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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

初産黒毛の帝王切開

2023-11-14 | 牛、ウシ、丑

朝、地区の獣医さんから帝王切開しなければいけないかもしれないんですけど・・・と電話。

しかし、なぜ帝王切開をしなければいけないのか、どういう状況なのか要領を得ない。

まだ診てもおらず、農場から連絡があった、というだけなのだが、こちらが訊きたいことを把握していない。

農場から直接、その牛についてわかっている人に連絡してもらうようにことにする。

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分娩予定を3日過ぎて、過大子になりそうだ、と農場が判断して分娩誘発した、のが2日前。

昨夜は産道は開いては来ているが、まだ破水もしていない。

しかし、子牛の蹄がとても大きく、今朝も子宮頚管の開きも不十分で経膣で産めそうにない、との判断。

それなら、来て下さい。

診てみますけど、必要そうなら帝王切開します。

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来院して、帝王切開の術野の準備をしている間に、産道から診てもらう。

「出せそうだ」と言うので、羊膜を破って、産科チェーンを着けて、引っ張ってみるが・・・・

見えてきた蹄はとても大きく、両前肢を引っ張ると頭も捻れる、と言う。

子牛は生きている。

「帝王切開しよう」

子牛を生きて娩出させることが大切。

1年で200頭、牛の分娩を観る人が帝王切開して欲しいと言っているのだ。

経膣分娩でてこずって子牛を死なせるわけにはいかない。

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私がやるのが速いのだけど、もう私が経験を積むことには意味はない。

女性獣医師二人にやってもらう。が、患畜は練習台じゃない。

大きな雄子牛が生まれた。

”未経産”の母牛は知らぬ顔。

それでも、手術が終わって子牛をトラックへ運ぶときには少し反応した。

自分のものだと、少しはわかっていたのかも。

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この農場では、2産目以降に角を短く切るのだそうだ。

長くなって、牛同士の怪我を防ぐため。

現実的な方法かもしれない。

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午前中は、当歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後は、直腸膣瘻の修復手術。

続いて、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

季節はずれの臨床実習生ひとり。

前夜に手術した結腸捻転の競走馬は退院していった。

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白金温泉付近から観たオプタテシケ山

林道の遠く奥から登らねばならず、夏は水場もなく、山容も険しいので登る人は少ない。

しかし、鷲が翼を広げたような姿は美しく、私はこの山が好きだ。

頂上から二本の岩稜が続いていて、それぞれにB壁とA壁と呼ばれる岩壁が途中にある。

学生のとき3月に凍っていたこの岩稜を登った。

あの頃は元気で・・・・・○○だったな;笑

 

 

 

 

 


子牛の骨折治療の動画 Youtubeから

2023-01-29 | 牛、ウシ、丑

Youtubeにはいろいろためになる動画もある。

ただ、牛の骨折治療についての動画は少ないようだ。

いくつか見つけた。

HOW TO CAST A BROKEN LEG vlog 233

これは農場で、子牛の中足骨骨折をキャスト固定する様子。

それ以外の部分も長いけど。

私は、このキャストの巻き方が良いとも上手だとも思わない。

農場で獣医師ひとりで、DRも持っていないとありがちな処置かな。

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Fen Vet Webisode 44: A Cast of Friendly Heifers

こちらも同じ獣医さんのVLogシリーズ。

こちらは診療所へ運んで来られたので、診察台に上げて、X線撮影もして、助手も居て。

3週齢のシャロレー・アンガス子牛。

橈骨と尺骨が遠位よりの骨幹で短斜骨折(X線画像は10:30に)。

子牛の橈骨遠位の骨折はフルリムキャストで治せることがある。

ただし、関節に至っていない、成長板損傷がひどくない、良好に整復できる、粉砕骨折でもない、橈骨と尺骨が癒合してしまって障害を起こさない、などいろいろ条件が付く。

この診療所は、複数の獣医さんが居て、小動物もやっている(小動物が主?)MiXPracticeという形態だ。

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こちらは別な獣医さんの動画。

Cow Fracture Repair

数日齢のレッドアンガス。

脛骨遠位骨幹の長斜骨折だが、実は螺旋骨折から派生していて、亀裂が近位骨幹へ延びている。

「ありがたいことにオーナーが内固定手術に同意してくれたので、1枚か2枚のプレートで手術する」

2枚のLCPで内固定手術している。

内固定手技については、私はDiscussionしたい点がいくつかあるけど・・・・笑

この診療所も小動物主体のようだ。

きれいで、助手さんがたくさん居て、小動物用手術台の上で吸入麻酔で手術。

             -

家畜診療の内容だけでなく、

環境や社会構造や経済状況や、

獣医学教育のレベルや、

考えさせられることはいろいろあるのだけれど、

肢が折れちゃった子牛を目の前にしたとき、獣医師として自分にできることは何か、考えたい。

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すっかり牛の骨折の話題が続いた。

私は38年、家畜共済の獣医師として働いてきた。

「禄を食む」

というやつだ。

私の仕事のほとんどはサラブレッドの二次診療だったけれども、

日本の牛の臨床にも何か残していければ、と思って牛の整形外科について考えている。

今日から那須へ行くんだけどね。

寒いな~

北海道よりましか;笑

 

