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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

文献「子牛2頭での角度固定インターロッキングネイルを用いた脛骨骨折の修復」part5

2023-01-09 | 牛、ウシ、丑

さて、子牛の脛骨骨折2症例をインターロッキングネイルで治療した報告のもう1例。

これもたしかに治療するのが難しい骨折だ。

螺旋骨折で、骨折部が長い。

大きく骨体が裂けているだけでなく、いくつも亀裂がある。

3ヶ月齢、89Kgのbeefalo という肉用種だそうだ。

乾草の塊の下敷きになった。

さて、著者らの内固定方法についての検討。

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ノンロッキングプレート(LC-DCPあるいはDCP)は当初適応だと思われた。

screwが引き抜かれるリスクは、構造的により強い骨により軽減されるから。

(3ヶ月齢なので、新生子牛より骨が強い、と言いたいのだろう)

さらに、皮質骨screwは両側の骨端板と関節から離れたところを狙うことができる。

しかし、3.5 あるいは4.5 mm プレート用に入手できるscrewの長さはbicortical(対側皮質へ届かせる)には短すぎる。

そこで、3.5 あるいは4.5 mm LCP であれば、LHSは入手できる長さで monocortical (手前の皮質にだけ効かせる)で良いので、考慮された。

しかしながら、症例1で書いたように、プレートの近位部は骨幹端の広がりに沿うように曲げなければならないので、screwは骨端板を貫く方向を向いてしまう。

このことは、医原性の非対称の骨端板閉鎖と、それによる患畜の肢軸異常を引き起こすリスクを増大させる。

 angle-stable interlocking nails の利点と、プレート固定の制限を考えた上で、インターロッキングネイルが理想的だと思われた。

さらに、サークレージワイヤーを用いた骨折固定が負荷抵抗を創り、このより体重がある子牛の大きな荷重からインターロッキングネイルを守る。

最終的に、症例1と同じように、インターロッキングネイルが他の骨折固定方法に比べて、財政的により経済的であった。

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LCPじゃなくて、DCPでも行けるかと思ったけど、対側皮質まで届くscrewが手に入らない。

それならLCPにLHSなら手前の皮質に効かせるだけでも良いかもしれないけど、LHSはLCPに垂直にしか挿入できないので、

骨端板(成長板)を貫いてしまう。それは、成長上の問題を引き起こす可能性がある。

というのが、著者らの手術方法選択上の主張。

確かに、難しい骨折ではあるのだが、同じタイプの骨折を私はDCPやLCPで治してきた。

螺旋骨折を完全に整復し、

lag screws を複数入れられるのでずれないように固定しておいて、

DCPでもLCPでも、ブロードが良いだろう。骨幹の長さに近いプレートで固定する。

骨幹部では手に入る長さのscrewで充分届くはず。

骨幹端では、対側皮質まで届かないかもしれないが、7cmほどの長いscrewになるので、必ずしもbicortical でなければダメということではないと思う。

そして、著者らがひたすら怖れている骨端板を貫くことは、大きな問題を引き起こすことはないことを私たちは知っている。

サラブレッドでもsingle screw 法で肢軸異常を治療するのだし、

サラブレッドでも子牛でも、成長板損傷だと成長板を跨ぐ内固定をするのだし、

それらの子馬や子牛のほとんどに大きな問題が残らないことを経験しているからだ。

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"Finally, the ILN was financially more economical compared with other osteosynthesis methods."

financially more economical という表現は私にはわからない。

インターロッキングネイルは、LCPにLHSをずらりと入れるよりさらに高価なんだろうな、と思うだけ;笑

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薪棚の薪の中で冬眠していたカメムシ。

去年の秋は大量発生したようだ。

薪と一緒に家の中へ運び込んでしまう。

虫が嫌いな人や綺麗好きは薪ストーヴには向きません。

 

 

 


文献「子牛2頭での角度固定インターロッキングネイルを用いた脛骨骨折の修復」part2

2022-12-29 | 牛、ウシ、丑

引き続き、子牛の脛骨骨折をインターロッキングネイルで治した。

プレート固定は適応ではなかった。という症例報告への私の反論。

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この文献で面白いのは、Ortho Viewという整形外科手術計画用のソフトウェアを用いていること。

取り込んだ画像にプレートを乗せたり、インターロッキングネイルを描き加えて、検討できるらしい。

3.5mm(ブロードだね)LCP(A;左上)

4.5mm(ブロード)LCP(B;左下)

3.5mm(ナロー)LCP 2枚(C;右上)

3.5mm(ナロー)LCP2枚(D;右下)

