真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「日本発情列島 ONANIE百態」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/協力:水上荘・バラエティショップ アラジン/出演:橋本杏子・中川みず穂・如月しいな・杉原みさお・千秋まこと・石川恵美・ジミー土田・荒木太郎・立川平成)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。出演者中千秋まことが、ポスターには千秋誠。器用なのがこの人の場合、逆のケースも存在する。
 浅草繁華街のスケッチに出囃子が鳴りタイトル開巻、実名大登場、2代目快楽亭ブラック十六番目の名義である立川平成が高座に上がる。落語にも色々ある中、艶笑譚を得意とする平成が、新東宝創立三十周年記念にそのまんま「日本発情列島 ONANIE百態」と題した一席で人類の自慰の歴史を振り返るとする、壮大にして想定外のコンセプトが開陳される。開チンとか最早いはんからな、レベルが変らん。
 配役残り、最早誰なのかよく判らん―所以は後述する―石川恵美は、魚を赤貝に当てる快楽を覚えるギャートルズ以前の原始人、言葉を喋らない。如月しいなはドカーンと時間が飛んで明治時代の開明的な女学生・綾小路で、ジミー土田が、綾小路に毎度毎度なメソッドで悶々とする轟、どうせ下の名前は渉。橋本杏子は大東亜戦争の最中、隣組の中川みず穂宅に実家から届いた野菜をお裾分けするマチコ。何気に今作、jmdb準拠で中川みず穂の最終戦となる。千秋まことはザクッと現代、ヤリたい一心で矢鱈と従順な荒木太郎を、いはば人間バイブレーターに扱ふ女。男を人間バイブに女がオナニー、ここの方便だけは冴えてゐる。杉原みさおは、平成の劇中弟子・珍宝亭満好、字は推測。
 種々雑多な日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベル作を、手当たり次第見て行く殲滅戦第十四戦で一旦最終戦。誰の何だつたかは忘れたが、タグなしの「Viva Pinks!」作もex.DMMの何処かしらに転がつてゐる、筈。縁があれば、何時か辿り着くか再び巡り会へるであらう。深町章1992年第六作は、凡そ一年後に矢張りお盆公開された、「ニッポンの猥褻」(監督:深町章/脚本:瀬々敬久/主演:久保新二)共々、公式に二本存在する新東宝創立三十周年記念作。因みに、四十周年は「痴漢病棟」(2002/監督・主演:愛染恭子/脚本:山口伸明)が火蓋を切るPINK‐Xプロジェクト。そして五十周年を大々的に寿ぐ体力は、最早残されてはゐなかつた。あと三年辛抱したら、六十周年も来るのだけれど。
 旧約聖書のオナンからとマキシマム大上段の大風呂敷を広げておいて、鎌倉時代に諸首とか称された要は双頭ディルドで二人の女が燃える件を、一幕丸々影絵で乗り切つてみせる豪快なルーズさには、幾ら本格時代劇なんぞ到底展開し得ぬのも仕方のない安普請とはいへ、流石に呆れるのも通り越した。鮮やかな奇手とは映り難く、開き直るにもほどがある。周年記念作らしく倍増の女優部を擁してゐながら、顔まで汚して闇雲なアマゾン―あるいは山本大介―造形の施された石川恵美は素面の煽情性には程遠く、橋本杏子と中川みず穂が咲かせる豪華な百合が、立川平成の喋りに遮られるパート尻には激しい怒りを覚えた。兎にも角にも全篇を下手に貫く、上様のオナーニーなり枡席でマスをかく類の、他愛ない落語が一々煩はしくて煩はしくて仕方がない。ハーフ要員に男優部の一翼を担はせる、あるいは賑やかし程度ならばまだしも、2代目快楽亭ブラックに―しかもメモリアルな―映画一本背負はせるのは些かならず無理な相談。千秋まことに対抗し、平成がダメ弟子の満好―漫好かも―を高座上で人間電動フグに仕立てるクライマックス。尺八を吹かせたところ早々に果てた平成が「ごめんフグ行つちやつたの」と頭(かうべ)を垂れ、「ブウ」と河豚を模して頬を膨らませた満好がむくれるのがサゲ。何が“おあとがよろしいやうで”だ、よろしかねえよ。凝つた趣向を狙つたと思しきものの、力及ばず明確にやらかした一作。一年時期までずらしての、三十周年記念作がもう一本ある点は奇異にも思へたが、邪推するに、「ニッポンの猥褻」で寧ろ仕切り直したのではあるまいか。

