真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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18倫 アイドルを探せ!/Vシネ
さ行
/
2010年09月15日
「
18倫 アイドルを探せ!
」(2009/製作:ティーエムシー/監督:城定秀夫/脚本:貝原クリス亮・城定秀夫/原作:松本タカ『18倫』秋田書店『ヤングチャンピオン』連載/製作:海津昭彦/企画:汐崎隆史/プロデューサー:三波聖治・久保和明/ラインプロデューサー:征矢吉裕/音楽:タルイタカヨシ/撮影・照明:田宮健彦/編集:城定秀夫/録音:小林徹哉/助監督:小南敏也/撮影助手:河戸浩一郎/演出助手:冨田大策・小島朋也/ヘアメイク:神山静香/ヘアメイク助手:水野真由子/スチール:佐藤淳一/制作デスク:西村絵美/制作進行:市来聖史・半田雅也/ジャケット撮影:室岡浩一/ジャケットメイク:河口ナオ/公式ホームページ制作:SUNRAY Corporation/ロケーション協力:柳川庄冶《NPOパートナーシップきさらづ》・木更津市民会館/撮影協力:ソフト・オン・デマンド株式会社、SODクリエイト株式会社、SODアートワーク株式会社/協力:灘谷馨一/制作協力:レオーネ/出演:田代さやか・河合龍之介・琴乃・持田茜・森谷勇太・こばん・中村英児・福天・吉岡睦雄・神山杏奈・かなと沙奈・辻和朗・蘭汰郎・桂野恵一・古賀忍・大山ダイキ・木村和広・鈴木晴美・ホリケン。・範田紗々/特別出演:原紗央莉)。
開巻はAV撮影現場にて、ヒロイン自ら前作「18倫」(同/脚本:高田亮・城定秀夫)の内容を掻い摘む。裕福な家庭に育つた池内倫子(田代)は医者を夢見ながらウルトラお嬢様高校(校名ロスト)に通ふが、ある日会社を倒産させた父親(森羅万象)は無体な置手紙一通を残し失踪。母親(藤崎世璃子)も間男(佐伯寛之)と行方を眩ませてしまつた為、倫子は一転、単身ホームレス生活に転落する。零細AV制作会社「バール企画」社長の沢倉(河合)に拾はれた倫子は、撮影や編集も担当するチーフAD・近藤(森谷)や録音担当のセカンド・牧谷(こばん)らに囲まれ奮闘するのであつた。と、そこまで一通りトレースしたところで、撮影中に何してやがんだと近藤が倫子の頭を叩(はた)くのがオチ。神山杏奈と辻和朗は、後ろに臨戦態勢で見切れるAV女優とAV男優。かなと沙奈と鈴木晴美も、後に同様に姿を垣間見させるAV女優。何れも一応裸は見せつつ、刹那的にカットとカットの隙間をすり抜けて行く。特に
かなと沙奈
などはピンク映画では主演級の人間を捕まへて、豪胆な話ではある。
そんな折、準備に追はれるゲリラ撮影の現場で、ここは感動的なまでのプロットの使ひ回しぶりに逆に潔さすら感じかねないが、倫子は自身と全く同じやうな境遇を辿り公園に寝泊りする、前作にも登場した級友・桜子(持田)と再会する。矢張り沢倉に拾はれた桜子は倫子と同じく、バール企画に住み込みながらのAD生活をスタートさせる。ところが、世間に全く疎い桜子は、何処から嗅ぎつけたのか事務所にまで乗り込んで来たヤクザの借金取り・ギンジとキンゾウ(福天と吉岡睦雄)の持つ一億の借用書に、深く考へもせずにバール企画の社印を捺させてしまふ。俄に窮地に立たされた沢倉らは起死回生の一発大逆転を狙ひ、AV皇帝・不知火十四郎(まさか順四郎?/ホリケン。)主催で開催される、賞金一億円のAVコンテスト・A-1グランプリに参戦することに。ところで桂野恵一と古賀忍が、AV皇帝側近の画面手前と奥。ひとまづ張り切るバール企画の前に、何やらかつては沢倉と浅からぬ因縁もあつたらしい、敏腕プロデューサー・黒木怜子(範田)率ゐる巨大AVメーカー「ソドムファクトリー」が立ちはだかる。予めお断り申し上げておくと、残念ながらパンツスーツ姿で通す範田紗々には僅かなサービス・ショットすらなし。倫子は主に桜子の独断で、怜子のA-1グランプリ用の企画を探る目的でソドムファクトリーに潜入する。蘭汰郎・大山ダイキ・木村和広、そして特別出演の原紗央莉は、そのパートに登場するAV男優・監督・ADに、大スター然と控へ室に見切れる彼女自身。
