真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「小悪魔メイド 後ろからお願ひします」(2014/制作:セメントマッチ・光の帝国/脚本・監督:後藤大輔/プロデューサー:池島ゆたか/原題:『宝はここに』/撮影:飯岡聖英/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/サウンド:シネキャビン/タイミング:安斎公一/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:浅倉茉里子・末松祐紀・梅田裕多/現場応援:小山悟・中川大資/現像:東映ラボ・テック/スティル:津田一郎/カメラ:アリフレックス35Ⅲ《Assist》/フィルム:コダック VISION3 500T 5219/出演:早乙女らぶ・なかみつせいじ・里見瑤子・野村貴浩・松井理子・永井卓爾)。出演者中、永井卓爾は本篇クレジットのみ。ポスターの迷惹句“ご奉仕一図 何からナニまでお申し付けください!”といふのは、それ“一途”ぢやね?(´・ω・`)
 千切れ雲の浮かぶ空、波打ち際。引いた画で元漁師の野々村作造(なかみつ)が砂浜に多分金属探知機を向けながらソロリソロリと何かを探してゐる風情で歩き、その少し後ろを、下着を着けてゐるとはいへ、限りなく裸エプロンのメイド兼助手・純(早乙女)がついて行く。ガイガーカウンターのやうな作動音で探知機が反応、二人でここ掘れしてタイトル・イン。作造の息子・薫(野村)が、婚約者・高梨晴美(松井)を父親に紹介すべく天草の実家を目指しベンツの軽自動車を走らせる。といつて、ベンツ社が軽を出してゐる筈もなく、翌朝実家の表に車を停めた、画面手前のピンボケエリアにスズキのエンブレムが霞んで見える、カミングアウト気味のカットも設けられる。ついでに天草といふのも長崎ロケを敢行する訳がなく、実家物件は毎度御馴染みの南酒々井。閑話休題、今作最大の衝撃は、催した晴美に応へての、一旦駐車しての車中婚前交渉。まるで自爆ギャグかの如く、オッソロシイ勢ひでサイドミラーに映り込むスタッフには度肝を抜かれた。最早俺達を見て呉れといはんばかりの堂々とすらした見切れぶりには、後々メタ方面に展開するのかと余計に勘繰つてしまつた、あれは一体何だつたんだ。一方、掘つた穴から出て来たのは何故かバイブ。作造が漁師を辞めトレジャーハンティングに現を抜かすやうになつたのは、たまたま見付けた天草四郎の遺品がマニアに五百万で売れてから。純とは、お宝探しの最中浜に打ち上げられたのを助けた形で出会つてゐた。早速バイブ戦、本戦に移行するも中折れした作造が、通販で注文したバイアグラが届いてはゐないかと全裸で郵便受けを覘きに出たへべれけなタイミングで、到着した薫・晴美と鉢合はせる。
 陰々滅々、死屍累々の問題作「家庭教師 いんび誘惑レッスン」(2013/監督:国沢☆実/脚本:内藤忠司)以来まさかのピンク映画第二作となるも、髪型が長さから全く異なるのもあり個人的には限りなく初見の印象の早乙女らぶを主演に擁した、後藤大輔2014年第二作。グジャグジャ腰の重い晴美を残し、一人で没母―の筈の―照子(里見)の墓を参る薫に、買物途中の純が出くはす件では、この女目がトンでねえかと軽くでもなくハラハラさせられるものの、穿ち過ぎた杞憂であつたのか辛くもであつたのか、兎も角始終は無事乗り切る。里見瑤子は落ち着いて澄ましてゐる反面、終始キレッキレに弾け倒すなかみつせいじと、スチャラカな親爺に対照的にクールに匙を投げる野村貴浩の掛け合ひは出色。とはいへ粒の小ささは否めない物語が、文字通り二転三転、ついでにもう一転してみせる終盤の正しく急展開には驚かされた。エクスキューズ頼みの芸を欠いた作劇ともいへ、純が啖呵でも切るかの如くいはゆる“衝撃の真実”を開陳する一幕には、素直にハイライトたる強度が漲る。二番手三番手は申し訳程度に済ませた反面早乙女らぶの蕩けるやうな濡れ場はてんこ盛りに、一撃必殺のエモーションを撃ち抜いた前作「巨乳事務員 しやぶれ!」(主演:麻宮ももえ)同様、全体的にはギャースカギャースカ騒ぐほどではないにせよ、主演女優の見せ場はしつかり見させる、女優映画としては綺麗に成立してゐる。だから後藤大輔は主人公夫婦どちらかの生殖機能に問題を生じさせないとドラマを書けないのか、などといふ邪推はさて措けさて措け。

 配役残り、ラストに紛れ込む幾分痩せたかも知れない永井卓爾は、享年十七の天草四郎時貞。天草四郎といへばジュリーだろ、と声高に主張するつもりはないが、それ以前に純然たる蛇の足。


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