真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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銀河の裏筋 性なる侵乳!
主に渡邊元嗣と、わ行
/
2022年07月03日
「
銀河の裏筋 性なる侵乳!
」(2021/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画株式会社/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:倉本和人/録音:小林徹哉/編集:鷹野朋子/助監督:小関裕次郎/監督助手:可児正光/撮影助手:佐久間栄一/イラスト:広瀬寛巳/スチール:本田あきら/選曲:徳永由紀子/MA:Bias Technologist/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:如月生雄/出演:亜矢みつき・生田みく・しじみ・竹本泰志・津田篤・ケイチャン)。
地球を抜いて、ケイチャンの畏まつたモノローグ起動。ムーあるいはアトランティス、古代文明人が気象変動を忌避。地球に分身―のちに語られる劇中用語では“同位体”―を残し、火星に移住した旨大風呂敷をオッ広げる。光芒を放つ飛翔体が山頂公園に落下、凡そ有人には思へない小ささといふツッコミ処はこの時点ではさて措き、暗転タイトル・イン。上の句に謳ふ“銀河”どころか、隣同士の惑星間で完結してしまふ、小さいのか十分大きいのか評価の分れる話のスケール感。
明けて「山井動画配信事務所」、全く数字の伸びない所属配信者の河合ミソノ(亜矢)に、社長の山井雅人(竹本)が雷を落とす。ミソノは同名の元地下アイドルで、一方山井はカリスマホスト上がりといふ設定。と、ころで。初陣の渡邊元嗣2019年第二作「
好き好きエロモード 我慢しないで!
」と今作の間に、神谷充希から改名したのが亜矢みつき。字面だけだと一見全然違ふゆゑ、軽く面喰はされる。
配役残り、山井に一日三本の動画アップを厳命された、ミソノが一旦捌けるや登場するしじみは、山井事務所トップ配信者の立石真衣。二回戦にて繰り出す―初戦は適当な方便で対山井―枕営業で鍛へた秘技といふのが、観音様の締めつけで精液を棹に逆流させ、最悪玉を破裂させるといふその名も“スペルマ逆流返し”。こゝで日本語が微妙に難しいのが、“逆流して返す”と捉へるならばそれで何の問題もない反面、“逆流を―更に―返す”と解釈した場合ダブルクロスカウンターで結局普通に出されてゐる。閑話、休題。山頂公園に野良猫動画を撮りに行つた―そのセンス―ミソノの前に現れる、工藤雅典大蔵電撃上陸作「
師匠の女将さん いぢりいぢられ
」(2018/橘満八と共同脚本/主演:並木塔子)から、かれこれ三年目四本目の生田みくは、人捜し風情の黒服・マホリ。そして段ボールに隠れるやうに寝てゐたケイチャンが、マホリが捜す半裸でターバンとかいふ大概か底の抜けたビジュアルの男、記憶を失つてゐる。その正体は、危険を冒して地球にやつて来た、火星のマジマーズ国の新しい王・サオロング。満身に創痍を負ふサオロングに対し、マホリは平然と辿り着けてゐる点に関しては、気づかなかつたプリテンドをするべきだ。サオロングの王位継承の儀も自ら執り行ふ、フェラーラ王妃は亜矢みつきの二役目。即ちフェラーラとミソノが、先に述べた同位体の関係。飛翔体の画像をSNSに上げた、夜空研究科・カマは鎌田一利、アイコン写真が小さく見切れる。観る前はこの人が地球に落ちて来た男かと思つてゐた津田篤は、河合ミソノのFC会長・中野川テツオ。羽ストールなんて巻いてみせた、コッテコテの毒婦造形を宛がはれるしじみとある意味同様、デュフデュフ笑ふ古典的なオタク造形。ならばなほのこと、ネルシャツ×チノパン×ダンロップまで拘つて欲しかつた。津田篤が、そんな扮装持つてゐるのか否かは知らん。
関根和美の2003年第四作「
馬を愛した牧場娘
」(小松公典と共同脚本/主演:秋津薫)以来、驚愕の実に十七年ぶり。新作ピンクに倉本和人(a.k.a.倉本和比人)が電撃復帰―オープンの日差しを推察するに、撮影は2020年夏の模様―を果たした、渡邊元嗣2021年一本きり作。前作の、山崎浩治こちらは三年ぶり復帰作「
悩殺業務命令 いやらしシェアハウス
」(2019/主演:生田みく)挿んで、再起動した渡邊元嗣と増田貴彦のコンビが五作目。今のところ、封切られたばかりの最新作に於いても依然継続してゐる。