 ところで最近ではゐろはに京子出演作を見られるだけ見てゐたりする内に、気づくと深町章(ex.稲尾実)の感想が九十九本のハンドレッド・リーチ。小屋だけで普通に到達した、“無冠の帝王”新田栄。新作を狙ひ撃つた浜野佐知と、合はせた格好の渡邊元嗣。小屋で未見旧作に当たれば当然自動的に、強ひて忌避するのも無理があるゆゑ、何某かのテーマが発生すればこの際、ex.DMMによる半ドレッドも辞さないことにした。


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 「痴漢電車OL篇 車内恋愛」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:西野奈々美・神戸顕一・杉本まこと・ゐろはに京子・樹かず・川本佳奈・しのざきさとみ・池島ゆたか・本間優作・小松越雄/ナレーション:芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。
 第一声が“世の中不況である”、娯楽映画の開巻なのにいきなりあんまりな芳田正浩のナレーション。雑踏の中にさりげなく西野奈々美がフレーム・イン、劇場で観てゐればこれで一目瞭然なのか、PCの液晶画面を通して見る分には軽い『ウォーリーをさがせ!』感覚。高井望(西野)は短大卒業後三菱ならぬ三角証券に就職、憧れの証券レディに。ところが入社と同時にバブル景気が弾け、“将来に不安さへ覚える今日この頃だ”―芳ナレ―とか適当に体裁を整へると電車の汽笛が起動、VHS題の「痴漢電車OL篇 Ⅲ」でタイトル・イン。課長(神戸)に電車痴漢された望は、一旦慰謝料で手を打ちつつ、転職も視野に入れる。そんな望に、AもBもない単数形のヘッドハンター(杉本)氏が接触する。とこ、ろで。神戸課長が部下とは知らず痴漢に及んだ所以が、芳ナレ曰く“不況になると痴漢が増える”、ドラキュラか。“勿論正式なデータがある訳ぢやないが”と言ひ訳した上で、“不況でサラリーマン達のストレスが増えたとすれば何となく肯ける話だ”と豪快に片付けてのける、底の抜け具合が臍で茶を沸かす。いふまでもなく、斯様にへべれけな方便、現代ピンクでは到底通らない。
 配役残り、少しでも厚目に塗るとおかめ顔が際立つゐろはに京子は、高卒の商社オーエル。樹かずは、電車痴漢を通してゐろ京に捕食される、同じ会社の営業部有望株・轟渉。池島ゆたかは、時短で日も高い内に帰宅するサラリーマン。劇中明示はされないが、定石からだと苗字は園山にさうゐなく、下の名前は多分髙志。しのざきさとみがそんな亭主に手を焼き、外で働き始める妻の明子で、何故しのざきさとみよりもビリングが高いのかが解せない川本佳奈は、明子が親密になる同僚・江藤、下の名前はどうせ倫子。残り二人、イメクラの客が本間優作で小松越雄が重役。
 深町章1994年第二作は、jmdbをex.DMMで補完したゐろはに京子第五戦。更なるjmdbの記載漏れがないとすると、ゐろはに京子の戦歴は全七作。残り未見は唯一のエクセス、佐藤寿保の「痴漢と覗き 婦人科病棟」(1994/脚本:五代響子/主演:石原ゆり?/2002年に『痴漢と覗き 名器診断』と改題)と、あの―どのだ―関根和美の「《生》女子大生 姉妹交換」(同/脚本:川合健二=関根和美/主演:林由美香)の二本、血を吐くやうに観るなり見たい。
 深町章×ゐろ京の前回痴漢電車「エッチな下半身」―に於いてもゐろ京は樹かずと絡んでゐる―同様のオムニバス、といふか不景気で括るザックリした雰囲気を除けば、三篇が一切全く一欠片たりとてリンクさへしない、よりルーズな一作。尤も、乳に勝るとも劣らない尻のパンチ力も誇る西野奈々美と―首から下に関しては―随一の美しさを誇るゐろはに京子に、造作以上に色気が堪らないしのざきさとみ。オッパイ部を三枚並べた布陣は矢張り強く、裸映画的には下心豊かに見てゐられる。片岡修二らしいアスファルトの匂ひのするオチに着地する望篇と、特に捻りもなく轟が無体に転落するゐろ京篇とを経ての、津田スタを主な舞台に繰り広げられる園山家(推定)篇。いざ勤めに出るや自分よりも帰りの遅く、園山が次第に猜疑を募らせる明子は、エクストラな四番手と百合の花を咲かせてゐた。となると、当サイト的にはここは池島ゆたかではなく、女房をよもや女に寝取られ徒に重厚に苦悩する、栗原良(a.k.a.リョウ・ジョージ川崎・相原涼二)の出番を期待しかけたいところが、まさかの三人での新性活―倫子のセクシャリティはガン無視―に活路を見出す、予想外の無理から大団円には軽く度肝を抜かれた。そこかしこの無造作さが清々しい、良くも悪くも大らかなクラシカルである。

