、早期に高次病院へ転送する。

となっている。

これは面白い。

笑っちゃいけないんだろうけど。

そして、現実だし、大事なことだ。

急患来ます!とか、重傷来ます!!とか言われたときに、

まず落ちついて、頭の中で整理して、そして判断すること。

うん、だいじ。

          ー

②は「あらかじめ患者を迎える準備をする」

・standard precaution まず自分の身を守る

・外傷患者は血液や体液が付着している。自分が感染しないように十分注意する。

・忘れないように頭から揃える。帽子、ゴーグル、マスク、ガウン、グローブ、ブーツ。

・救急カート。加温した輸液(リンゲル液・生食)、酸素、マスク、モニターにエコーの準備、X線の手配もしておく。

これは自分と同種の動物を治療するヒト医師には特に重要。

HIV(ヒト後天性免疫不全症候群)や肝炎はもちろんだが、

インフルやコロナもある。

とりあえず、大動物臨床獣医師は人獣共通感染症を特別には警戒していないかも。

ただ、注意は必要だ

           ー

そして、大動物獣医師は、診療中に怪我をしないように注意が必要

私もかつて「家畜診療」誌に、大動物臨床獣医師のための馬の取り扱いについて文章を書いた。

その中で、

まず自分の安全を守ること、を優先するよう述べた。

身勝手ではなく、自分の安全を守れないと、馬の治療も周りに居る人の保障もできないのだ。

        /////////////

私の最後の夜間一番当番の朝に来たひどい外傷。

そのあと疝痛の依頼もあった。

予定の手術は延期してもらった。

先に疝痛が来院し、診察して入院厩舎で様子を観てもらうことにした。

そして、外傷の洗浄、デブリド、縫合。

3人がかり。

それから、入院厩舎の疝痛馬を開腹。

空腸捻転で切除・吻合することになった。

私は、自分に「外傷医」であると言い聞かすことはない。

 

 

 

 


牛医療の現状と展望

2023-11-25 | How to 馬医者修行

日本獣医師会雑誌の2023年11月号の「産業動物獣医療の現状と今後の展望」と題された論説の紹介のつづき。

                                                 ー

産業動物の獣医療では、

獣医師の不足、

獣医師の高齢化、

新規獣医師の参入減少、

診療効率の低下、

収支の悪化、

代替獣医師の確保の課題

が顕在化していて、特に家畜飼養頭数の少ない都府県(道は抜かれているよ!)で顕著、と書かれている。

これは異論はない。

北海道は「家畜飼養頭数の少ない都府県」から外されているが、北海道においてもマンパワーの低下は感じられる。

そして、家畜診療所収支の悪化。

人件費をかければ獣医師は雇えるし、もっと人件費をかければ雇用でも、卒後研修もできるかもしれないが、診療所勘定が赤だとそうはいかない。

15年前の平成20年度(2008年度)までNOSAI家畜診療所の診療割合は70%を超えていたが、令和3年度(2021年度)は58.6%まで低下しているのだそうだ。

グラフによれば、開業もその他(他団体、家畜保健衛生所、大学など)もシェアが増えている。

地域の開業の獣医師も高齢化し廃業してきたはずだが・・・・

家畜保健衛生所や大学がそれほど地域の大動物診療を本気で請け負っているとは思えない。

            -

栃木県、東京都、大阪府、和歌山県は以前からNOSAIの家畜診療所がなく、令和5年4月からは静岡県もNOSAI家畜診療所を廃止した、とのこと。

石川県、京都府、和歌山県、島根県、徳島県、高知県、長崎県は家畜保健衛生所が家畜の診療を行っている。

離島・中山間地等の遠隔地や、診療効率の低い地域に対して獣医療の提供と維持に多大な貢献をしている・・・

とあるが、現実には毎日往診して診療しているとは思えない。

数日おきの診察と置き薬の配布がせいぜいではないだろうか。

(実際とちがっていたら御免なさい。あくまで私の推測です)

            -

私はNOSAI職員として働いてきたので、「先生のところは国営診療所だから」と言われることがある。

たしかに、家畜共済は国の法律に基づいて運営されているし、私が働いているのはNOSAIの直営診療所だが、倒産することのない国営や地方自治体所有とはちがう。

経営が成り立たなくなれば、人は雇えなくなるし、廃止・撤退・倒産しうる。

全国的には、以前から無”獣医”地域はあったのだし、それは広がりつつある。

北海道は家畜の頭数が多いので、NOSAI直営診療所がシェアを占めてきたが、それも厳しくなっている。

NOSAI北海道はあまりに広域化、大規模化されすぎて、経営・運営はとても難しくなった。

経営感覚、コスト意識が薄れれば、NOSAI北海道の直営診療所もたちまち成り立たなくなるだろう。

            ー

この著者は、「産業動物診療の未来を考える」として、

(1)獣医師の雇用確保

・新卒の雇用

・中途採用の雇用

(2)職場環境の整備

(3)遠隔診療

を挙げておられる。

「展望」ではあるかもしれないが、未来への提言としては私はこころもとないと感じる。

それは著者自身も感じておられるのではないだろうか・・・・

           -

私は北海道で大動物診療に身を置きながら、全国のこういう牛の診療の現状についてまとめたデータを知らなかった。

多くの獣医さんや牧場、農場の方もそうではないだろうか。

まず現状を知って、それぞれの立場で将来への展望と、建設的な方策を考えていただきたい。

          /////////

ゆうべは雪もちらついた。

今朝は冷え込んでいた。

ゆうべは人工流産させ胎仔を引っ張りださなければならなかった。

今朝は、ひどい外傷の急患に、疝痛の開腹手術。

突然寒くなって人も馬も堪えるのかも。

 