「銀河の裏筋 性なる侵乳!」、一言で片づけると意味が判らない。オーピーの担当者はキマッてゐたのかとでもしか思へない、闇雲な公開題は兎も角。「星の王子 ニューヨークへ行く」翻案、が大蔵から頂戴した御題であるといふと、首を傾げるほかない「いやらしシェアハウス」の挽回を図つたのか、今回は明確に火星の国王が東京に来る、横浜かも。自らの進むべき道に迷ひがちのヒロインが、適当に味つけされた“秘宝”を巡る騒動に巻き込まれる。ありがちなSFロマンが、身の丈を弁へぬ切通理作の脚本で支離滅裂の木端微塵に爆砕してばかりの、過去最悪の様相を呈する国沢実の近作ファンタ路線と比べると余程、あるいは最低限体を成す、比較の対象がクソすぎる。河合ミソノが持ち歌も披露する割にトラック絡みのクレジットは一切見当たらない、言葉を選ぶと牧歌的なアイドル映画は、良くも悪くも渡邊元嗣が渡邊元嗣たる所以の、いはば業。に、せよ。壮絶にもほどがある疑問手通り越した悪手、の範疇にも納まりきらない即死級の致命傷が、マジマーズ国が歌と踊り―とあと花―に満ちた国とやらで、藪から棒か素頓狂にサオロングことケイチャンが超絶の低クオリティで歌ひ踊る、頓珍漢なミュージカル風味。観る者を鼻白ませる以外に、渡邊元嗣は全体何がしたいんだ?挙句荒木太郎に劣るとも勝らないレベルの悪ふざけで尺を空費した結果、二番手であるにも関らず、生田みくの絡みが一回きり、女の裸が割を食ふに至つては言語道断。まだしも女優部が乳尻を振り乱す分には、藪の蛇を突かうと木に竹を接がうと、立派な眼福として成立し得たものを。肌もあらはなオッサンの下手糞な歌や踊りに、如何程の値打ちがあるといふのか、百兆歩譲つて薔薇族でどうぞ。耄碌したのか、渡邊元嗣。ナベが悪い意味でヤベえ、混迷を極める演出部に俳優部は与へられた役を案外精一杯健闘する一方、撮影部が何故か同調。倉本和人の大帰還に加へ、何処まで遡るのか軽く途方に暮れてゐたら、案外近場に松岡邦彦の「
憂なき男たちよ 快楽に浸かるがいい。
」(2019/脚本:金田敬/撮影:村石直人)―更にその前となると坂本礼の「
や・り・ま・ん
」(2008/脚本:中野太/撮影:中尾正人)―があつた、セカンドに佐久間栄一が入る何気に凄い布陣、にしては。しじみの一回戦、二人を画面向かつて左側から撮るカメラと、マホリが中野川の口を割る背面座位。別に企図された風にも映らない、画が無駄に微動してゐるのはどうしたものか。野外も野外で、明らか乃至下手に強い太陽光を、コントロールしようとする気配も特に窺へず。
城定秀夫
を迎へ撃つはおろか、渡邊元嗣が力なく墜落する無様な姿を見せつけられようとは。とこ、ろが。投げかけたタオルもしくは匙が、止まるのね、これが。止まるのが、ナベシネマ。ミソノの自分再発見的なクライマックスは、堂々とした締めの濡れ場を除けば陳腐なテーマながら、その一歩前段。そもそも、火星の国王が東京に来た目的とは何か。猫耳ミネコの鎮魂と昇天、プリミティブなエモーションをダサさもベタさもショボさすら厭はず、全力で撃ち抜いて来る一撃必殺こそ我等が渡邊元嗣。ギッリギリのギリッギリ、紙一重で首の薄皮一枚繋がつてさへゐれば、ションベン臭い小屋に集ふ、薄くでなく汚れた観客の心を洗つてのけるのがナベシネマ。出来不出来でいふと世辞にも褒めらた代物ではないものの、好きか嫌ひかとなるとそれでも断然好きな一作。邪推するに大蔵の振つて来る奇天烈な意匠に引き摺られず心乱さず、渡邊元嗣には腰を据ゑ自身が信じた映画を撮つて欲しい。それが即ち、今作に於けるミソノの姿とも重なるのではなからうか。
といふか要はこのお話、サオロング視点では星をも渡つた王様が側室と火遊びして国に帰る、豪快か痛快なスペオペ漫遊記だ。
山井と袂を分つたミソノが、中野川の協力を得て改めてアイドル動画に徹し、見事再起を果たすラスト。開運的にバズッた動画に流れる、宝くじが当たつただの“監督に脚本をホメられた!”だの、総じて他愛ないコメントの中。望む当サイトが端からどうかしてゐるだけなのだが、“遂に「ハレ君」が公開された!”なり、“お帰りなさい荒木太郎”といつたアクチュアルにキナ臭いネタを、ナベが紛れ込ませて来る訳が無論なく。土台、如何にして初号を突破するつもりか。
備忘録< サオロング降臨の目的は、フェラーラの従者がぞんざいに処分した、猫耳ダッチワイフ・ミネコの供養と呪ひ解除
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