 それはそれ、あるいはそれもそれとして。jmdbの記載にある、岩田治樹が今作のプロデューサーだなんて全体何処から湧いて来た与太なのか。


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 「痴漢電車 エッチな下半身」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:村川聡/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・扇まや・山本竜二・ゐろはに京子・樹かず・西野奈々美・池島ゆたか・久保新二)。
 新東宝・ニュース・ネットワークの略なのか、朝のSNNニュース。キャスターの山又(池島)が女子アナ・真紀(西野)とのコンビで、コカイン所持で逮捕された片山書店前社長・片山夏樹被告人(は一切登場せず)の愛人・板元京子(扇)が、大量のコカインを所持したまゝ逃亡した事件を伝へる。とこ、ろで。ハルキックスがお縄を頂戴しREXが蔵にぶち込まれた、熱い内どころか鉄が未だアッチアチの三ヶ月弱後が今作の封切り、フットワークが軽いにもほどがある。閑話―で済まないが―休題、御馴染津田スタのダイニングキッチンにて、春雄(山本)と妻の石川恵美(役名不明)がそれを見ながら朝食。セックス下手でうだつの上がらない春雄が、徹底的に石川恵美から虚仮にされ倒して、都心を横断する電車のロングにタイトル・イン。決して美人ではないのかも知れないけれど、石川恵美が可愛くて可愛くて仕方がない。ひとつひとつの、何気ない素振りから狂ほしく堪らない、結婚したい。

 黙れ、あるいは消失しろ

 満員電車の車中、春雄は自らグリグリ体を預けて来る、扇まやとコンタクトする。春雄の画面左手、抜かれるやうに見切れてるのは若きひろぽんぢやねえか?
 山竜の目が点になる、豪快なオチから次の話題に入るSNNニュースの、ブラウン管挿んで津田スタDKから一人暮らしの部屋へと移行する、さりげなく超絶スマートな繋ぎで新章突入。配役残り樹かずは、青森から上京した浪人生・武良。ゐろはに京子が、さうとは知らず武良が電車痴漢を通して出会ふ、補導しようとした警官を刺した援交JK・圭。今度は街頭ビジョンを噛ませて、ザクッと最終章。久保新二は、視聴率獲得に形振り構はない、SNN局報道局長の椿。今度は封切り一ヶ月弱後に死去した逸見―政孝―さん改め劇中辺見さんにあやかり、山又に生放送で嘘の癌告白をさせようとする、だからフリーダムにもほどがあるだろ。
 深町章1993年第七作は、ex.DMMのタグづけがjmdbの記載を凌駕する、ゐろはに京子幻の第二作。当人達の記憶含め恐らく何処にも正確な記録の残らない、不毛の荒野を一歩一歩分け入る無為。キナ臭い三面記事なり有名人の生き死にパン食ひ競争感覚で喰ひついた、オムニバス仕立ての一篇。当方、もしくは今回の目的的にはゐろ京の裸が本来の目的であつた、中盤が突発的にエモーション弾ける。いい加減な津軽弁が抜けない朴訥とした武良に、やさぐれた圭が田舎暮らしを勧める件。下り列車は後ろ向きだと排する武良に対し、圭は「ぢやあ東京の人間はどの電車に乗ればいいの?」と飛び込んで来た上で、「ぢやあ私は山手線だな」。ただぐるぐる回つてゐるだけで、絶対真ん中には辿り着けない。すると今度は武良が「歩いて行けばいべさ!」、二人で東京の中心に歩いて行く旨約した流れでの、呆気ない別れが何となく沁みる。春雄が膨らませる皮算用的なイマジンで、石川恵美のエクストリームな痴態をタップリと見せる序盤に、久保チンのアクティビティで加速、滝田洋二郎ばりのスラップスティックに雪崩れ込む終盤。三幕各々の見所に富んだ、決して色物ないしツッコミ映画の範疇に収まらない良質な量産型娯楽映画。唯一難点を論ふならば、最終的にはボーイ・ミーツ・ガールの器としてしか機能してゐない、痴漢電車の一本調子。武良が圭と、電車を降りてしまふ選択に至るのが、その点象徴的ではある。