プレート内固定は次の理由のうち、少なくとも一つで不適切だと思われた。

(1)近位骨幹端部が短いので、プレートスクリューが多くても3本しか入らない。

(2)最も近位の骨幹端のじょうご状の広がりに沿うようにプレートを曲げるとLHSは必ず骨端板を貫通する方へ向いてしまう。あるいは望ましくない短いスクリューを使わなければならない。

(3)骨端板の下を狙って皮質骨スクリューを使うことはスクリューが引き抜かれるリスクを増やす。特に使えるスクリューの長さが制限されるのでbicortical (対側皮質にもスクリューを効かせる) ことができなくなると考えられる。

内側にプレートを2枚当てることも、幅の狭い骨には乗りそうもないので不適切だと思われる(右上)。

最終的に、垂直の位置関係でプレートを当てるのが機械的により強いのだが、脛骨隆起の骨折があるので適切な選択とは考えられない。

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と長々と屁理屈を書いている。

私がレフリーなら、

「50kgの子牛はナロープレートで大丈夫だろう。細い脛骨に2枚プレートを並べて乗せる(C;右上)案は基本から外れているので検討する必要はない。垂直に2枚当てる方法(D;右下)はやれば成功した可能性がある。

著者は、スクリューが成長板を貫くことを怖れているが、子牛や子馬では成長板が損傷することもあり、成長板をまたぐ内固定や、成長板を貫くスクリューは後遺症を残すことはほとんどない。

この段落の記述は短くするか、削除しなさい」

と指摘する。

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この著者は、だからインターロッキングネイルを使ったのだ、と主張したいのだ。

それが果たして適切か?

本当にプレート固定より優位性があったか?

引き続き考えてみよう。

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今日は、

腕節骨折の関節鏡手術。

午後は、橈骨の腐骨・骨柩摘出。

疝痛の入院馬2頭は帰っていった。

きのうは、スノボ2年目シーズンの初滑り。

雪少なくて、硬かったが充分滑れた。

今日は、体が痛い。

いつにも増してしゃがむのが億劫。

シニアだからね;笑

 

 

 

 

 


新生子牛の脛骨近位骨幹端粉砕骨折が癒合したのでT-LCPを抜去

2022-12-24 | 牛、ウシ、丑

生まれてすぐ脛骨近位を折ってしまった黒毛子牛

T型LCPで内固定した。

4日間立てなかったそうだが、9日後には患肢も完全に負重できるようになったとのこと。

5週間でX線撮影してもらった。

骨癒合は良好なので、47日目にプレート抜去することにした。

肢軸の異常もない。

体重76kg。

前回手術のときは0日齢で47kgだった。

黒毛子牛としてはとても大きかった。

何産もしている母牛なのだが、このお産では興奮してしまって子牛を蹴ったらしい。

痛かったのかも;笑

(76-47)/47=0.62 

DG 1日増体量 0.62kg/day は黒毛新生子牛としては悪くない。

キャストをして3肢生活で6週間を過ごしたのでは、こうはいかないだろう。

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今週は酪農学園大から学生が研修に来ていて、術前・術中のX線撮影やら術野の準備やら手伝ってもらう。

折れた骨の全長をX線撮影する、という当たり前のことさえ意外に難しい。

予想したより骨癒合は速かった。

牛の、新生仔の治癒能力おそるべし。

粉砕していても、破片は摘出しないほうが良い、という私の経験からの判断にも確信を深めることができた。

子馬と子牛での骨端板損傷の内固定や、子馬の肢軸矯正手術での経験からすれば、

6週間の骨端板成長抑制の副作用(成長板の閉鎖、肢軸異常)は問題ないはず。

プレート抜去は minimally invasive technique で行った。

穿刺切開でプレートスクリューを抜き、最後にT-LCPは助手をしてくれた学生さんに引っこ抜いてもらった。

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こうして観ても骨皮質はとても薄い。

元の骨幹を包み込むように骨増勢して骨癒合している。

近位骨端部はかなり大きくなった。

治癒過程というより、骨折を飲み込んで成長した感じ。

私の歳になると、うらやましささえ覚える;笑

もうひどい骨折をしたら、骨癒合は望めない歳だからね。

ご同輩のみなさん、危ないことはやめときましょう;笑

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手術は吸入麻酔で行いました。

牛さんは麻酔覚醒も順調で、軽トラに積まれて帰っていきました。

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うちの敷地の株立ちのカシワ。

大枝の1本がお隣へはみ出していたので、チェーンソーで切り倒した。

40cm前後に輪切りにして(薪用語で「玉」って言います)運び出した。

もちろん割って薪にする。

カシワは最上級の薪になる。

翌日はちょっと筋肉痛。

私にはもっと筋肉と成長ホルモンが必要だ;笑

 

 

 

 

 

 


