真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「はみ出しスクール水着」(昭和61/製作:獅子プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功/プロデューサー:半沢浩/アシスタント・プロデューサー:谷口公浩/撮影:志賀葉一/照明:岩崎豊/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:小原忠美・瀬々敬久/撮影助手:栢野直樹・片山浩/照明助手:森下徹・松隈信一/記録:高山秀子/美粧:庄司真由美/振付:土田一代志/スチール:西本敦夫/車輌:JET-RAG・金子&船橋/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:清里めぐみ・森田水絵・川上雅代・野川雪美・小林あい・野上祐二・外波山文明・ジミー土田・古田信幸・会田雄二・螢雪次朗・池島ゆたか)。出演者中、外波山文明と古田信幸は本篇クレジットのみ。
 シンクロをチャプチャプ泳ぐ主演女優に、クレジットが並走。水中での大股M字に監督クレジットと、追走してタイトル・イン。水の中に潜み勃つただ出ただと騒ぐ、馬鹿二人は不明。フィニッシュをニッコリ決めた青葉学院シンクロナイズド・スイミング部部員・秋野素良(清里)の演技を、顧問の角丸蔦子(川上)は行水かと思つたと一笑に付し見てなどゐなかつた。素良に代つて、仰々しく「白鳥の湖」も起動させプールに入るシンクロ部キャプテン・宗源寺蘭子(森田)と素良の差が、観客には甚だを通り越し全く判り辛い点に致命傷の起爆装置が水上に露出する。その先には五輪を見据ゑたアジア大会を目前に、ムチムチ肉感的な肢体から優雅さに欠けると、蘭子は―蔦子も―素良を歯牙にもかけなかつた。
 配役残り小林あいは、泳げない癖にシンクロ部員の村田波子。実は未だ処女の素良を尻目に、テレクラで奔放に男を漁る。螢雪次朗はパチンコ屋感覚の場内アナウンスをガンガン敢行する、素良の父親で銭湯「日の出湯」の大将・清七。ドラえもん・怪物くん・パーマンが躍る大らかさと、片隅にはエリマキトカゲも走る日の出湯女湯(客の裸要員は計四名)の壁絵が時代を感じさせる。古田信幸は波子の目を盗みくすねたテレクラ「HOT TOWN」のピンクチラシを手に、素良が耽るオナニーに登場する憧れの誰かさん。野川雪美は“剃毛と三日間の自宅謹慎”なる校内処分を喰らふほどの剛どころか爆毛が悩みの種の、シンクロ部員・松原繁子、繁子といふのも笑かせる。会田雄二は乞はれた剃毛あるいは刈毛を経て繁子と事に及ぶ、同級生の手島浩一。「ねえ剃つて」と露にした爆毛に度肝を抜かれた手島君が、窓からお隣に芝刈り機を借りに行かうとするのが捧腹絶倒な繁子V.S.手島戦。生ひ茂る陰毛越しを方便に、結構―模型だらうが―女陰描写に切れ込む。ジミー土田はシンクロ部員が口を利くことも禁じられる、水泳部員の清水隆夫、戯画的な大巨根の持ち主。出オチの外波山文明は意を決して「HOT TOWN」に電話をかけてみた素良を待ち合はせ場所にて閉口させる、脂ぎつた歯抜け男。そして電車痴漢されてゐるところを助けた素良と再会する男前ぶりを発揮する野上祐二が、蘭子のアジア大会優勝を目的にアメリカから招聘された、特別コーチの龍神俊一、名前からイケメンではある。最後に池島ゆたかが、蘭子の父親にして青葉学院理事長・宗源寺十郎、川上雅代の濡れ場はこの人が介錯。
 非人道的な繁忙期におとなしく屈し、小屋では辛抱せずに寝た滝田洋二郎昭和61年第三作とDMM再戦。この年の頭に「コミック雑誌なんかゐらない!」(共同脚本・主演:内田裕也)を発表した滝田洋二郎にとつては裸映画から離れる今際の間際、買取系ロマポに専念してゐた時期に当たる。
 物語的には下町生まれのヒロインが二枚目のコーチも挟んで高飛車な令嬢と対決する、定番中の大定番のスポ根もの。さうはいへ御題が無理難題といつてしまへばそれこそ元も子もないにせよ、肝心要のシンクロ・シークエンスが凡そ説得力を持ち得ないのが如何せん苦しい。結局クライマックスの一発大逆転はおろか、劇中所与のものとして蘭子が素良に誇る決定的なアドバンテージが認め難いとあつては、そもそも展開の骨組みが端から成立してゐない。名匠・滝田洋二郎の手によるものとはいへ、賑々しく女の裸は愉しませるに止(とど)まる、平板な裸映画に過ぎまい。

 改めて川上雅代はex.織本かおる。五年後に再び織本かおるでの活動歴が見受けられるのは、ブランクを邪推するに一旦引退を経ての復帰期間か。

 付記< jmdbによると織本かおるが1991年に三本復帰してゐるのが、どうも織本かおりとの混同臭い。小川和久(現:欽也)1991年第三作「はめられて」がex.DMMで見られるゆゑ、近々答へを出す


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