真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「樹<いつき>まり子 巨乳しごく」(1989/制作:シネマ アーク/提供:Xces Film/監督:中村光徳/脚本:柳田剛一/企画:尾西要一郎/撮影:三浦忠/照明:市川元一/編集:菊池純一/助監督:柳田剛一/監督助手:土肥裕二、他一名/撮影助手:他一名、小山田勝治/演技事務:山下真由美/スチール:坂崎恵一/現像:IMAGICA/出演:樹まり子・若菜忍・小川真美・永嶺勝志・平工秀哉・平口広美・古都秀一)。演出部サードと撮影部セカンド、その他あれこれ力尽きる。出演者中、小川真美がポスターには小川真実。無論同一人物ではあれ、真美名義は初めて観た。シネマ アーク制作のシネマとアークの間にスペースを空けるのは、本篇ママ。
 個人的にこの領域に興味を持つのが遅く、正直まるで与り知らない当時の雰囲気に関しては潔く通り過ぎるほかないが、朝から“レイン”と名乗る女とのパソコン通信に熱中する予備校生・吉岡研(永嶺)の、広さも十二分で妙に小奇麗な一人住まひに、忍び込んだ予備校の悪友・藤純一(平口)が、挨拶代りに研の背中にエアガンを向ける。純一の彼女?な原口ケイ(若菜)も交へ、三人は多分純一所有のオープンカーのワーゲンで海へと、特に何するでもなく遊びに行く。予備校生風情が、ジャリ供のバブリーな暮らしぶりが堪らない。戯れにナショナルのビデオカメラ・NV-M21(昭和61年発売)を担ぐ、もとい覗く研は、海辺に佇む樹まり子の美しさに心を奪はれる。とはいへといふかところがとでもいふべきか、研が純一に呼ばれた一瞬の隙に器用に姿を消した女子大生・平山真理(樹)は、古都秀一の車中四万円で体を売る。充実した最初の濡れ場を通過がてら、研は純一とケイを海岸に残し、一人ワーゲンを走らせる。さういふ次第で、ケイが実は研に恋心を寄せる気配を匂はせつつも、若菜忍の絡みのお相手は平工秀哉が担当。当代きつての巨乳クイーン・樹まり子の陰に隠れがちとなりかねないのやも知れないが、若菜忍の、服を脱がせてみると意外に豊かなオッパイも何とも悩ましい。結果的に、ケイが裸を見せる機会が一度きりであるのは何気に惜しい。何時の間にか日も落ちた中、研は車が故障した古都秀一を無下に捨てた真理を拾ふ。後日、レインと真理が頭から離れない研を、純一はナンパに連れ出す。直截にいふと、真理にとつては売春婦仲間のヤス子(小川)を首尾よくオトしたと思つたのも束の間、まんまと金を取られた研は、ピンク映画のチラシ貼りのアルバイトに汗を流す羽目に。東宝に日活まではいいとして、更に何と松竹―東活のこと―まで並べたメジャー三社のポルノ映画を謳ふ今にしては凄まじい惹句に、喪はれるやうに通り過ぎ去られて既に久しい、麗しい時代が窺へる。小川真美(現:真実)に話を戻すと、この時代の小川真美は肢体の若さは兎も角、首から上が未だ出来上がつてはゐない。出演者最後平口広美は、客を装ひヤルことは一通り済ませた上で真理を逮捕しようとする、豪気な刑事・和田。終にレインとのオフに漕ぎつけた研は、最初の遭遇は金的で撃退した和田に追はれる真理を、和田が刑事とは知らないまゝ助ける。和田を撒いた後、互ひに待ち合はせのあるのを思ひ出した二人は別れるが、直ぐに再会。レインとは、要は実質的には真理のパソコン売春に際しての源氏名であつたのだ。研が漸くレインに辿り着いたところで、カット明けると唐突なヤス子の自慰。木に女の裸を接ぐのはピンク映画的にはある意味正しいとはいへ、だから、それならば若菜忍の裸でもいゝではないか。
 正直今となつては素性もその後の消息も追ひ辛い中村光徳の、当時人気絶頂のAVアイドル・樹まり子を主演に迎へた第二作。とはいへ、真理をセンターに展開が進行して行くでなく、あくまで主眼は年上の美しい、そして闇の部分も併せ持つと思しき女に揺れる研の青い想ひに据ゑた、オーソドックスな青春、あるいは青年映画といふ印象に納まる。樹まり子の、時の移り変りに決して屈せぬ正統派の美貌と、ボリューム感溢れる巨乳の威力は、二十有余年の歳月を経た現在にあつても、些かなりとも古びず正しく圧巻。寧ろ、訴求力に乏しい永嶺勝志メインの物語が求心力も欠き気味の平板な出来に止(とど)まるだけに、瑣末なドラマなんぞこの際いつそ不要とすら思へぬでもない。そもそも、三者三様の濡れ場もこなすものの、樹まり子の出演時間からが、永嶺勝志に比して決して長くはない。これでは「樹まり子 巨乳しごく」といふよりは、要は「永嶺勝志 きれいなおねえさんは、好きですか。」である。屈強な平口広美が樹まり子に追ひ着かないやう必死にわざと遅く走る、真理×和田×研の間抜けなチェイスや、研の送り込んだウイルスにより真理のパソコン売春の証拠データを消されてしまつた―劇中登場する、8インチフロッピーのあまりの広大さには震撼を禁じ得ない―和田が、「消えた、消えた、消えた・・・・」と無闇に尺を費やしフラつきながら、茫然自失と退場する件。別に平口広美が悪い訳ではなからうが、和田絡みの冗長なシーンも際立つ。総じた仕上がりは手堅くはあるのだが、手堅い程度に落ち着くくらゐならば、もう樹まり子の裸は金輪際見たくないと思はせるほどの、猛烈な超絶裸映画として観たかつた心は残る。


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