 

 

 

 


ホルスタイン5ヶ月齢187kgの中手骨骨折のキャスト固定

2023-01-17 | 牛、ウシ、丑

ホルスタイン5ヶ月齢が中手骨骨折をした。

縛ってあったまま暴れたらしい。

畜主は手術してでも治したい、とのこと。

しかし、中手骨骨折なら、よほどキャスト固定に向かないconfiguration 立体構造、配置、形態でなければキャスト固定で治せるはず。

しかし、5ヶ月齢にもなったら、往診獣医師が、農場で、医療者一人で、X線画像を同時進行せずに、理想的なキャスト固定をするのは無理だ。

手術と同じように、診療所へ運んで、複数の獣医師が協力して、牛を横臥させて患肢を牽引し、X線撮影を繰り返しながらできるだけ完全に変位を整復し、それを確認し、キャスト固定し、さらに確認した方が良い。

輸送中に開放骨折になったりしないように、立ったまま応急処置用のキャストを巻いて来院してもらうことになった。

中手骨遠位骨幹端の長斜骨折だ。

長斜骨折をキャストで治せるかどうかは、議論があるところだ。

横骨折や短斜骨折の方が、キャスト固定には向いている。

このキャストはあくまで応急処置用。

このようなキャスト固定だと、骨折端が皮膚を突き破って開放骨折になりかねないことがわかる。

骨折遠位部が外旋しているかな。

           ー

牛は、トラックから歩いて診療室へ入ってきた。

その前に体重を量った。187kg。

1. 鎮静して、胴締めをかけて倒す。

キャストを外す。

2. 蹄にドリルで孔をあけ、ワイヤーを通して患肢を牽引する。

整復して、X線撮影して確認する。

3. ストッキネットを二重にして肢に通す。

中手骨遠位部の骨折なので、ハーフリムキャストでも大丈夫かもしれない。

フルリムキャストにすると、生活が不自由になり、わずかとは言え橈骨や上腕骨骨折のリスクがある。

しかし、総合的に考えて、フルリムキャストにした方が良いだろう。

骨折部位の近位と遠位の関節を固定するのが外固定の基本だ。

4. キャストトップになる部位、副手根骨の掌側に外科用フェルト(エバウールシート)を帯状に当てる。

5. グラスファイバーキャストを巻いていく。

本当は少し腕節は屈曲させたい。しかし、そのことより骨折部が変位しないことを優先させる。そのために肢を牽引しておくことが必要なら牽引したままキャスト材を巻く。

6. キャストがほとんど巻けたところで蹄のワイヤーを抜く。蹄尖までキャスト材で覆う。

7. X線撮影してキャスト内で骨折部が変位していないことを確認する。

綿包帯をまいていないので、キャスト材と皮膚の間によけいなスペースはない。

もっと牽引して頑張れば、完璧な整復ができただろうか?

牛の骨折では、骨折端が1/2~1/3接触していれば骨癒合が期待できる、とされている。

もちろん、早く良好に骨癒合して早くキャストを外してやりたいけど。

この牛は、拮抗剤を投与してもなかなか立ち上がれなかった。

絨毯に乗せて、その絨毯をブルーシート2枚を交互に敷いた上を引っ張ってトラックへ運び込んだ。

農場へ帰ったら立ち上がって、フルリムキャストをしたまま上手に生活しているそうだ。

4-6週間で骨癒合が期待できる。

キャストの外からX線撮影して骨癒合を確認してからキャストを外す。

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牛の下肢、中手骨、中足骨の骨折はキャスト固定で良好に治癒する、ということになっているが、ある調査成績によれば治癒率は決して満足のいくものではない。

もちろん、開放骨折だったり、ひどい粉砕骨折だったり、新生子牛特有の問題を抱えていたり、状況はいろいろだろう。

子牛も半年を越えてくると200kg以上あるので、骨折部の変位の整復もたいへんだし、キャストの適応も悪くなる。

1歳未満の子牛の骨折は、全道で年間約400頭の共済病傷事故として発生しているそうだ。

治癒率はまだ向上させる余地があると思う。

日高は、他の地域に比べて明らかに治癒・救命率が良いそうだ。

X線画像器材が普及しているし、キャスト固定の技術があるし、二次診療施設が運営されているからだ。

           -

しかし、私たち以上に牛のキャスト固定に造詣と経験がある獣医さんが居るはず。

どなたか、牛のキャスト治療に自信があって、文章も書ける、という獣医さんが居ないだろうか?