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 「痴漢電車 制服がいつぱい」(昭和61『痴漢電車 終点までいかせて』の1992年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:深町章/企画:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:佐藤寿保/監督助手:上野勝仁/撮影助手:片山浩/照明助手:森岡薫藻/録音:東音スタジオ/現像:東映化工/出演:田口あゆみ・水上乱・ジミー土田・幡寿一・久保新二・しのざきさとみ・かすみさやか・津崎一郎・幡寿一・池島ゆたか・風見玲香・柏木早苗・立川小錦・港雄一・野上正義)。企画の伊能竜と、出演者中二重クレジットされる―本篇ママ―幡寿一に、津崎一郎はそれぞれ向井寛と佐藤寿保に津田一郎の変名。柏木早苗が、VHSジャケには柏木さなえ。
 新宿の高層ビル群を舐めて、「痴漢!?したことありませんよそんなもん」とジミ土の素頓狂な第一声で華麗に開巻。「何だつて、したことない!?」、久保チンの豪快な逆ギレに、ジミ土も流石に気圧される。とか何とか昼行燈上司が、部下に電車痴漢を勧めるとかいふ底の抜けた寸法で、カメラ目線の久保チンが「君達も痴漢やつてみない?」、ナア!とシャウトを決めてタイトル・イン。続くクレジット時、六甲おろしが実曲大起動するのが何事かと首を傾げるならば、想起されたし。前年の昭和60年は、阪神タイガースが二十一年ぶりのリーグ優勝と、三十八年ぶりの日本一を達成した年である。
 尺を大体三等分した、オムニバス仕立てで設定程度のふんはりした物語しか存在しない一篇につき、サクサク配役残り。Psrt1のみ何故か黒バック―以降はブルーバック―の、“Psrt1 セーラー服”。結局速攻でバラけつつも、久保チンがジミ土を先導する形で痴漢電車満員の車中に。水上乱は、ジミ土がコンタクトするセーラー服、煌めくほど女子高生には見えないけれど。若い頃は軽く山西道広似の幡寿一が、ジミ土が排除する格好となる水上乱のお得意。久保チンと対する田口あゆみ共々、水上乱は電車痴漢で金銭の対価を得てゐた。軽く痛い目に遭つた久保チンは、二度目の対戦で田口あゆみにバイブを突つ込んだ上で痴漢電車を離脱。ホームにて腕をグルングルン回しながら、ダブルミーニングの“必殺無チン乗車”を誇るといふのが痛快なパンチライン。“Psrt2 白衣”のファースト・カットは、結婚を控へた二人を、不忍池?の湖面に映す。池島ゆたかが係長昇進に手の届いたヨウイチで、アテレコのしのざきさとみが、ヨウイチとは温度差を感じさせ結婚を焦る恋人・トモコ、職業は看護婦。名前は可愛らしいかすみさやかは、ヨウイチが車内でナンパするゴリラ。津崎一郎は、ゴリラが膣痙攣を起こした修羅場に、トモコと緊急の往診で―要は自宅に―駆けつける医師。再登場の幡寿一は、如何にして着せたのか肉便器メッセージのプリントされた白衣のトモコに、群がる集団痴漢要員、もう二人見切れるのが片方は上野勝仁にしても、三人目には完全に手も足も出ない。漸く六甲おろしに辿り着く、“Psrt3 喪服”。野上正義は、電車に揺られる間も録音した真弓三十三号の実況を聴いてゐたりするくらゐの虎キチ・リョウスケ、柏木早苗が浮気相手。柏木早苗とパツイチ愉しんだのち、遅く津田スタに帰宅したリョウスケは、虎キチ夫婦の鬼嫁・ユキエ(風間)にコッ酷く怒られる。ところがそんなリョウスケが、阪神がヤクルトと引き分け二十一年ぶりのリーグ優勝を決定した瞬間、歓喜の急死。四十九日を終へたユキエは、坊主なのに何時も通りのアイパーな港雄一に何だかんだ喰はれる。最中、リョウスケを殺したのは阪神であると頻りに唆す坊主が、事後巨党である旨判明するのが無体なオチ。2代目快楽亭ブラック十三番目の名義である、立川小錦はラストの痴漢電車―正確には逆痴漢ないし痴女電車―でユキエがミーツする、縦縞を着たハーフ。
 久し振りに再起動した「Viva Pinks!」殲滅戦第十三戦、残弾数、一。新題のまゝビデオ化されたゆゑ、特定に軽く難儀した深町章(ex.稲尾実)昭和61年第一作、改名後第二作に当たる。久保チン×ガミさん×港雄一の男優部三巨頭を揃へ、女優部も倍増といふ豪勢な布陣を見るに、恐らく正月映画なのではなからうか。尤も倍増とはいへ、田口あゆみ・しのざきさとみ・風見玲香の実質三本柱以外は、乳尻には各々の魅力なり訴求力を有しながらも、何れ劣るとも勝らない大絶賛谷間ばかりの裏ローテ、それは寧ろ平地だ。実は田口あゆみが乳も拝ませないものの、久保チンが軽やかに弾けるPsrt1。久保チンと、ガミさん&港雄一に挟まれた池島ゆたかが絶望的に分が悪く、展開的にも最もプルーンではあれ、しのざきさとみが被弾する集団痴漢がクッソどエロいPsrt2。女房に怒鳴られムッチャクチャに開き直るガミさんと、港雄一に弄ばれる風見玲香の、いはゆるゴムマリ感あるオッパイが素晴らしいPsrt3。特段の映画的な面白味は一欠片もないにせよ、各篇それぞれそれなりの見所に富んだ、多分新春を飾つたに相応しい賑々しい一作である。


