真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「絶頂家族 愛人だらけ」(2015/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:後藤大輔/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:友愛学園音楽部/録音:小林徹哉/助監督:小関裕次郎/監督助手:菊島稔章・馬場雅司/撮影助手:広瀬寛己/撮影応援:佐藤文男・宮永昭典/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:甲斐銃介/引用詩:T.Sエリオット『J.アルフレッド・プルフロックの恋歌』/出演:めぐり・玉城マイ・佐々木麻由子・山本宗介・那波隆史・なかみつせいじ・バルカン・青森次郎)。出演者中、バルカンと青森次郎は本篇クレジットのみ。引用詩が実際には、クレジットのど頭に飛び込んで来る。
 「しろくま不動産」社長の佐藤伸輔(なかみつ)と、従業員兼不倫相手・室田由紀(玉城)の学生服プレイ逢瀬。由紀が娘と同じ佐久良第一高校出身である点に一旦萎えた伸輔は、強くはない心臓を慮りバイアグラを用量の半分服用。フラグに違はず由紀の腹の上で悶絶すると、田園風景のロングに“チーン”とお鈴の御臨終音。東海旅客鉄道身延線の常永駅に電車が到着、喪服を着ためぐりが駅舎表に姿を見せタイトル・イン。軽く女の裸を見せた上で、簡潔な進行に主演女優の喪装を披露と、開巻の神速を誇つた師匠・新田栄の手練を継承したアバンは完璧。
 父急逝の報に緊急帰省したものの、繋がらない家電に不平を垂れる伸輔の娘・瞳(めぐり)を、弁護士バッチを着けた山本宗介がチャリンコで追ひ抜いて行く。仕方なく歩を進める瞳に声をかけて来たのは、何と営業車に由紀を同乗させた伸輔。喧嘩ばかりの両親と仲が悪く、東京からなかなか帰つて来ない娘の顔を見るために人騒がせな、あるいは火にガソリンを注ぐ一芝居を打つたものだつた。その頃佐藤家では母親の早苗(佐々木)が、母親も母親で伸輔との離婚調停に雇つた弁護士・石井卓郎(山本)に跨る始末。因みに石井は、高校時代瞳が処女を捧げた相手でもあつた。そこはまあ、田舎の狭さといふ奴で。それと改めて整理すると、佐々木麻由子の新作登場は一ヶ月前に封切られた小山悟2015年第二作「果てなき欲望 監禁シェアハウス」(脚本:当方ボーカル=小松公典/主演:神咲詩織)の写真協力を挨拶代りに、同じく加藤義一の2013年第四作「女教師 秘密の放課後」(脚本:鎌田一利/主演:辺見麻衣)以来のそこそこな御無沙汰、衰へは全く感じさせない。
 配役残り那波隆史は、瞳就職先の出版社編集者、兼不倫相手の野村朗、親のことを四の五のいへた筋合かといふ次第である。それぞれ菊島稔章と竹洞哲也の変名のバルカンと青森次郎は、他にそれらしき人影も見当たらないゆゑ瞳・石井と同窓会の打ち合はせをする佐久良第一の同級生か。
 以降見かけないのを見るに甚だ残念ながらここで打ち止めなのか、2014年第四作「新人巨乳 はさんで三発!」(脚本:城定秀夫)から2015年第一作「純情巨乳 谷間で歌ふ」(脚本:小松公典)・「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一=鎌田一利)と、四作ビリング頭を固定した加藤義一2015年第三作。今回脚本に―自身の監督作の話はとんと聞こえて来ない―後藤大輔を招き、とりあへず災ひするのはラストを塗り潰すT.Sエリオットに、何某かの含意があるものやら単なるぺダンチズムに過ぎないのか、オッパイオッパイ( ゜∀゜)o彡°しに来た凡愚にはてんで判らない藪蛇意匠。反面、早苗主催の弁護士を交へての家族会議の席にて、前日同窓会打ち合はせがてら一夜を共にしたばかりの石井と瞳が思はぬ再会、挙句野村までのこのこ弔問に現れる件は、もつとドタバタを膨らませればいゝのにと思へるくらゐには面白い。依然大健在の佐々木麻由子は元より、画面奥での小芝居も地味に達者な初陣の実質三番手も意外に勘がよく、確かに愛人だらけの似た者家族の物語はサクサク見させる。何はともあれ、めぐりのオッパイを胸かお腹一杯に堪能させる濡れ場の質量はともに申し分なく、ギャースカ騒ぐほどでもないとはいへ、一頃の散々な若御大ぶりを想起するならば、全然安心して観てゐられる一作である。

 めぐりのフィルモグラフィーに話を戻すと新人巨乳と純情巨乳の間に、「わるいをんな」(2015/監督・脚本:城定夫=城定秀夫)を挿む。そもそも最高の新人巨乳は城定秀夫の脚本ともいへ、以外も最も厳しい純情巨乳にしても園辺亜門シリーズに於ける新旧宮前晶子役が顔を揃へる飛び道具込みで加藤組三作はそれなりに安定。一方「わるいをんな」のあまりに全方位的に平板な仕上りに、めぐり主演五作に話を限れば―Vシネまでは手が回らん、悪しからず―まさかよもや加藤義一が城定秀夫を倒す全く以て予想外、日本映画史上最大級の大番狂はせが発生するなどと、果たして誰が予想し得たであらうか。


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