真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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熟女の色香 豊潤な恥蜜
池島ゆたか
/
2014年02月26日
「
熟女の色香 豊潤な恥蜜
」(2013/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『ダブルサイコ』/撮影監督:清水正二/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:中川大資/監督助手:北川帯寛/撮影助手:海津真也・矢澤直子/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/協力:ステージ・ドアー/出演:村上涼子・沢村麻耶・日高ゆりあ・樹カズ・野村貴浩・北川帯寛/Special Thanks:山ノ手ぐり子・松井理子・倖田李梨・リト《写真出演》)。出演者中北川帯寛と、カメオ枠のリトは本篇クレジットのみ。
鬼もとい一時的に実家に帰つたカミさんが居ぬ間に、河中吉弥(樹)は水商売の女・ジュン(日高)を堂々と自宅に連れ込む。それにつけても、衰へ知らずのイケメンも兎も角、樹カズ(御歳フォーティーフォー)は髪の量が異常だ、羨ましいことこの上ない。シッポリ楽しんだのも束の間、四十路目前の吉弥の八つ年上の妻・真理子(沢村)が、母親と喧嘩したとやらで予定を一日早め緊急帰宅。潰れた同僚を休ませてゐるだなどと、その場すら凌げてゐない旦那の嘘を看破した真理子は、大らかにも吉弥の火遊びを許容する。恐々河中家脱出を図るジュンが覗く廊下越しに、シャワーを浴びると真理子が画面を右から左に横切りタイトル・イン。タイトル跨いで主演女優登場、男運のなさから恋愛自体遠ざかつて久しい三十七の通販会社事務員・小田島めぐみ(村上)に、取引先の吉弥が言ひ寄る。サクサク吉弥はめぐみの部屋に転がり込み、俄に始まる甘い同棲生活。とはいへ、離婚に易々と同意してゐるらしき真理子に対する謎。自身の豊満な肉体に対するコンプレックスと、現実味を帯びて来た結婚への執着。諸々の焦燥に、めぐみは騒がされる。
配役残り野村貴浩と北川帯寛は、めぐみがろくでもない男性遍歴を回想する中に登場する、借金男とマザコン男、北川帯寛は乳も揉む。一人目のスカジャンDV男は、演出部動員かとは思ふが特定には至らず。Special Thanks勢から山ノ手ぐり子・松井理子・倖田李梨は、めぐみがオフで交錯する赤いハイヒールの女。倖田李梨だけがキチンと抜かれ、幾許かのマトモな台詞も与へられる。正体不明のリトは、在りし日のスナップ写真の中に映る、高校入学時の吉弥。幾ら何でも、1989年にしては写真が古過ぎないか?
池島ゆたか2013年第二作は、最近オーラスにクレジットされるシナリオ題が「ダブルサイコ」なるヒッチコックもの。全面的なアプローチとしては案外久し振りで、「
熟女・人妻狩り
」(2006/主演:竹本泰志)以来。颯爽と三番手が駆け抜ける秀逸な開巻、会話は聞こえど、ジュンの目には夫婦が一人づつしか見えない画作りに、丁寧に起爆装置が露出する一つ目のサイコを、諦めかけた幸せに駆られる、二つ目のサイコが追走する構成は非常に面白い。但し、ハンターの存在しないミイラ同士の化かし合いひの中、オーソドックスなサイコとセカンドサイコとの激突。乃至はトラディショナル・サイコがセカンドサイコに喰はれる驚愕の魔展開への期待も高めたものだが、尺に合はせるかのやうに作劇は力尽きる。最終的には精々日常的なヒステリーの範疇に納まつてしまつたセカンドサイコが、貫禄のオリジナルサイコに呑み込まれるラストには些か落胆。折角「ダブルサイコ」なんて画期的にカッコいいタイトルをつけたのに、女の裸―村上涼子のボリュームは、個人的には過積載―をさて措けばこれではヒッチコックの「サイコ」で事足りよう。そんな辺りに何となく、森山茂雄の「
痴漢電車大爆破
」を想起した。
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