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 「暴行・トイレの中で」(昭和59『好奇心レイプ』の多分VHS題/製作・配給:新東宝映画/監督:稲尾実/脚本:池田正一/企画:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:渡辺元嗣/監督助手:笠井雅裕/撮影助手:片山浩/照明助手:中野智春/編集助手:岡野弘美/録音:東音スタジオ/現像:東映化学/出演:河井憂樹・田口あゆみ・藤冴子・花日米子・大貫百子・ジミー土田・池島ゆたか)。監督の稲尾実は深町章の前名義、企画の伊能竜は向井寛の変名で、撮影の志賀葉一はa.k.a.清水正二。池田正一ものちの高竜也らしいけれど、まだ活動してるのかな?近作が出てゐる形跡が見当たらない。昔エグみを気に入つて、砂戸増造をよく読んでゐた。胸一杯の、知らんがな(´・ω・`)感。
 閑話休題―午後―八時過ぎの目覚まし時計、双眼鏡のアップにタイトル・イン。寝室の窓越しにセックスする河井憂樹×池島ゆたかと、その模様を窺ふ双眼鏡を行つたり来たり。濡れ場は中途で九時過ぎ、多分浪人生か何かその辺りぽい、双眼鏡氏の部屋。薄明るいのは、翌日の早朝か。赤いショートカットのコンバースが、獲物を探し彷徨ふ。双眼鏡氏といふか双眼鏡クン(ジミー)が、笠井雅裕と抱擁を交し別れた黄色いワンピースの女(花日米子か大貫百子)を襲ふ。白昼、クソよりダサいトレーナーでぶらぶらする双眼鏡クンは、常日頃池島ゆたかとの情事を覗いてゐる河井憂樹を街中で目撃、津田スタの自宅まで尾ける。近所のタバコ屋兼「高野文房具店」と電話帳を頼りに、双眼鏡クンは河井憂樹の個人情報を特定。荒井英吉(影ひとつ登場せず)の妻・怜子(河井)が、英吉が毎週泊りがけのゴルフで家を空ける土曜日、池島ゆたか宅に通ひ逢瀬する外堀まで埋める。双眼鏡クン・ミーツ・怜子の件で一点通り過ぎられないほどに衝撃的なのが、改めて爆裂するジミ土の短足。
 池島家(仮称)を出歯亀しては、発奮して強姦するのが双眼鏡クンのエクストリームな日常なのか、配役残り田口あゆみは、劇中二人目となるチャリンコの女。大貫百子か花日米子が、ナベとのドライブの最中尿意を覚え墓地で野ションしてゐると、ダイナミックな構図で飛びかゝる双眼鏡クンに襲撃される女。そんなところで用を足してゐるからだ、藤冴子は四人目の赤いワンピースの女。
 何故お気に入りに入れてゐたのか自分でも謎な、稲尾実昭和59年、案外少ない最終第五作。河井憂樹の濡れ場は腰を据ゑて見せる反面、残りは早朝なのかもしかするとほぼ二十四時間経過した夕暮れ時なのか、どちらにせよ薄暗いのと激しく動くか表情を苦悶に歪めるに終始するゆゑ、女優部の特定にも困難を覚える。とまれ二番手以降の絡みは何れもハードで、深町章かと思ふとなほさら予想外に、乾いたカットを意図的に叙情を廃して繋ぐソリッドな裸映画。正しく勝利の美酒に酔ふ双眼鏡クンが迎へる、スカッと呆気ない最期も全く以て類型的なものながら、それなりの綺麗さで形になつてゐる。

 とこ、ろで。双眼鏡クンが女を犯すのは、そこら辺の野外か物置風の小屋か廃車?の車内。と、遂に乗り込んだ荒井家。即ちトイレの中で、暴行するシークエンスなんて一欠片たりとて存在しない件、何を考へてこんなタイトルつけたんだ。ジャケにはエレベーターといふ単語も躍るが、普通に乗るエレベーターさへ出て来ない、自由気儘すぎる。


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 「熟女6人 しびれる股間」(1994『妻たちの昼下り 集団不倫』の2017年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/撮影助手:片山浩/監督助手:榎本敏郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:井上あんり・扇まや・風間晶・清水大敬・神戸顕一・林田ちなみ・林由美香・杉原みさお・杉本まこと)。
