真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女優志願 レイプ調教」(1994/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:川井健二/脚本:佐々木乃武良・川井健二/撮影:南一/照明:秋山和夫/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藤本淳&ザ・リハビリテーションズ/録音:ニューメグロスタジオ/助監督:上田耕司/撮影助手:阿部宏之/照明助手:尾崎俊弘/監督助手:佐々木乃武良/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/車輌:松代涼子/出演:林由美香・風見怜香・吉行由美・小竹林早雲・森純・牧村耕次)。
 ベッドの上にまで仕事を持ち込む婿養子の晴彦(牧村)に、村上頼子(風見)が嫌味を垂れる。注文の多い夫婦生活、外に出した晴彦は今は子供を欲しくないと誤魔化すが、頼子には浮気がバレてゐた、三階建ての社屋外景にタイトル・イン。晴彦が社長の、男女各一名づつが見切れるのみの適当な社内。男は上田耕司にしても、女は全く判らない。ここで注目は、仕事もせずに大つぴらに愛人との電話に油を売る晴彦の肩を叩く、来訪した東西銀行の佐々木支店長役。この下川オサムと町田政則を足して二で割つたやうな2.5枚目が、佐々木乃武良らしい。先月分の月々のお手当から未納の愛人・川上妙子(吉行)に晴彦が冷遇される濡れ場明け、夜道を歩く晴彦は、客商売にしては矢鱈と高圧的な白タク運転手・宮部薫(林)に拾はれる。秋田の同郷といふことで勝手に盛り上がつた晴彦に、薫はアタシに乗んない?と売春を提示。オケラを棚に上げ、ガキは買はない主義だと晴彦は薫に説教してみせる。観客―厳密には今回視聴者なのだが―の神経を逆撫でし続ける晴彦に大金持ちらしい頼子の父親も匙を投げ、手を引かれた晴彦の会社は倒産する。家を出た末当然妙子にも見限られた晴彦は、徘徊程度に放浪後無人の薫の白タクを発見する。
 配役残り森純は、その時の薫の客。絡みの前段、シャワーを浴びてゐる隙に財布から札を抜いた薫を、車まで追つて来る。その場の流れで薫と晴彦が二人で車で逃げる、ちやうど尺の折り返し点で再会した二人が行動を共にする羽目になる構成と、その更に更に前段、やさぐれた晴彦が街を彷徨ふロングだけが僅かに出色。当時は劇団夢現舎を興す前の演出家の小竹林早雲は、オーディションの最終審査と上京させた薫を、手篭めにする東洋映画プロデューサー・宮沢浩。一体どういふ付き合ひなのか、小竹林早雲の映画出演は川井健二時代には数作以上あるやうだが、関根和美名義の出演作は、恐らく2005年第一作「女探偵 おねだり七変化」(脚本:吉行良介/主演:出雲ちひろ)の一本のみなのではなからうか。
 関根和美が1993年から三年間使用してゐた変名である川井健二の、1994年第二作。因みにこの年はピンク八本に更に薔薇族が一本と、結構な量産態勢ではある。一旗上げると出て来た秋田に、おめおめ帰る訳には行かなかつた。晴彦が薫に見出す似た者同士感にはそもそも佐々木乃武良自身の境遇なり胸中も透けて見えるのか、都会の片隅で行(ゆ)きつ逸れた男と女が出会ふ、といふ趣向ならば酌めぬではないものの。依然女優の夢を諦めてはゐない薫が選んだ稼業が、選りにも選つて売春白タクだなどといふのは、確かに映画的に凝つた設定とはいへ更に敵がピンクであることを考へるとなほさら親和性が高いともいへ、幾ら何でも飛躍が高くて遠過ぎる。この時期の、垢抜ける以前の林由美香に、その無理を捻じ伏せる決定力は未だあるまい。それ以前に、手前は女に現を抜かし義理の父頼みの会社を潰しておいて、堂々と薫に上から目線の晴彦の自堕落な造形が致命傷。片翼ならばまだしも、ミーツの両側が機能不全とあつては流石に厳しい。コッソリ晴彦が送つた書類が、再び東洋映画新人女優オーディションの一時審査に通るといふのもへべれけな話で、不用意に演出したラストも気味ですらなく不発。所々会話の端々に切れが窺へなくもないのは佐々木乃武良の若かりし感性なのかも知れないが、全体的には取りつく島もない一作である。


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