真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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人妻家政婦 情事のあへぎ
は行
/
2010年09月05日
「
人妻家政婦 情事のあへぎ
」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:橋口卓明/企画・脚本:福俵満/撮影:中尾正人/編集:酒井正次/音楽:北鳥山ミュージック/助監督:菅沼隆/撮影助手:田宮健彦/監督助手:三好保洋/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:堀禎一・森元修一/出演:佐々木麻由子・伊藤猛・佐々木基子・工藤翔子・坂田雅彦・小林節彦)。プロジェク太上映の地元駅前ロマンにて、インターフィルムより2007年にリリースされたDVD版「人妻家政婦 ~ふるへる唇~」の形で観戦したものである。
「信頼と実績の愛情調査」をモットーとする私立探偵・園部亜門(伊藤)と、腐れ縁の水商売の女・宮前晶子(工藤)の濡れ場で開巻。晶子は要は浮気調査ばかりの仕事に対し己のことは棚に上げ冷笑気味だが、亜門は必死な思ひで探偵を縋つて来る顧客も居る、と自身の稼業に込めた真心も滲ませる。そんな亜門の今回のクライアントは、早速ポップに思ひ詰めた古賀英男(小林)。妻・美佐子(佐々木麻由子)と、美佐子が通ひの家政婦として働く桐山玄太(坂田)といふ男の仲を、古賀は疑つてゐた。どうやら無職らしき桐山が、家政婦を雇つてゐるのに首を傾げつつ、亜門は常套手段の読切新聞の勧誘員を偽装し桐山家を訪問。手洗ひを借りるふりをして、目を閉ぢてゐないと見つけられない位置に盗聴器を仕掛け、挙句に玄関にも設置しようとしたもう一つは、急な桐山の帰宅に慌て下駄箱の下に落として来てしまふ。信頼出来なければとても実績を残せさうにもない仕事ぶりに関しては強ひて兎も角、帰つて来るなり桐山は玄関口で美佐子を抱き始め、その時点で亜門の仕事は、ほぼ終了する、棚から葱を背負つた鴨が転がつて来るかのやうな探偵物語ではある。美佐子の不倫の事実を古賀に報告した亜門は、泣いてゐるかに思はせた古賀が、実は高笑ひしてゐることに疑念を抱く。この場面もこの場面で、一旦は泣き真似をしながら亜門の車を出た古賀が、数歩歩いたところでガッハッハ大笑ひしてゐたりする。気が至らないといふか何といふか、実にショート・レンジな探偵物語だ。亜門はその場の判断で、古賀の手鞄にも盗聴器をそのまゝの形で無造作に忍ばせる。一度でもバッグを開けたならば、「あれ?何だこれ」となる話でしかない。ここに至ると最早、天衣無縫とでもいつそ讃へるべきなのか。画調はソフト・フォーカス基調の反面演出のトーンとしては一応硬質でもあるのだが、冷静に始終の詳細を吟味してみるまでもなく、正直そこかしこが綻び放しである。ホクホク顔の古賀は、その足で浮気相手の女社長・小野明美(佐々木基子)の下へと向かふ。古賀は明美に、美佐子との離婚計画が完成間近の旨を伝へる。元々桐山は古賀の雇つたいはゆる“別れさせ屋”で、全ては美佐子と別れ、明美と再婚する目的の策略であつたのだ。出汁に使はれた格好の亜門は、桐山が姿を消した借家で呆然と立ち尽くす美佐子に真実を伝へる返す刀で、金を借りた相手に対し明美のことを口汚く金蔓呼ばはりする古賀の会話を録音したテープを、明美にも聞かせる。古賀が離婚届に判を押させるために美佐子と待ち合はせたホテルの一室で、一足先に明美と古賀の痴話喧嘩が勃発する。ホテルに到着した美佐子が立ち去る明美とニアミスする一方、古賀の部屋からは、凶器は明美のパタークラブによる古賀の撲殺死体が発見される。
好評を博したのかさうでもないのかは最早よく判らないが、以降一年に一作づつ「人妻浮気調査 主人では満足できない」(2001/脚本:武田浩介/主演:時任歩)、「探偵物語 甘く淫らな罪」(2002/脚本:五代暁子/主演:ゆき)、「
真昼の不倫妻 ~美女の快楽~
」(2003/脚本:福俵満/主演:岡崎美女)と、物語として完結した訳ではないが都合四作が製作された、私立探偵・園部亜門シリーズの第一作である。亜門が事務所、兼自宅の電話を取る際の決め台詞「はい、信頼と実績の愛情調査、園部興信事務所です」。第四作では酒井あずさに交代するものの、第三作までは通して工藤翔子が演ずる晶子と亜門との付かず離れずの関係。缶コーヒーアディクトといふ亜門のディテール等が、以降に共通する明示的な特徴として挙げられる。その上でひとまづ今作に話を絞ると、玄関先に落としたものと、画期的に丸見えな居間の蛍光灯の傘に仕掛けた盗聴器―音声のみで映像を拾はない点に、時代が感じられぬでもない―で捉へた、美佐子と桐山の情事の様子に軽自動車の中から耳を傾ける亜門の姿に、伊藤猛の滑舌の悪いモノローグが被せられる、「それから二時間、俺は彼等の獣じみた声を聞かされ続け、気が狂ひさうになつた」。
後の監督作
を鑑みるに、橋口卓明といふよりは新東宝の社員プロデューサー・福俵満(=福原彰)の志向といふか趣味であらう、スタイリッシュなハードボイルドを気取つたつもりが青臭くしかない独白で硬直した物語は、要は探偵物語は探偵物語でも、“救ひ難く間抜けな”探偵の物語に過ぎない。冒頭、追ひ詰められた依頼者に真摯に対応しようとする心構へを晶子に表したところから、カット明けると亜門が憔悴しきつた古賀と会ふ展開は、その場的な流れとしては順当だが結果論としては、プロであるにも関らず、亜門は古賀の魂胆を見抜けなかつたことにほかならない。最終的に亜門が為した能動的なアクションといへば、プリミティブな手法で入手した古賀の情報を、二人の女に伝へる意地の悪い全方位外交程度で、事件の真相が明らかになる件に於ける感動的な無為ぶりは、寧ろ清々しいくらゐである。さういふ、机か何かに突つ伏して眠る時かのやうなカパカパの脇の甘さも、実は残る三作ともが共有するものである点を踏まへると、ある意味なほのこと第一作らしい第一作と、いつていへなくもない。
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