 タイトル開巻、外は薄明るい夫婦の寝室。井上あんりが身悶え、布団の中から杉本まことの声が聞こえる。恐らく日曜早朝の夫婦生活を経て、鳥海達夫(杉本)の妻で、通訳のスキルを持つ真紀子(井上)は京都で開催される国際会議の通訳を乞はれ、一泊二日で出発。一人になり、真紀子への恋情を達夫がグジャグジャ持て余してゐると、縁側から同僚の望月(神戸)が、不倫相手の野口妙子(杉原)とその友人・里見隆子(林)を伴ひ闖入。望月が達夫に隆子を宛がふ形で銘々オッ始める和室に、専務の花田(清水)がやつてゐるなと登場、勝手に上がつて来たのか。花田に随伴して、社長秘書の深山民子(林田)も現れる。依頼退職予定者名簿に載せられた達夫に、望月は花田の社内派閥に入る救済策を持ちかける。ただそれには不倫を総合的な人間力の指標と称揚する、花田と文字通りが本当に文字通りな裸の付き合ひをする必要があつた。大概底の抜けた方便をも、正体不明の蓋然性で通す清大の突破力。
 配役残り扇まやは、電話越しに豹変した花田が猫撫で声で接する妻・雪江、前社長の末娘。風間晶は、雪江の百合の花香る愛人・美樹。
 少々早いが封切りが十二月中旬となると、倍増の女優部六人態勢は正月映画仕様ではなからうかと思はれる、深町章1994年最終第七作。実は明示された人妻は真紀子と雪江の二人しかゐない―真性ビアンの美樹は確実に違ふ、筈―旧題ないし元題に対し、熟女を安売りする2017年題も何れもちぐはぐではある。2017年題と特別に年次を限定したのは何事かといふと、因みに1997年最初の新版公開時の新題が「不倫妻 ザ・快楽園」で、2003年時には「不倫妻 甘い体臭」。一方下の句が、各々のニュートラルさを共有するのも地味に趣深い。
 要は津田スタからほぼほぼ動かない省力撮影で、ひたすらな濡れ場濡れ場に終始するストロング・スタイルの裸映画。さうはいへ一歩間違ふと単調なお休みタイムに堕しかねないところを、後半急展開が二発火を噴き案外素面で惹きつけさせた上で、小粋なラスト・ショットまで駆け抜ける。達夫が陥つた絶体絶命の危機に、公子が伝授する奇策のスイング感も堪らないが、予想外の真紀子行先には素面で驚かされた。現行のデフォルト尺七十分を戦ふには些か薄いネタ―今作五十六分半―とはいへ、構成の妙で潤沢な裸を見せきる小品である。


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 「下半身警備 あの名器を守れ」(2004『桃色ガードマン カラダ張ります!』の2017年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/選曲:梅沢身知子/助監督:佐藤吏/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/現像:東映ラボ・テック/出演:里見瑤子・鏡野有栖・酒井あずさ・川瀬陽太・かわさきひろゆき・牧村耕次)。滅多にない位置に選曲が飛び込んで来るクレジットではある。本当はスチールがもう一人元永斉
 ファースト・カットは朗らかに意表を突くかわさきひろゆき、百歩譲つて舞台ならばまだしも、映画に出るなら歯を治せ。警備会社「国際警備保障」付け髭の部長(かわさき)が、左右田万太郎(川瀬)に表彰状風に正規雇用の辞令。そんな児戯じみた会社と脊髄で折り返しかけたが、案外世の中広いのかもな。万太郎の初任地は八王子、古い庄屋屋敷、の蔵に保管されてある時価二十億のダイヤの警備。にしては、蔵の画は御馴染塩山温泉(山梨県)水上荘。八王子方面に走る、車載カメラでアリバイを作つてタイトル・イン。とか何とか颯爽と万太郎が向かふ庄屋屋敷は確かに見慣れない日本家屋であるものの、結局内部は矢張り水上荘。先制でロングの外景を効果的に叩き込むことによつて、上手く騙くらかしてゐる。
 配役残り、エーッ!まだ設定程度でこれといつて物語も起動してゐないのに。兎も角牧村耕次は、最小限の造作でそれらしく見せる警備員控室にて、万太郎を待ち受ける古参警備員・白川源次。白川が万太郎を連れ、庄屋屋敷の屋根から双眼鏡で遠目に覗く青姦カップルが、女―といふか尻―は里見瑤子に見えつつ、菊島稔章ばりの巨漢を誇る男は不明。改めて里見瑤子は、件のダイヤを狙つて現れたのか否かが実は不明な、女盗賊その名もベルサイユの黒バラ。不審な気配に万太郎が「もしやベルサイユの黒バラ姉ちやん?」といきなり身構へる、プリミティブに飛躍の高いシークエンスに腰骨を爆砕されてゐると、事前に万太郎は下手糞な絵の手配書―当然似ても似つかない―を見せられてゐた、知らねえよ。酒井あずさは、白川が大胆にも控室に連れ込む嫁・マチ子、ところで庄屋屋敷の家人は完スルーされる。鏡野有栖は、帰京した万太郎が飛び降りようとしてゐるのを制止する、スーサイダー・順子。屋上で―どさくさ紛れのオッパイ込みで―揉み合ふうちに、カット跨ぐと何処か知らん屋内に大移動、即絡みの火蓋が切られる豪快か乱暴な繋ぎが清々しい。
