真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「隣のうづき若妻 ~スワッピング三昧~」(1995『ザ・夫婦交換 隣の若妻の味』の1998年旧作改題版/製作・関根プロダクション/配給・大蔵映画/監督:川井健二/脚本:森満康巳・川井健二/撮影・伊東英男/照明・秋山和夫/録音・ニューメグロスタジオ/編集・㈲フィルム・クラフト/助監督・森満康巳/音楽・平岡きみたけ/撮影助手・弁田アース/照明助手・瀬川英一/監督助手・江野将康/効果・協立音響/現像・東映化学㈱/スチール・津田一郎/出演:浅野桃里・吉行由美・如月じゆん・杉本まこと・樹かず・平岡きみたけ)。
 エッチラオッチラと、森島か森嶋恵美(浅野)と健太(平岡)が二人で仲良く荷物を運び込む引越し直後の新居。全部運び込んだつもりの健太に対し、だつたら一番最初に入れとけよといふツッコミはさて措き、恵美は一番大切なのがないと騒ぎだす。恵美の一番大切な荷物とは、下着を入れておいた箱。もつと大事なものはないのかよといふ疑問も兎も角、恵美が探しに出ると、アパートの階段下で管理人の一人息子・川上テツオ(キモい造形の樹かず)が、ニヘラニヘラ箱を開けてゐた。正直固まつた恵美の視線に気付いた川上は、パンティを一枚ポケットに突つ込み立ち去る。慌てて箱を回収した恵美が、階段を上がるロングにタイトル・イン。下着の一件と、新婚五日目にも関らず、翌日から健太は一週間の出張。恵美の機嫌は傾きつつ、兎にも角にも夜の営み。絶妙に恵美が未だ性に積極的ではない風情を投げながらも、エッサカホイサカ佳境に至つたところで、アックション!と隣室から馬鹿デカいくしやみ。結局そこで恵美が匙を投げ夫婦生活は中断、健太は臍を曲げる。翌日、出張前夜に致せなかつた健太は不機嫌なまゝ出発。川上が自分のパンティをスーハースーハーしてゐるのを目撃した恵美は、脊髄反射で110番、の途中に再びアーックション!に遮られる。恵美はキレるのを通り越し腹を固める、どうやらアタシ一人でやるしかないやうね。得体の知れない鬱陶しい状況に、立ち向かふことを恵美は決意する。
 配役残り無愛想な吉行由美と癪に障る造形の杉本まことは、隣家の平野夫婦。失業中の亭主がアックションの主、ある意味功を奏してゐるともいへ、杉本まことが連発するアックションが本当にウザい。尺の綺麗に折り返し点に飛び込んで来る如月じゆんは、恵美が頼る大学時代の親友・シズカ。因みに健太は女子憧れの先輩、画面(ゑづら)的には強力に無理がありはしまいか、寧ろ樹かずと平岡きみたけの役が逆でもいいやうな気がする。
 川井健二(=関根和美)1995年第二作、いよいよ本当に正真正銘絶体絶命のフロンティア・ロスト。DMMのピンク映画chに、薔薇族を除けば関根和美の未見作はもうなく、目下新しい弾が放り込まれる気配も感じられない。オーピーのデジタル新作が観られる目処が依然立たない中、加へてフィルム最終作も観てしまつた以上、下手をすると今作が最後に見るなり観る関根和美監督作になるのかも知れないと思へば、何気に絶望感に近いものがある。泣き言を垂れてゐても始まらないので先に進むと、薄気味悪い管理人の息子と、厄介な隣人、ついでに旦那は不在。恵美が置かれた四面楚歌の描写に、普通にストレスが溜まるのは、映画的にそれはそれとしてそれなりに正方向の充実。二番手・吉行由美の濡れ場を未だ温存した上で、出し抜けにオカルト方面に転ぶかに見せた三番手にはまた他愛もない木に竹の接ぎ方をと呆れかけたが、それどころかスコーンと突き抜け大輪の百合を咲かせる仰天展開には、グルッと一周して感動した。問題は、そんなこんなで尺も早終盤。新旧題がともに御丁寧に謳ふ夫婦交換は一体どうするのよと別の意味でハラハラさせられてゐると、予定を一日早めサプライズ帰宅した健太が強引に舵を切る急旋回展開には更に驚かされた、ところが。何だかんだで結構面白かつたのに、力技にせよ何にせよ、折角吉行由美が上手いこと始終を落とし込んだのに。一旦引つ繰り返したものをもう一度引つ繰り返し、かといつて元に戻るのかといふとさういふ訳でもなく、わざわざ後味を悪くするラストは逆の意味で流石とでもしか最早いひやうがない。蛇に足を描いたばかりに、雉が撃たれたが如き一作である。

 もう一度泣かせて呉れ、これでお別れなのか?


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