真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ザ・完熟マダム乱立 義母・未亡人・不倫妻」(2001『人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻』の2010年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:しのざきさとみ・小川真実・佐倉萌/脚本:有馬仟世/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:三浦方雄/録音:シネキャビン/編集:フィルムクラフト/助監督:竹洞哲也/監督助手:米村剛太/撮影助手:佐藤琢也/照明助手:腰山航/スチール:本田あきら/タイトル:道川昭/現像:東映化学/出演 第一話 義母:しらとまさひさ・坂入正三・しのざきさとみ/第二話 未亡人:しらとまさひさ・なかみつせいじ・小川真実/第三話 不倫妻:しらとまさひさ・岡田智宏・佐倉萌)。
 三姉妹で神社に参拝、長女・梅川有美(しのざき)、次女・竹川明美(小川)、三女・松川恵美(佐倉)、旧姓は不明。三人は家出してしまつた、有美の義息・康雄(しらと)の発見と帰宅とを祈願する。
 「第一話 義母」(出演:しらとまさひさ・坂入正三・しのざきさとみ/監督:しのざきさとみ)。有美は後妻として梅川辰雄(坂入)と結婚、辰雄には前妻との間に息子の康雄がゐた。予備校生の康雄の気を散らせるのも憚らず、しのざきさとみV.S.坂入正三だなどと面子からして濃厚な夫婦生活を致した翌朝、有美は亭主の朝食に生卵と栄養ドリンクを出し強制的に精をつけ送り出す。すると遅れて起き出した康雄が、康雄のチャレンジャーぶりにも畏れ入るが、さて措き藪から棒に有美に迫る。当然一応拒みはしつつ、このまゝでは受験勉強出来ないなどといふ他愛もない方便に屈し、有美は康雄に身を任せる。
 「第二話 未亡人」(出演:しらとまさひさ・小川真実/監督:小川真実)。亡夫(後述する)一周忌の法要を終へた明美は、折り合ひの悪い夫の親族には体調が悪いと偽り、その後の会食を回避し帰宅する。夫の遺影に手を合はせた明美は、祭壇の下からバイブの大ヒット商品「ターザン」を取り出し自慰に耽る。一方、有美の使ひで御供を届けに来た康雄が、その様子を庭から覗き見る。明美が果てると、康雄は改めて玄関から訪問。瞬時に身支度を直した明美が特段慌てもせず平然と康雄を迎へてみせるのは、殆ど無作為に基づくギャグである。康雄は実は痴態を目撃してゐた旨告白すると、正しくあれよあれよと明美を抱く。ところで出演者中、今篇オープニングは素通りしてエンド・クレジットにのみ名前の見当たるなかみつせいじが、抜かれるのも1カット限定の明美亡夫遺影役。ピンク映画に於けるいはゆる“未亡人もの”にあつては、死んだ夫の遺影に時として思はぬドラマが発生することがあるので要注意。
 「第三話 不倫妻」(出演:しらとまさひさ・岡田智宏・佐倉萌/監督:佐倉萌)。夫・松川信彦(岡田)の暴力とダメさ加減に悩まされる恵美は、気晴らしに出会ひ系で遊んでみる。Bunkamura前の待ち合はせ場所に現れた自称大学生が、康雄だつた。二人は互ひに甥と叔母であるとも知らず、ラブホテルへ直行する。後日、帰宅した康雄は驚愕する。ギリギリ明美までは兎も角、恵美も含めた三姉妹―しかも康雄的には三冠達成済み―が勢揃ひしてゐたのだ。挙句に明美は亡夫の実家を嫌ひ、恵美も恵美で暴力夫とは別れる心積もりで、有美の家に転がり込んで来ようかとすらいふ。辰雄はそのことに首を縦に振つて呉れるのか?といつた至極常識的な疑問に関しては、勿論一切等閑視だ。舌なめずりせんばかりの義母と未亡人と不倫妻の姿に戦慄を覚えた康雄は、置手紙を残し旅に出る。
 各篇冒頭にタイトル・出演者・監督がそれぞれクレジットされる、三主演女優監督によるオムニバス作。尤も、純粋に映画の全てが女の裸を銀幕に載せる方向にしか奉仕しない、しのざきさとみと小川真実の監督パートは、感動的なまでに全く変り映えがしない。対して第三話は、冷静に考へてみれば繰り返される“日常”としては大いに不自然でもなくはないものの、尺も費やした信彦のノリツッコミ式の変則的なDVには、当時としては未だ新しかつたのかも知れない暴力のオフ・ビートさも垣間見え、佐倉萌が裸のみに頼らない映画を、確かに志向したであらう節は窺へる。今作もう一つ特徴的なのは、偶々その時の個人的な気の所為かも知れないが、お話自体はのんべんだらりとしかしてゐないものながら、不思議とテンポだけは画期的に悪くない。そのため各々十分の極小篇を三篇連ねたのかと錯覚しかねないほどに、妙にサクッと見させる。


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