 

 

 

 

 

 


牛獣医療の現状

2023-11-23 | How to 馬医者修行

日本獣医師会誌2023, 11, 484-490 に掲載されている「産業動物獣医療の現状と今後の展望」と題された論説はたいへん興味深い。

これだけ牛の獣医療の現状を整理して示した資料を見たことがなかったので非常に参考になる。

書かれたのは富山県の開業の先生のようだ。

養豚、養鶏、馬の獣医療については触れられていないので、「産業動物」としないで「牛の」とすれば良いのに、とは思う。

           -

乳牛は、令和5年に全国で1,356,000 頭、そのうち北海道は842,700頭で、62.1%を占めている。

東北が95,800頭で全国の7.1%、北陸(新潟・富山・石川・福井)が11,800頭で0.9%、関東・東山(茨城・栃木・群馬・東京、神奈川・山梨・長野)が168,000頭で12.4%、東海が45,300頭で3.3%、近畿が23,300頭で1.7%、中国が46,700頭で3.4%、四国が16,100頭で1.2%、九州が102,100頭で7.5%、沖縄が3,900頭で0.3%。

以前、私も日本の牛はどこに居る?という記事を書いた。

それから10年近く経っているが、日本の乳牛の6割以上が北海道に居るのは変わっていない。

           -

肉牛は、全国で2,687,000頭、そのうち北海道は566,400頭で、21.1%を占めている。

東北が338,500頭で全国の12.6%、北陸が21,100頭で0.8%、関東・東山が286,900頭で10.7%、東海が128,100頭で4.8%、近畿が93,900頭で3.5%、中国が131,800頭で4.9%、四国が61,300頭で2.3%、九州が977,400頭で36.4%、沖縄は81,000頭で3.0%。

北海道で「大動物臨床獣医師」をやっていると、「牛」とはホルスタインのことだと思いがち。

それは、北海道には84万頭も乳牛が居て、日本の乳牛の6割以上を占めているから。

しかし、全国では乳牛は135万頭で、肉牛は268万頭。肉牛の方が倍近い。

診療の対象になるか?頭数と診療件数が比例するかは別にすれば、全国では「牛」とはまず肉牛なのだろう。

(ただし、種類はわからない。ホルスタイン雄やF1は肉牛扱いされているのだろうし、黒毛和種以外の肉用種も居る)

そして、九州おそるべし。全国の肉牛の36%を占め、97万頭。

北海道は肉用牛も56万頭と単独府県では最多とは言え、九州全体ではほとんどその倍だ。その飼養密度おそるべし。

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著者も指摘しておられるが、気になるのは飼養戸数の減少だ。

乳用牛飼養戸数も、肉用牛飼養戸数も、令和4年から令和5年だけでも5%ほど減少している。

国は大規模化、企業化させたいのかもしれないが、それは本当に日本の農業・畜産事情にあっているのだろうか?

戸数が減少し、畜産従事者が減少しても、自治体は畜産行政に力を入れ、国は政策を維持するだろうか?

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獣医師は、全国で35,855人。令和2年つまり2020年のデータだそうだ。

うち産業動物分野が4,400人、公務員農林水産分野が3,400人、公務員公衆衛生分野が6,000人(ほとんどの公務員獣医師は配置転換があるので、これはいつも入れ替わっているのだと思う)、小動物診療分野が16,200人、その他が5,800人。

その他とは、教員、民間会社、海外技術協力などに従事する者だそうだ。

そして、無職を含めた獣医事に従事しない者が4,400人。

 この40年の変化がグラフで示されていて、小動物臨床獣医師が3倍に増えているのが非常に大きな変化。

そして獣医師の数そのものは約3万人から4万人へと増えてきたのだ。

大動物臨床獣医師が不足しているとか、公務員獣医師が成り手がいないとか言われて久しいが、獣医師全体が不足しているわけでも減少しているわけでもない。

「獣医事に従事しない者」が全体の10%も居る。その率は大動物臨床獣医師の占める率と同じ。

「獣医事に従事しない者」の年代別の男女構成割を見ると、「獣医事に従事しない者」の40代では女性が83%、30代では75%、20代では57%。

就職氷河期で、まだ女性参画社会ではなかった40代の女性獣医師は難しい職業人生を選択しなければならなかったのかもしれない。

そして、産休育休制度が整いつつあるとしても、結婚、出産、育児は女性獣医師にとって獣医職を離れる機会や理由になるのだろう。

(個人にとっても社会にとっても、獣医事の中でも、それが良いとか悪いとか言うつもりはない。

ただ、現状だし、考えなければならないことだろう)

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長くなったので、つづく。

獣医師会会員には毎月日本獣医師会雑誌が届く。

学術学会誌部分はオンライン化され、タイトルしか載らなくなった。

「本号でご紹介する論文はありません」

という文もしばしば見る。

ビニル袋に入ったままゴミ箱へ入れる獣医さんもいるかもしれないが・・・・

2023年11月号のこの論説はぜひ読んでいただきたい。

将来の進路を考える獣医科学生さんの参考にもなると思う。

大学でも何かの講義の中で、獣医科学生たちにも紹介してやっていただきたいと思う。

現状を知らないで突っ込んでいくのも若さの特権だけど・・・ね。 

           //////////

久しぶりに夜に呼び出された。

厩舎内での1歳馬の大怪我。

馬房の扉に肢を突っ込んだらしい。

できるだけ皮膚を被せておいてハーフリムキャストを巻いた。