真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「好き好きエロモード 我慢しないで!」(2019/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/録音:小林徹哉/編集:酒井正次/助監督:小関裕次郎/監督助手:鈴木琉斗/撮影助手:岡村浩代・三浦裕太・高橋佑弥/照明助手:佐藤英蘭/お手伝ひ:鎌田一利/整音:Bias Technologist/選曲:徳永由紀子/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:やよいあい・如月生雄/出演:神谷充希・美咲結衣・ケイチャン・津田篤・森羅万象・山口真里《愛情出演》・横山みれい)。出演者中山口真里のカメオ特記は、本篇クレジットのみ。
 川原で振り向いた神谷充希が男嫌ひを大連呼して、夕陽にタイトル・イン。マンション夜景を一拍噛ませ最初に飛び込んで来るのは、湯船に浸かつたオッパイ。ジャスティス!と渾身で言祝ぐほかない。翌日に結婚式を控へた立川千里(美咲)が入る風呂に、両刀にさうゐない千里に対し真性の、ルームメイトである三池奈央(神谷)も入つて来る。ところで美咲結衣がポスター上の序列は三人目ながら、本クレでは横山みれいが定位置のトメに座ることにより、足かけ五年六本目となるエターナル二番手の座を辛うじて死守、何気な偉業である。風呂はサクッと上がり、ビリング頭二人が麗しく絡み合ふ初戦までは、二人が全裸で部屋中をキャッキャ戯れるチャレンジも敢行、全然瑞々しくあつた。のだ、けれど。入浴中既に伏線を投げ済みの、台所の水漏れを直しに千里が手配してゐた「マンショントータルメンテナンス」の修理工・瀬戸渡(ケイチャン)が、奈央の一人暮らしとなつた部屋を訪れる。嫌悪が恐怖症に徳俵を割つた奈央は、男とサシになるや―赤色灯メットを被つた―チープな“妄想炸裂中”モードに突入。瀬戸からバイブ責めを受けるヴィジョンに忘我した、奈央は瀬戸を殴打し卒倒させてしまふ。再度ところで、千里は微妙でもあれ奈央が造花で生計を立ててゐるとか藪蛇か非現実的な造形は、もしかすると“妄想炸裂中”モードで通常の社会生活に相当な困難が容易に予想される、点まで目配せした案外周到なものなのかも、考へすぎなやうな気しかしない。
 配役残り、登場順をケイチャンと前後して津田篤は、色情もとい式場帰りの奈央が再会する、年長の長馴染・須藤克己。高級官僚を輩出する家系ではあるが結局両親の期待には沿へず、「ニコニコ総合保険」の企画営業課勤務。森羅万象は壁一面に貼り巡らされた野鳥の写真を見るに、趣味のバード・ウォッチングは別に全くの伊達か隠れ蓑ではない模様の、奈央が住むマンションの管理人・中之島高雄。瀬戸の件で中之島が奈央に説教する最中には、ナベさんから好ポイントを見つけた電話も入つて来る。横山みれいは、トラウマを克服すべく奈央が門を叩く、「鳴海性愛クリニック」のセラピスト・鳴海理沙。当然の如く男性患者に対しては体を開く、ドリーミンな優しい世界、何が“当然の如く”なのだ。二本目は何処に出てゐたのかよく判らない、竹洞哲也2017年第四×五作・「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(脚本:当方ボーカル=小松公典/主演:若月まりあ)と、「まぶしい情愛 抜かないで…」(脚本:当方ボーカル・深澤浩子/主演:優梨まいな)以来の―正式な三本柱だと山﨑邦紀2016年第二作「巨乳vs巨根 ~倒錯した塔愛~」(主演:東凛)―山口真里は、須藤が進学した全寮制の「愛染高等学校」男子寮と森中でY字路を成す、「流星学園」女子寮に暮らす女子大生。山口真里が確か女子大生女優として世に出て来たのなんて、もう何世紀前の遥か太古の昔なのかなんて、遠い来し方を振り返るのはやめるんだ、未来に目を向けろ。
 元々ある津々浦々ラグをコロニャンにも加速されついうつかり忘れてゐたが、今上御大の我等がナオヒーロー主演作「5人の女 愛と金とセックスと…」(2019/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三=小川欽也/主演:平川直大)に続き、平成を丸々跨いで監督生活三つ目の元号に軽やかに突入した、渡邊元嗣2019年第二作。尤も撮影してゐた風情は小耳に挟みつつ、ナベが2020年は未だ沈黙してゐる。次作では山崎浩治が2016年第二作「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(主演:星美りか)以来待望の帰還を果たすゆゑ、今後再びパーマネントに戦線復帰した場合、「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/監督:田尻裕司/田尻裕司との共同脚本/主演:川瀬陽太・高梨ゆきえ)から十五年ぶりの大復活を遂げた増田貴彦とのコンビは、間に波路遥を二本挿み四作で打ち止めとなる格好に。
 序盤に咲き誇る大輪にして超絶の百合は、残念ながら最終的か結果的には全く失速する一発勝負のスタート・ダッシュ。ナベシネマ常連の二番手とトメが、共に拘束一日?をも疑はせる束の間な出演時間を駆け抜けるか通り過ぎる中、軽くガングロでショートカットの、ボーイッシュな主演女優が渡邊元嗣の琴線にあまり触れなかつたのか、辛うじて破綻はしてゐない程度の漫然とした出来栄え、栄えてない。仲良く喧嘩する奈央と瀬戸が別れ際に延ッ々繰り広げる、アッカンベー合戦には100%悪い意味で眩暈がした、大人の娯楽映画やぞ。締めの濡れ場を完遂したのち、エピローグまでわざわざ持ち出して懇切丁寧に開陳される“あの日、あの時…”の真相は、仕方のない頭数の僅少にも火に油を注がれ、七十分を費やすに値する大層な代物とは凡そ思へない。六十分でもまだ長く、深町章の最速ばりに、五十分辺りでサクッと丸め込むか振り逃げるのが、相当な―薄さの―ネタなのではあるまいか。もう一点、余計なツッコミ処を思ひ出した。徒にやゝこしい瀬戸のブブセラに関してはいつそ等閑視するにせよ、十年前まづは東大を目指して愛染に入学の決まつた須藤と、奈央の別れの件。数メートル離れたしかも直立した状態から、四つ葉のクローバーを発見する真央の人外な視力に俳優部含め誰も立ち止まらなかつたのか。神谷充希が映し出されてさへゐれば箸が転んでも満面の、そこに神谷充希がゐる限り電信柱が赤からうが郵便ポストが高からうが満足のクラスタ以外には、正直お勧めし難いショッパい一作と難じざるを得ない。

 ワンモア、今度は大事な点を思ひ出した。奈央が最初に瀬戸の訪問を受けた際着用の、水森亜土系な懐かしいテイストのイラストがプリントされたYou & meの黄色いエプロンは、あれは全体何十年前から使つてゐる衣裳なのか、物持ちがいいにもほどがある。
 備忘録< アフリカ象研究者と再婚した母親の夫婦生活に衝撃を受けた、瀬戸はいざといふ段にブブセラの幻聴が聞こえ萎える


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