真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「新人巨乳 はさんで三発!」(2014/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:城定秀夫/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:清水大輔/撮影助手:吉川千園・三輪亮達/音響効果:山田案山子/協力:上野オークラ劇場・ゾンネンプロ・遠藤健介・香田晋・佐久間栄一/出演:めぐり・桜木郁・倖田李梨・川瀬陽太・津田篤・柳東史・なかみつせいじ・井尻鯛・和田光沙・山本宗介・紅森伐人・広瀬寛巳、他八名・牧村耕次・荒木太郎・佐倉萌《友情出演》)。出演者中、紅森伐人・広瀬寛巳、他八名と、何故か津田篤が本篇クレジットのみ。残りの十人は兎も角、津田篤がパブから漏れてるのはマズいだろ。
 ど頭とエンド・クレジット後のオーラスにて、今作がフィクションである旨を執拗に謳ふ。
 念願叶つて映画会社への就職を決めた桃井桃子(めぐり)が、初出社を翌日に控へ挨拶の練習をしてゐると、いい感じの後ろから居候の妹・ミドリ(桜木)が投げた枕が飛んで来る。事前に桜木郁を、桜木凛勘違ひし混乱してゐたのは内緒。それは昨今の女優部の通過性の所以か、単なる年の所為なのか。目覚まし時計を余裕を持つてセットしたはいいものの、勢ひよく置いた弾みで外れた電池には気付かずタイトル・イン。入社早々早速遅刻した桃子を、OPではなくOB映画の社長・大蔵でもなく大内(なかみつ)は暖かく迎へる。先輩社員・山田(柳)や三平(津田)の会話に上る“加藤組”なり“渡邊組”といつた単語に、加藤泰や渡辺文樹の映画を配給してゐるのかと桃子が猛烈に悩ましい胸をときめかせる一方、大内に桃子の指導を振られた玲子(倖田)は、三平に丸投げする。ひとまづ三平は桃子に、スチールの整理を支持。それがヌード(誰か判らない)ばかりであるのに脊髄反射で激昂、三平の頬をフルスイングで張つた桃子は、大内からオービーが“明るく楽しい”を社是とするピンク映画会社である事実を告げられ愕然とする。オチがついたところで、ヒャッヒャッヒャ~ララと長閑にOK劇伴が鳴り始める選曲が地味に完璧。
 バラエティ豊かに豪華な配役残り、佐倉萌はフジサク組新作「強姦オフィス 変態OLナマ調教」の主演、乳は見せるも劇中ポスターのみの登場。川瀬陽太は、出て来る毎に音楽性がコロッコロ変るミドリの彼氏・ハヤト。浜岡賢次スピリットを爆裂させる、デストローイッ!が捧腹絶倒。荒木太郎は、桃子が玲子に資料を届けさせられる上野オークラ旧館の支配人。その道すがら、出会ひ頭で桃子とぶつかり裸のスチールを散乱させるのは小関裕次郎。至高のTシャツ芸は封印した広瀬寛巳と、紅森伐人(=鎌田一利)は劇場ロビーにて桃子と交錯する無邪気に下卑た中年客。桃子は三平と、オービーのエース・加川欽一の現場の陣中見舞に繰り出す。井尻鯛(=江尻大)は加川組助監督のヒムセルフで、コップ酒片手に演出するワイルドな造形が弾ける牧村耕次が加川欽一。目出し帽の加川組男優は山本宗介と、紅森伐人の二役。大遅刻して現場に現れるバーター女優のしじみならぬあさりが和田光沙、初脱ぎを披露する。忘れてならない何気な名脇役、後に帰り道の桃子と三平を冷かすカットも絶品な、加川組カメラマンが佐久間栄一。もういつそ、この人はキャスト扱ひでいいやうな気がする。佐久間栄一のアシは、三輪亮達でない以上には不明。大体毎回何時も同じメンバーの他八名は、上野オークラ旧館の観客要員。思ひついたまゝ筆を滑らせてみて、果てしなく恥づかしくなつた。
 2010年第三作「多感な制服 むつちりな潤ひ肌」(主演:稲見亜矢・なかみつせいじ)以来、四年ぶり四度目となる脚本に城定秀夫を迎へた加藤義一2014年第四作。シネフィル新人巨乳女子社員がさうとは知らず入社したのは、玲子いはくチンポ汁で飯を食ふピンク映画会社。ポール・ルーベンスでもなからうに、今時小屋でデストロイするのは映画なんて観ちやゐないハッテン目的の紳士―と紳士の―淑女くらゐだ。とか何とか無粋なツッコミはさて措き、往々に仕出かしがちなダサさに堕する過剰なピンク映画愛―清水大敬がその道の大家―に淫することなく、ヒロインが仕事に恋に奮闘する、正攻法の娯楽映画として綺麗に形になつてゐる。何はともあれ、他媒体での活躍にまで手が回らないが、初陣にして初主演のめぐり(ex.藤浦めぐ)がムッチリ感が堪らない爆乳と案外正統派和風のルックスだけでなく、これはもしかすると自戒なのか、オーラス中のオーラスに際して念を押すやう結ぶ口元まで含め、結構自在に操る声色と表情とで多彩に感情を表現してみせるお芝居が拾ひもの。据わつた軸を損なふことなく、展開もつゝがなく進行。底抜けに大らかなOBの社風に翻弄される桃子の白日夢の形で主演女優の濡れ場を存分に堪能させ、節操の欠片もないハヤトの音楽的変遷のギャグ込みで、二番手の桜木郁もキュートに飛び回る。女の裸を既に十二分に楽しませた上での、牧村耕次に勝るとも劣らぬ井尻鯛のオーバーアクトも捨て難い加川組現場パート。桃子が加川の撮影中の飲酒を戒める件から続く夕景待ちに際しては、一篇のハイライトたる堂々としたエモーションを撃ち抜く。とりわけ決定的なのは、浴びたデストロイを洗ひ流す手元のカット以外、絡みの最中であつても終始一貫桃子がメガネを外さない天地の真理と書いて天地真理。もう何もいふことはあるまい、加藤義一に厳しい城定秀夫にいはせればそれでも何やかや不満が残るのかも知れないが、だつたら御自分で撮つて呉れといふ話である。私選2014年ベスト、最後に蛇に足を足す憎まれ口を叩くと、後生だから加藤義一はマトモな脚本家と組んで欲しい。今際の間際のこの期に及んで、何をトチ狂つたか座付をマイナスから育てるつもりであるならば、双方向、いや寧ろ三方からそのやうな場合か。


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