自薦他薦を問わないので、教えてください。

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図書館の新刊書のところに並んでいた。

大版で、写真集のような本なので目立つ。

世界各地のオオカミと野生のイヌが美しい写真と文章で紹介されている。

オオカミから家イヌへの進化?についての最新情報も書かれている。

遺伝子分析の結果、東アジアの家イヌたちが、もっともオオカミに近いと考えられるようになっている。

柴犬や秋田犬など。

オオカミが飼い慣らされて人と暮らすようになったのが家イヌだと考えられてきたが、どうもちがうかもしれない。

家イヌはかなり古くから家イヌになるべく進化し、人との暮らしを選んだ。

世界中にはオオカミ以外にも多くのイヌ類、ジャッカル、コヨーテ、ハイエナ、などが居るが、家イヌがオオカミから派生したのは間違いない。

          ー

一匹のオオカミがクマに食べ物を運び、一緒に暮らした観察はとても興味深い。

そんなことがあるんだ、と驚くが、そういうこともあるかもしれない、とも思う。

メルヘンのようでもあるが、生き物とはそういうものかもしれない。

とても良い本だ。

         

 

 

 

 

 

 


文献「子牛2頭での角度固定インターロッキングネイルを用いた脛骨骨折の修復」part6

2023-01-12 | 牛、ウシ、丑

さて、この2症例報告では、Discussionにおいて、子牛の体重と増体量が検討されている。

どうしてこんな手描きのグラフなんだかわからない;笑

アスタリスクの箇所だけが、実際の体重測定なので、それぞれ3回計っているだけだ。

生後5日齢で骨折したホルスタイン(青線)は4週間後まで0.23kg/日しか増体していない。

まあ、堪えたのだろう。

Beefalo(赤線)は12週間で骨折したが、その前後でも0.6kg/日と安定した増体だった。

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まだ未発表の成績なのだが、私たちの黒毛和種子牛の骨折プレート固定の経験では、

ほとんどが、0.6kg/日以上の増体が骨折後の1-2ヶ月に得られている。

骨折の手術に来たときと、プレート抜去手術に来たときには体重計で正確に体重測定できるので、算出できるのだ。

フルリムキャスト固定して、不自然な姿勢でしか伏臥できず、寝起きが不自由だとそうはいかないのではないか、と思っているのだがどうだろう。

どなたか、骨折子牛の増体量のデータを知っていたら教えてください。

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参考になるデータだが、

虚弱黒毛和種子牛で、0.75±0.11kg/日

正常黒毛和種子牛で、0.89±0.14kg/日

だったという日獣会誌への報告

これは引用文献として使える。ありがたい;笑

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もっと日齢がいった時期では、

3ヶ月で離乳すると0.7kg/日

7.5ヶ月まで離乳しないなら、1.1kg/日

だった、とする日本畜産学会報への報告

これも引用文献として使えるだろう。ありがたい;笑

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私たちが骨折をプレート固定で治した黒毛和種子牛は、雄なら肥育素牛として売買されていっている。

その値段は、飼い主さんが充分満足がいくものだ。

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牛の骨折手術は、静脈麻酔でするにしても、気管挿管しておきたい。

吸入麻酔してやるなら当然必要だ。

これは馬のTieback手術中の気管tubeのカフの様子。

あまり膨らませすぎると破裂するかもしれないし、気管粘膜を圧迫壊死させる。

気管tube自体を押しつぶすこともあるようだ。

膨らみが足りないとエアーが漏れる。

牛の気管挿管は、馬より難しいよ。

 

 

 


文献「子牛2頭での角度固定インターロッキングネイルを用いた脛骨骨折の修復」part6

2023-01-11 | 牛、ウシ、丑

さて長々と critical reading 批判的熟読 している子牛の脛骨骨折をインターロッキングネイルで治療した2例報告。

症例2は3ヶ月齢、89kgの螺旋骨折。

まず、骨折部を切開し、骨折を整復して、サークラージワイヤーで5箇所締めている。

私はサークラージワイヤー手技を使ったことはない。

たいして固定力はないと思うのだ。

ただし、このような長い螺旋骨折だとずれを防いでくれるかもしれないし、

亀裂から縦に裂けるように骨が割れるのを防ぎ、もし割れても変位を抑えてくれるかもしれない。

かなり長く下腿部を切開することになったはずだ。

脛骨の全周から筋肉、血管、神経が剥がされ、骨膜が圧迫されることになる。

手術としては Open Reduction and Internal Fixation ということになる。

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それから、著者らは膝関節を屈曲させ、膝関節を切開しインターロッキングネイルを入れている。

この著者らは、プレート固定してscrewが成長板を貫くのをとても嫌っている。

だけど、screwよりはるかに太い髄内ピンが成長板を貫くことになる。

いいの?;笑

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4週間後、骨癒合のしかたはみごと。

贅骨もほとんどなく、最良の骨癒合と言っていいだろう。

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意地悪を言うなら、この脛骨の近位成長板に早期閉鎖の所見がないか、対側肢と比べて欲しかった。

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富良野の有名店「くまげら」の店内に、

倉本聰さんは偉大だな。

日本中がバブルに浮かれる前に、あの「北の国から」を書いた。

富良野への功績はとても大きい。