診療実績2021 プレート固定、そして子牛の脛骨近位骨幹端粉砕骨折T-LCP固定

2022-11-15 | 牛、ウシ、丑

2021年度はプレート固定を13頭

プレート抜去手術は7頭を吸入麻酔で。

プロポフォール持続点滴麻酔で顔面骨骨折プレート抜去を1頭。

無麻酔、立位で尺骨骨折プレート抜去を1頭と、第三中足骨骨折プレート抜去を1頭、顔面骨骨折プレート抜去を5頭、下顎骨骨折プレート抜去を1頭。

牛のプレート固定が、橈骨1、中手骨1、TPC1。

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家畜高度医療センターでは、プレートを使って骨折を治療するのも、珍しい手術ではなくなっている。

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先週の日曜日、新生子牛が脛骨近位を粉砕骨折している、との連絡。

「必ず治せるとは言わないけど、治せる可能性は大いにあります。

給付外料金がかかりますけど、どうしますか?」

飼い主さんは、以前にも骨折した子牛を手術して治してもらった経験者だそうで、「やってください」とのこと。

確かに粉砕骨折だ。

近位側にプレートスクリューを入れる長さがないのが問題のひとつ。

骨端にもスクリューを入れて、成長板をまたぐプレート固定をするしかない。

しかし、ふつうのプレートでは骨端部にもスクリューは1本しか入らない。

脛骨近位骨幹端は割れてしまっていてスクリューが効かない可能性もある。

T-LCPを使えば、骨端に3本スクリューを入れられる。

LHSが効けば、体重を支えてくれる。

しかし、骨端の良い位置へ良い角度でスクリューを入れるのはなかなか難しい。

LCPはプレートの位置と角度が決まってしまうと、LHSの角度も決まってしまう。

近位骨端に1本LHSを入れることができた。

骨折の遠位部にはLHSが2本入っている。

47kgの大きな黒毛子牛だが、充分に体重を支えてくれるだろう。

骨折肢は、少し外反し、内向してしまった。

粉砕骨折なので、骨折部をぴったり合わせて完全な整復をすることはできなかった。

外反していることは悪くはない。

プレート固定が内側の成長を抑えるので、成長に伴ってこの肢は内反するだろうから。

新生子牛なので、骨癒合は速いかもしれない。しかし、粉砕骨折なので、骨癒合は遅れるかもしれない。

プレートは抜かなければならないが、6-8週間後だろう。

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新生子牛の骨折で問題なのは、赤ちゃんの重傷なので、他のダメージやリスクを抱えていることだ。

初乳製剤を飲ませて手術に連れてきてもらったが、低IgGかもしれないし、低蛋白血症かもしれない。

他の部位にも打撲や骨折があるかもしれない。

肺炎、下痢、臍帯炎、が多い日齢でもある。

母牛は、もう何産もしているのだが、興奮してしまって子牛を育てられるような状態ではない、とのこと。

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手術後、骨折肢の後膝は完全には屈曲しなかった。

関節近くにT-LCPを入れて、周りの筋膜をひっぱって傷を閉じなければならなかったせいだろう。

            ー

子牛は5日目に立てるようになったそうだ。

最初は三肢歩様だったが、徐々に骨折肢も着けるようになったとのこと。

9日齢には他の子牛の元気と差がないそうだ。

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これは麒麟。

だめだな~ こんな直飛(まっすぐな飛節のつくり)じゃあ

繋が短くて、立ちすぎている。

尻の筋肉が乏しくて、腹ボテじゃん。

こちらは鷽(ウソ)。

 

 

 

 

 

 

 


牛の気腫胎の帝王切開

2022-05-20 | 牛、ウシ、丑

牛が気腫胎のようで、帝王切開してほしい、との依頼。

開業の先生からだが、自身は診ていない。農家からの稟告。

間違いないのだろうということで来院。

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産道に手を入れたら頭も肢も腫れあがってとても産道からは出ない。

母牛はF1で、黒毛和腫より二周り大きい。

気腫胎は、すでにガス産生菌で腐敗変性しているので、羊水を腹腔へこぼしたくない。

母牛もすでに菌血症になっていることもある。

子宮内膜も感染と炎症でダメになっていることも多い。

しかし、胎子を出してしまわないことにはどうにもならない。

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管つきの針を子宮に刺して、腐った羊水を抜けるだけ抜いてから子宮を切開した。

うまく引っ張り出せた。

腹腔内も汚さずに済んだ。

母牛は、もう繁殖牛を引退して、肥育して出荷したいそうだ。

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分娩予定2週間前だったそうだ。

何かの原因で胎子が死に、ガス産生菌で腐敗したのだろう。

牛ではたまにあるのだけど・・・・・

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ユキヤナギ。

成長はこんなものなのか?