倫子らは新人女優の発掘に乗り出すが、「全裸千人運動会」を企画するソドムファクトリーの焦土作戦により、都内はおろか近郊に至るまであらかた刈り尽くされてしまつてゐた。仕方なく何処そこ県の土井那珂村にまで足を伸ばしてみたはいいものの、案の定若い女など見付けられようもない。諦めた一行が帰京するかとしたところ、彼氏・真也(中村)との痴話喧嘩に傷ついた農婦の石山民子(琴乃)が、自らAV女優を志願し走り去るバール企画のワゴン車を追ひ駆け農道を右から左にフレーム・アウトする。民子の大絶賛田舎女ぶりに脊髄反射で匙を投げかけた一同は、倫子がチャッチャとメイクを施した民子を見て目を丸くする。解剖学の基礎素養のある倫子は骨格から、民子が類稀なる美形であることを見抜いてゐた。
とか何とかいふ訳で大勝負に挑むバール企画の面々、はてさてその運命や如何に?といふ次第の奮戦記は、徹頭徹尾フォーマット通りでしかないといへばないのだが、肝心要の突破力が効いた、量産型娯楽映画の完成形である。バール企画のA-1グランプリ攻略戦といふよりは寧ろ、今作がエモーションの頂点を激越に迎へるのは、そこから派生した民子と真也の純愛物語。ヤルことはしつかりヤッて、挙句にそれをAVといふ器に入れてパッケージにまでしてしまつてゐることなどは、だからさて措くべきだ。迸る互ひへの想ひを、ノー・ガードで撃ち合ふ琴乃と中村英児の苛烈な愛の応酬には思はずグッと来て、正直にいふがホロッと来た。遣り取りされるのは「変らない今のままの君が好きだ」的なベッタベタな台詞ばかりでしかない反面、逆にそのベッタベタを十全に形にする為には逃げ場のない確かな実力と、逃げることを忘れた覚悟とが必要ともされるのではないか。地味に十年選手の中村英児はある意味当然ともいへるのかも知れないが、意外、だなどと筆を滑らせれば失礼にもあたるのか琴乃の確実な地力には、改めて驚かされた。笑つて泣かせて、勃たせる力は然程強くはないが、最後はスカッと万事を綺麗に畳む。傑作と殊更に褒め称へるほどの決定力は有してゐないやうに思へたならば、それは逆に、娯楽映画といふものはさういふ過多に、もとい肩に力を入れて観るものでもないからではなからうか。一見単なる繋ぎにしか見えなかつたやうな一幕一幕をも忽せにはせず、オーラスには全て回収してみせる妥協知らずの丹念さも何気なく輝く。
それはそれとして、土井那珂村を捨てAV女優になるべく上京した民子と、それを追つて来た真也。そんな二人の営みを収めたAVのタイトルが「
木綿のハンカチーフ
」だなどといふネタは、いはゆるアラフォー世代辺りまでならば兎も角、今の若い人達には通らないやうな気もしないではない。
以下は今作自体の内容とは、全く無関係の事柄ではある。ポレポレ東中野から名古屋シネマスコーレを経て、目下(9/4~9/17)天神シネマでも日替り七作品を二セットといふ日程で城定秀夫特集が行はれてゐる。とはいへ今回は天珍ではなく、向かうを張つてか単なる偶然か、全く直撃するタイミング(9/10~9/16)で上映した
駅前ロマン
に於いて観戦したものである。
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