 未見といふ訳でもないのに、何故か別館が通り過ぎてゐたのを二度目の新版公開で再戦した、深町章2004年最終第六作。マチ子が憚る風情も窺はせない嬌声にアテられ、ベル黒は蔵の表で自慰をオッ始める。そこに到着した万太郎が、喰はれる形で開戦。完遂を待たずにベル黒に闖入―劇中用語ママ―し、ダイヤ盗難を阻止した表彰状をツケヒゲ部長(仮名)が万太郎に授与。ザクッとといふかガサッととでもいふか、兎も角、あるいは兎に角終止を分断して東京篇に突入。万太郎と一発カマしたが順子は生―か性―の意欲を取り戻し、ツケヒゲ部長が今度は自殺を阻止した功労状を万太郎に授与、八王子篇に再突入。木に竹を、接ぐ必要なんてあんのかオラといばんばかりの、力任せに東京と八王子を往復する展開が猛威を振るふ。帰還した控室でのベル黒との二回戦事後、激しく消耗する万太郎の下に順子から、また死にたくなつた―からシテ欲しい―旨の電話がかゝつて来るオチは一応成立してゐなくもないにせよ、牧村耕次が粗雑におどけてみせるオーラスは蛇に描いた足。そもそも、ベル黒に関して劇伴にツィゴイネルワイゼンを鳴らし、表層的な革命思想を振り回させるに至つては完ッ全に意味不明。邪推するに、要は深町章が本当に自分で脚本を書くと斯くも支離滅裂になる、といふだけの話に過ぎないのかも知れない。


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 「性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:田端功/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:国分章弘/撮影助手:飯岡聖英/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/出演:荒木太郎・渡辺由紀・千秋誠・宮下なお・上田亜衣・姫ゆり・西田早紀・飛田翔)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 津田スタの和室が点灯、荒木太郎が「こんにちは、これは日本の風俗をテーマにした映画です」と真正面から大登場。電気を点けないと真暗く、夜にしか見えないんだけど。続けて「人類最古の職業といはれる売春婦は」とか藪蛇な特大風呂敷をオッ広げ、時代の変遷に伴ふ―狭義の―新風俗の興亡をああだかうだ適当に概観しつつ、一通りの業態を潜り抜けた体験談を紹介するとするコンセプトの提示と、漢字でどう書かせる気か荒木太郎に「この映画の脚本を書いたメグリトモヤスです」と自己紹介させた繋ぎで、お店に置いてある風の嬢の目線入り写真にタイトル・イン。
 物語らしい物語も存在しないゆゑサクサク配役残り、渡辺由紀は、メグリが十数年前に凝つた、マントル嬢・アサミ。嬢が好んで口にするプロフィールとして、一位:十九歳専門学校、二位:二十歳OL、三位:二十一歳女子大生とするメグリ調べランキングが絶妙。メグリの御縄は免れながら、アサミが十七歳高校生であつたといふオチがつくのと、嬢の逆サバを八十年代以降新たに見られる特徴とする視座が開陳される。完全に顔をボカシで隠した嬢への短いインタビュー挿んで、盛り上がつた友人(飛田)と嬢を二人呼ぶホテトル篇。ここで初めて辿り着いたのが、飛田翔といふのが田尻裕司の変名。面倒臭い泥酔者を、案外楽しさうに演じてゐる。二人呼ぶホテトル嬢の女優の顔をしてゐる方が千秋誠で、問題が、残りの女優部が姫ゆりすら特定能はず。内訳は千秋誠の連れのホテトル嬢Bと、SM方面にシフトする後半に登場する順にM嬢A、鉄砲乳が見事な女王様に、M嬢B。女王様とM嬢Bでは間違ひなくないけれど、かといつてM嬢Aも姫ゆりとは別人なんだよなあ。
