真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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誘惑妻物語 濡れた人差し指
加藤義一
/
2022年07月12日
「
誘惑妻物語 濡れた人差し指
」(2021/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:江尻大/選曲:友愛学園音楽部/整音:Bias Technologist/スチール:本田あきら/監督助手:菊嶌稔章・河野宗彦/演出部応援:小関裕次郎/撮影助手:赤羽一真/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:神咲詩織・初美りん・並木塔子・柳東史・津田篤・なかみつせいじ)。
住宅地を覗く双眼鏡視点、一点結論を先走ると今回、青天には概ね恵まれない。話を戻して、急激に倍率の上がる覗いた先は、何かの鉢植に神咲詩織が水をやるベランダ。夫に食事の支度を乞はれといふか命じられ、かみしおがフレーム左袖に捌けたベランダ外壁にタイトル・イン。見切れる見切れないの境界線を超絶の絶妙さで突く、瞬間的に抜かれる視点の主体に、節穴自慢の当サイトは辿り着けなかつた、誇るな。文字通り目敏い諸賢にあたられては、別にさうでもなく普通に見えたのかしらん。
恵子(神咲)は大学時代の恩師である、吉本(なかみつ)と学生結婚、社会に出ぬまゝ家庭に入る。保守的なのかドラスティックに淡白なのか、それとも単なる吝嗇に過ぎないのか。兎も角とかく取りつく島のない吉本と、恵子が擦れ違ふ以前に噛み合はない日々を送る一方、ラブホテルにて、パンティは穿いての大股開きが画面一杯にドカーンと飛び込んで来る。女子大生の美幸(初美)は不倫相手・大西(津田)との逢瀬の事後、所詮は煮詰まるしかない関係に踏ん切りをつけ、大西的には寝耳に水の別れを一方的に投げる。後日の往来、なほも美幸に大西が纏はりつく修羅場に、恵子が通りがかる。助けを求めて来た美幸が、どさくさ紛れで騙つた姉妹に恵子も同調、大西は一旦大人しく退散する。ベランダでの、恵子の細やかな楽しみを知つてゐたのか、美幸がその日のお礼にと贈つたレモンバームからカットひとつ跨いだ大胆な繋ぎで、盗まれたり猫に食べられたりしないか軽く心配な、店の表に出した水草を浮かべた鉢の中でメダカを飼ふ、深山直樹(柳)の喫茶店―屋号不詳―で恵子はアルバイトを始める、吉本には無断で。
配役残り並木塔子は、主に精神を病んだ深山の妻・ゆかり。心を壊した由来が明示はされないが、子供のゐない子供部屋風の美術を窺ふに、流産ないし死別系かも。都義一(a.k.a.京都義一)以下、井尻鯛とバルカンに、鯨屋当兵衛。何処からでも手慣れた演出部動員を望める地味に分厚い面子にしては、あくまでシャレオツ~なカフェの雰囲気を重視したのか、容易に想定の範疇に収まる茶店客要員が一切投入されず。
後述する2019年第四作と、EJDの出番を除けばほぼ不完全無欠の
2020年第一作
。派手に爆散した二作と
大概な無頓着が火を噴く
、総じては漫然とした前作。何気にでなく三連敗中の加藤義一が、幾分以上持ち直した2021年第一作。師匠・関根和美の遺志を継いだと思しき、スッカスカ、もといスッチャラカ艶笑譚ぽい次作も、KMZに漸くやつて来るのは年が明けてからだらうけれど今から楽しみ。
今時専業主婦といふだけで、経済的には結構恵まれたヒロインが抱へる、薄らぼんやりとした寂寞を端緒とする物語。足が地に、着いてゐるのかゐないのか。最終的に、何を求め何処(いづこ)へと向かふのか。腰の据わつた正攻法に珍しく徹する演出には反し、恵子の立ち振舞ひは案外覚束ない。それゆゑ、手放しでワーキャー褒めそやすには心許なさも否めないにせよ、決して飽きさせない程度に見所は盛り沢山。
締めの絡みの薄さ、といふ割と致命的な脆弱性をも捻じ伏せるに足る一撃必殺を放つ、そこかしこでバラ撒いてもゐた伏線の弾幕がクライマックスに収斂する、“実は実の”な嘘から実(まこと)を出してみせる、最も顕示的な終盤の大技は見事に決まる。さりげなく悪役じみた造形を宛がはれた吉本も、綺麗な復権を果たす。少々出し抜けではあれ、エンパワメントな名台詞も与へられる。若干前後して、吉本夫妻と、深山が交錯するロングは、カットを割つてしまふのが寧ろ勿体ないくらゐカッコいゝ。ただ、さういふ、素面といふ意味に於ける裸の映画的に秀でた、部分のみならず。最初に気づいたのが、大西が新しく用意した部屋にて、半ば以上仕方なく美幸が身を任せる二番手二回戦。美幸は既に心を離したどうでもいゝセックロスを、中途の端折り具合まで含め徹底してぞんざいに処理。情交個々の熱量に応じて、濡れ場艶出の力加減を変化させる、もしくは操作する裸映画的にこの上なくしたゝか且つしなやかな戦法により強い感興を覚えた。とりわけ、初つ端の指舐めから気合の入れやうが明らかに異なる、見るからな全力を込めたのが秀逸な前後のカッティングで意図的に主を暈した、イマジンといふのも狂ほしく素晴らしい。よしんば現実的には些か障壁の高いカップリングであるならば、妄想で何故いかぬ。うつし世はゆめ よるの夢こそまこと。加藤義一が猛然と撃ち抜いた、美しく、同時にいやらしい真実こそが真のハイライト。重ねて兎にも、角にも。御召物の柄すら悩ましく歪める、ボッガーンと隆起した神咲詩織の着衣オッパイが逐一エロい通り越してエモい、途轍もなくエモい。今作を機会に加藤義一が復調して呉れると、大いに頼もしい一作。通して振り返るに当り外れの斑(むら)が大きい印象も否めないが、斑があるだけ、当りもある分まだマシ。
一面の緑鮮やかな草叢に主演女優が大の字に寝転んだ、俯瞰のデカい画を撮りたい。趣向は確かに酌める、垂直上昇させるドローンを使つたラスト・ショットが、今時何故か古のキネコみ漂ふ破れ画質なのは、最後ブツッと切れるやうに暗転する唐突な雑さも込みで微笑ましい御愛嬌、微笑ましいか?
“百点満点の零点映画”2019年第四作「
愛憎のうねり 淫乱妻とよばれて
」(脚本:筆鬼一/主演:佐倉絆)以来の柳東史と、なかみつせいじは“安手のピンク映画”をわざわざ自己紹介する工藤雅典大蔵第二作「
爛れた関係 猫股のオンナ
」(2019/共同脚本:橘満八/主演:並木塔子)以来。何れも二年ぶりに戦線復帰した二人ながら、四つ下の筈であるにも関らず、何時の間にか柳東史がなかみつせいじを追ひ越し―草臥れ―て映る近影には軽く衝撃を受けた。のと、柳東史ついででワンモア。料理教室に通へない―通はせて貰へない―のなら、ウチの店で働けばいゝぢやない。殊更意訳せずとも、案外そのまんまな深山の冤罪アントワネット構文が、アバンの扱ひ如何ではもしかするとその後華麗に回収されるものかと早とちりしたが、先述した、嘘から実を出す力技の結果それも叶はなかつた。
備忘録< 双眼鏡を覗いてゐたのは、恵子が十才の時に出奔した父親が、当時余所に作つた実際実妹の美幸
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