真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「中川みず穂 ブルーコアin香港」(昭和61/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/脚本・監督:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:李伯鐘、鐘文、林偉文《ホンコン》 シブイ・工房《日本》/助監督:鎌田敏明・大内祐・遠藤聖一/撮影助手:佐久間栄一/コーディネーター:Charles Cho《ホンコン》/音楽:AMI企画/美術:衣恭介/効果:協立音響/編集:竹村峻司/スチール:津田一郎/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:中川みず穂・川上雅代・風原美紀・牧村耕治・青木竜也・泉ワ輔・野上正義)。
 適当な割にそこそこ尺を喰ふ香港ショットと概説ナレーション経て、ナレーションと、後に1カット見切れる置手紙とで名前の異なる香港の富豪(野上)登場。以下便宜上ガミさんと、多分川上雅代の絡みの途中で暗転してビデオ題のタイトル・イン。散発的に織り込まれる東京パート―それゆゑ、VHSパケにある“香港オールロケーションによる超大作”といふ惹句は必ずしも正確ではない―を込み込みで整理すると、ギャンブルに明け暮れるブン屋気取りのヒモ(青木)とのクサクサした生活に厭き、香港に遊びに来たホステスのユウコ(中川)が彌敦道の宝石店で模造品を買つたところ、店の表でオーナーのガミさんに声をかけられる。屋敷に招かれたユウコは、前妻とは三年前に死別したガミさんの、正妻の座に何時の間にか納まる。何時の間にかとは何事かといふ話なのだが、あくまでこの時点では明後日帰国する予定のユウコとガミさんの濡れ場後、本当に何時の間にか奥様になつてゐたりする底の抜け具合につき最早どうしやうもない。
 配役残り消去法で風原美紀は、中川みず穂の顔見せ挿んでガミさんが第二戦を戦ふパイパン処女。牧村耕治はガミさん邸のボーイ、ところで香港人の筈のガミさんもボーイも、開き直つたかの如く当たり前に日本語を話す。ヒモの花札と麻雀相手、ユウコが働く店のバーテンに初めてのアフター客、東京パートに十人弱見切れるその他勢は手も足も出せずに不明。問題が、とつくの昔に故人の泉和助(昭和45年没)に酷似した名義の泉ワ輔といふのが、香港にはそもそもそれらしき登場人物が見当たらず、東京だとするとどの人を指すものか矢張り特定不能。
 とまれ―ピンクにしては―大規模な香港ロケを観光もとい敢行した、木俣堯喬監督最終作、元題は「中川みず穂 ハードポルノ絶頂」。因みにjmdbをつらつら眺めるに、細君・珠瑠美の昭和61年最終第六作となる買取系ロマポ「香港絶倫夫人」(脚本:木俣堯喬/主演:川上雅代)と、二本撮りしたものと見てまづ間違ひないのではなからうかと思はれる。わざわざ香港くんだりまで出張つておいて、ヒロインたるユウコがガミさん邸に入つて以降そこから殆ど動かない出不精につき、然程有難味があるでもない。細部を端折つてばかりのザクザクした展開が突発的に、もしくはより直截には明後日に跳ねるのは、あちこち飛び回るガミさんが家を空ける隙に、ユウコが鍛錬するボーイを見初める件。牧村耕治のいはゆる怪鳥音と、頓珍漢なムーブを披露する珍拳法が捧腹絶倒。そこだけで大満足と見做すか、そのぐらゐしか見所がないと捉へるかは個々人のその時々の機嫌にでも委ね、最早俎上に載せる要もあるまい。凄まじいのが、下衆く深読めば引つ繰り返つた新東宝の姿も目に浮かぶ、空前絶後に酷い結末。折角なので堂々とバレてのけると、ボーイがユウコの部屋の前まで招いたと思しき、青いスーツの足元の正体はスッ飛ばしたまゝに、ユウコのボーイとの不義は、やがてガミさんに発覚。ボーイは馘、ユウコは監禁される。ユウコが何とかかけた国際電話でヒモを呼び寄せ、一発形勢逆転今度はガミさん監禁。どうにか拘束を自力で解いたガミさんが、ヒモとセクロスの最中のユウコに剣を振りかざし、悲鳴!・・・・かと思ひきや。スクリーム明けが獄中のガミさんまではいいとして、一方ユウコはヒモと普通に香港をサイトシーイング。啜り泣いてゐるのか笑つてゐるのか判然としないガミさんに、“彼は完全に狂つてゐた”なる字幕を投げ込むやクレジットが起動するラストはある意味確かに要撃的。全然面白くないことには百歩譲つたとて、100パーセント理解出来ない壮絶な投げ放しぶりに関しては腰骨も粉砕必至。本当意味が判らないんだけど、全部老囚人の妄想オチ?拡げた風呂敷の大きさが映画のスケール感にではなく、より際立つ仕出かし臭、あるいは破壊力に直結してしまつた超大作ならぬ超怪作。新東宝を激怒させた懲戒作?とまでは流石に言ひ切れぬにせよ、改めてjmdbを一瞥するに恐らく最初で最後の新東宝戦にて、斯くも豪快にやらかしてみせた木俣堯喬たら何てお茶目さん。

 以下は前作「ザ・夜這ひ」(昭和60/主演:城源寺くるみ)をフィードバックしての付記< 配役最後の残り泉ワ輔は泉和助の弟子で、ユウコホステス時代の初アフター客


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コメント
 
 
 
ちなみに川上雅代は (XYZ)
2015-10-04 15:02:22
元 織本かおる
 
 
 
>ちなみに川上雅代は (ドロップアウト@管理人)
2015-10-05 00:43:36
 うわあ、全然気付かない俺の節穴(;´Д`)
 但し推定は当たりでした、有難う御座いました。
 
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