真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「不倫音楽教師 魅惑のゆび使ひ」(1999『女ピアノ教師 ゆび誘ひ乱されて』の2002年旧作改題版/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:岡輝男/撮影:清水正二・岡宮裕/編集:酒井正次/制作・録音協力:小林徹哉/スチール:木下篤弘/演出助手:田中康文/タイトル:内藤忠司/ピアノ指導:蓮見和美/出演:山崎瞳・篠原さゆり・岸加奈子・川瀬陽太・今泉浩一・野上正義)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 女子高生・ことみ(山崎)の着替へを、ことみとは幼馴染の岩沢か岩澤厚治(川瀬)と、厚治の悪友・和彦(今泉)が覗く。ことみに気付かれた二人は逃げる、ことみなんかよりも年上が好みだといふ厚治の前を、ドンピシャの産休音楽教師・春代(篠原)が颯爽と自転車で通り過ぎタイトル・イン。旧題を山崎瞳が読み上げる―映倫番号は川瀬陽太らの合唱―ため、音とタイトル画面がちぐはぐなことになつとる。一手間かけて、抜けばいいのに。
 弾けもしないピアノが置かれた部屋、厚治が春代とのセックスをイマジンしてゐると母親にしてはいやに若い雪子(岸)が現れるのは、挿み込まれる厚治の老父(野上)が遺影を見やるカットで、雪子は幽霊である旨が語られる。ただ、この遺影岸加奈子か?悶々とした下心を爆発させ日課のジョギングがてら雪子宅の様子を窺ひに行つたところ、雪子に見付かつた厚治はピアノを習ひたいとその場しのぎで言ひ逃れるも、音大受験を目指すことみが既に実際にレッスンを受けてをり、二人で雪子宅に通ふ羽目になる。さりげなく配役残り、春代が町を去る際コートの後姿しか見せない同伴者は小林徹哉。
 昨今の大蔵旧作投入の流れに乗り着弾した、荒木太郎1999年第二作。確実に話題を呼べると思しき友松直之の「コギャル喰ひ ~大阪テレクラ篇~」(1977)をこの期に長く温存し続けてゐるのは、もしかすると上映権がオーピーの手許にないのかな?行間の無闇に広い薄味の物語を、当時は荒木調として―世間的には―神通力を失つてはゐなかつた小手先で埋める始終はよくいへば穏やかで、直截にいふと退屈。但し厚治が実は一番近くに居た大切な人と結ばれる、定番展開で漸く終盤に至つて求心力を取り戻す。そこから、締めの濡れ場が三番手なのは荒木太郎は三上紗恵子と出会ふ前からピンク映画の構成が出来てゐなかつたのかと呆れかけさせて、オーラスの厚治とガミさんの会話を通して厚治とことみの関係を、ガミさんと雪子の馴れ初めにリンクさせ綺麗に纏め上げる。未だ上り調子、この頃の映画を近作と並べられるのは、正直荒木太郎にとつて酷なのではなからうか。


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