真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「肌の隙間」(2004/製作・配給:国映・新東宝映画/製作協力:Vシアター/監督:瀬々敬久/脚本:佐藤有記/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/音楽:安川午朗/撮影:斉藤幸一/録音:山口勉/編集:酒井正次/助監督:坂本礼/監督助手:伊藤一平・菊池健雄/撮影助手:鏡早智・柴田潤・花村也寸志/録音助手:黄永昌/編集助手:今井俊裕・矢吹英理香/スチール:夏野苺/制作:永井卓爾/メイク:島田万貴子/衣裳:半田さち子/特殊メイク:西村喜廣/キャスティング:小川真司/タイトル:道川昭/タイミング:安斎公一/整音:福島音響/現像:東映ラボ・テック/協力:田尻裕司・榎本敏郎・堀禎一・松本唯史・清水雅美・田山雅也、他/出演:不二子・小谷健仁・伊藤洋三郎・飯島大介・三浦誠己・佐々木ユメカ・須合将太・岩田治樹・原尚子・吉村実子)。出演者中、三浦誠己から原尚子までは本篇クレジットのみ。
 ヘルメットもワンピースも赤い女が危なつかしく蛇行運転で転がす、ぐつたりとしたタンクトップの少年と二尻の赤い原チャリ。改めて観てみると、バックミラー越しとはいへ佐々木ユメカが案外明確に見切れる車が、苛立ちながら原チャを追ひ抜く。須合将太が、車の中から振り返り二人を目で追ふ男児か。どうやら失神してゐる、少年の腕は女の腰の前で縛りつけられてゐた。女はダウン症の平井妙子(不二子)で、少年は妙子の甥の秀則(小谷)。二度の転倒を経て、妙子は原チャリを無体に放棄。秀則は初めて会ふ祖母にして、妙子と秀則の母である姉・ユキコ(一切登場せず)の母親(吉村実子/苗字は多分鈴木)宅に辿り着く。鈴木家のテレビは、ユキコが殺害された事件を伝へてゐた。世間が事件の犯人を、秀則を連れ失踪した妙子と目してゐる一方、実際にユキコを殺めたのは、息子である秀則であつた。
 配役残り伊藤洋三郎は、理容鈴木を後にした妙子と秀則を拾ふ、自動車を使つての移動アイスクリーム売り、三浦誠己は一行が立ち寄るガソリンスタンドの店員。伊藤洋三郎も通過、二人は無人の山荘に転がり込む。ほかにそれらしき人影も見当たらないゆゑ恐らく、原尚子は里に下りた秀則が足を踏み入れた民家に、帰宅する女学生か。山荘にて自害を図つた秀則を抱へ、妙子はニューシネマ感覚でトラックの荷台に忍び込み東京―か横浜かその辺り―に舞ひ戻るだか流れ着く。飯島大介はいはゆるテント村にて二人を匿ふ、秀則の腹の傷を縫合するスペックも持つ妙に逞しい浮浪者、岩田治樹もホームレス要員か。
 公開当時故福岡オークラで観て以来初めて再見した、問題作「トーキョー×エロティカ 痺れる快楽」(2001)から更に三年の時を隔ててのゼゼ・ラスト・ピンク。リアルタイム以降―ピンクの―小屋で再映した話も聞かない今作が、何でまたこの期に地元駅前ロマンに着弾したのかは清々しく計りかねる。
 瀬々敬久ピンク映画最終作といつて、より直截には「ピンク映画か、これ?」といつた感触。不二子の濡れ場は思ひのほかそれなり以上に設けられはするものの、女の裸に脊髄反射で棹を立てられるほどピュアでなければ、ヒリヒリとしかしてをらず扇情的な代物では凡そない。裸映画であることを初めから否定した態度に関しては矢張り不誠実の誹りも免れ得まい上で、素面の劇映画としての主眼はダウン症の叔母と母殺しの少年の、絶対的な喪失感がグルッと一周しかねない逃避行。ビリング頭二人のギリギリした芝居には圧倒されつつ、映画のパンチを喰らひ、銀幕のマットに沈むまでには至らなかつた。吉村実子―と伊藤洋三郎―の退場のぞんざいさ加減以上だか以下に今回観返してみて首を傾げたのが、妙子が頑なに目指す“がいこく”感を漂はせなくもない、何処でもなさぶりが逆にサマになる片田舎から、妙子と秀則が最終的にそこいらの東京近郊に帰つて来てしまふ、突き抜きかけたロード・ムービーの、進路を安んじて塞ぐ謎行程。繁華街の真ん中で叫んだ絶望が画になるのは、世界が滅んだSF映画か人類が―ほぼ―絶滅したゾンビ映画くらゐなのではなからうか。

 それから、何度観ようと相変らず、安川午朗が何の仕事をしてゐたのか俺の耳にはチンプンカンプン、馬鹿には聞こえない音らしい。


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