真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「セクサロイドMIKI ボディコング女王様」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知、の筈/出演:樹まり子)、浜野佐知のクレジットすらない豪快仕様。但し、女が口内に出された精液を、男に口移しで返すカットは確かに浜野佐知。
 薮中劇伴鳴りつつタイトル開巻、何故王なのか、別に構はないけどさ。旦々舎の煉瓦部屋、ボディコンの樹まり子が強烈なバックライトを背負ひ煽情的に屹立、フェードで全裸に繋ぐ。暗転してスーパー起動、“樹まり子はサイボーグである。”だなどとのつけから弾け倒した火蓋を切る。どうせ山﨑邦紀の仕業だらう、と軽い気持ちで括つた高は、最終的に甚だ怪しくなる。さて、措き。“セックスの為だけに作られた、セクシー・サイボーグである。”と、抜いた底を叩いて割る方便は続く。箍のトッ外れた夥しい量ローションを使用しての、樹まり子が男優部二人を相手にする巴戦。一旦攻守を交替したところで、漸く判明する面子が芳田正浩と平本一穂。乳より寧ろエモい、御々尻のパンチ感が際立つ平本一穂との背面騎乗。の事後、誰か―ローション用の―金盥蹴つ飛ばしてない?コランコラン音がするんだけど。
 今にして思へば、よく斯様な真似が罷り通つたなと往時の無法ぶりに軽く首を傾げなくもない、先行して既にブレイク済みである樹“いつき”まり子とはあくまで別人の、樹“みき”まり子デビュー作。動いていゝぞ公取委、本名でないのなら。どうも怪しいソクミルは今作の発売日を元日としてゐるが、ジャケに躍る“92年は『イイ女』が燃える!”なる惹句を窺ふに、実際には91年の少なくとも後半なのではなからうか。因みに、中村光徳の残りは浜野佐知が撮つてゐる、ピンクに樹まり子出演作が三本―オール主演―あるのは全て“いつき”の方。もしも仮に万が一、記録に残つてゐない二三番手辺りでミキマリコが何処かに紛れ込んでゐたとしたら、流石にそれは巡り合はずには神も知るまい。
 息を吐くやうにフェードを濫用する工夫を欠いた繋ぎと、体位を変へるなり棹を咥へ始めたかと思つたら、ほどなく男優部が果ててしまふちぐはぐな構成。繰り返し繰り出される二点の顕著な特徴に加へ、対芳正の、ケミカルライトを用ゐた一戦。確かに挿してゐるのはモザイク越しにも確認出来るにせよ、数本のケミカルライトのみで照明を賄はうとする市村イズム―ないし矢竹メソッド―は如何せん暗いにもほどがある。僅かに光の当たる局所以外、何がどうなつてゐるのか本当に判らない。といつた具合に、そこかしこ粗がバラ撒かれてゐながらも、何はともあれ樹“みき”まり子の奏でる尺八の音色が素晴らしく、樹“いつき”まり子と比べるとそれは見劣つたとて、オッパイも十二分に悩ましい。ど頭で風呂敷をオッ広げたきりのセクサロイドMIKI、以前に。散発的にイメージが挿入される程度の、ボディコン要素も結構劇的に薄い一種の羊頭狗肉はこの際兎も角、逆にもしくはひたすらに。ゴッリゴリに押して来る何れも実戦的な濡れ場を畳みかけ続ける質も伴つた量で、些末を圧し潰してのける始終はある意味圧巻。浜野佐知ならではの迫力と馬力漲る、極めて実用的な一作。それも、それとして。ラストに至つて“サイボーグまり子は甘く危険な誘惑である。注意されたし。”とか初期設定をこの期に及んでといふか、今際の間際に思ひだしたかと思つたら、驚愕のオーラスが“92年、トップを飾つてデビューした樹まり子がサイボーグであることに気づいた人間はゐない。”、原文は珍かな。そ、そんな(゚Д゚)。新人女優の初陣に、幾ら何でも斬新通り越してあんまりすぎる。船出から、難破かよ。尤も、最初と最後に木に竹を接ぐのが関の山、物語もへつたくれもない薄さでは、クレジットのない以上山﨑邦紀の脚本を当て寸法するのも、流石に些か憚られる次第。

 アダルトビデオ二戦目で己の致命的な弱点に直面したのが、ソクミルのユーザー評には今作に於いて樹まり子は本番を行つてゐるとある、ものの。当サイトには、いはゆる本番と疑似を見極める術がない。刑法第175条の向かう側、果たして何処を如何に見るのがコツなのか。


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