 片岡修二ピンク映画最終作「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/脚本:甘木莞太郎/主演:吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)の前作、「性風俗ドキュメントⅡ ザ・快楽」(1992/主演:下元史朗)を見ようとして、無印第一作もDMMの中にあるのを見つけ順番に片付けるかとした深町章1992年第三作。時代と量産型娯楽映画の大山に埋もれた名作たる「性風俗ドキュメント」シリーズ最終第三作が、「最新!!性風俗ドキュメント」(1994/監督:深町章/構成:甲賀三郎/主演:林由美香・荒木太郎)。軽く覗いてみると荒木太郎はピンク男優役で、「ザ・快楽」にもクレジットレスながら顔を出す皆勤賞を達成してゐる。
 話を戻すと物語のみならず、映画の中身も特にこれといつてない。飛田が使へない上にホテトル嬢Bは返すとした金も受け取らず、ならばとメグリが初体験の二輪車に突入する展開なり構成の妙が関の山。所詮はマントルであらうとホテトルであらうとヤッてゐることに―少なくとも映画上―差異は一欠片たりとて見当たらないのと、出し抜けに懐かしきノストラダムスに代表される終末思想まで絡めた、種族の繁栄を等閑視した快楽オンリーのメグリ曰く“世紀末セックス”を、エスエムに直結する方便が豪快もしくは粗雑に過ぎて、後半は幾ら濡れ場の羅列に過ぎぬにせよ、流石に映画が体を成してゐない。夜の街に繰り出すメグリが「それでは失礼します」と津田スタ和室を消灯、残されたテレクラにかけた嬌声が漏れる受話器がラスト・ショット。五分余した早目の尺をそこだけ掻い摘むとそれなりの余韻も残して締め括るのは、幕引き際に長けた深町章の妙手。


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 「痴漢本番生録旅行」(昭和58/製作・配給:新東宝映画/監督:稲尾実/脚本:福永二郎/企画・製作:吉岡昌和/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:渡辺元嗣/監督助手:佐藤寿保/撮影助手:栢野直樹/照明助手:田端功/効果:秋山実/録音:東音スタジオ/現像:東映化学/協力:姫路 ホテル さくら・中国料理 凰園 坊勢 みなと旅館/出演:風かおる・螢雪次朗・成田誠・あおい恵・星野まゆみ・田口あゆみ・たこ八郎・関成太郎・中山光男・たかとりあみ)。出演者中、たこ八郎と関成太郎は本篇クレジットのみ。VHSジャケとの対比だと、螢雪次朗と関成太郎がVHSジャケには蛍雪二郎と関多加志、次から違ふのは初めて見た。
 子供の声響く下町に存する東京ビデオ製作株式会社に、「ビデオの世界を制覇するんだよ!」と螢雪次朗のシャウトが轟く。AV版お夏清十郎を姫路ロケで撮るぞと鼻息荒い、劇中“兄貴”としか呼称されない監督(螢)に対し、助監督の乙吉(成田)は札幌ロケを敢行した「ポルノ函館の女」の爆死を揶揄するが、ビデオ界のスピルバーグを自称する兄貴の中では「強烈生録ビデオ 秘傳お夏清十郎」のタイトルまで既決。もう少し寄ればいいのに、画面凄え奥を新幹線が通過する画にタイトル・イン。乙吉の役柄か一見トロさうにも見せて、螢雪次朗と成田誠のコンビネーションが案外悪くない。姫路入りした二人がとりあへず向かつた先は、兄貴が紹介状も得てゐた興業会社社長・倉持都(たかとり)の社長室。都に俳優部の現地調達を依頼してゐると、都の高校生の妹・サキ(田口)が金の無心に顔を出す。兄貴が都に夜這ひを仕掛け、嬌声に誘はれたサキは乙吉が喰ふだか喰はれる豪快な一夜経て、ロケハンで坊勢に渡るフェリーに乗つた二人は、兄貴がヨーコ(あおい)に、乙吉は星野まゆみに無造作な船上痴漢。周囲には、普通に乗船した通常の乗客が大勢ゐるにも関らず。大概がヒット・アンド・アウェイで済まされた、昭和の大らかさが麗しい。再び社長室、都が用意した女優部三人の内、二人がヨーコと星野まゆみであるのに兄貴と乙吉は驚きつつ、三人目の、見るから堅気然とした夏子(風)に乙吉は心を奪はれる。
 配役残りたこ八郎と、関たかしの変名の―どれが本名義なのか知らんけど―関成太郎は、女優部に続いてゴチャゴチャ如何にも使へない風で社長室に雪崩れ込む男優部。中山光男は、夏子が裸仕事に手を汚す羽目となつた元凶、お馬さん発プロミス経由で八百万もの金を使ひ込んだ清十郎。
 「Viva Pinks!」殲滅戦第十戦は、稲尾実(=深町章)昭和58年第三作。企画と製作となると、幾分以上金も出してゐるにさうゐない吉岡昌和は、ピンク映画風に判り易くいへば、要は姫路の静活・山陽企業の多分当時社長。かつて存在した企業扱ひされることもある山陽企業は、社名を変へ現存。孫か息子か婿養子か知らないが、矢張り吉岡一族が代表取締役に座つてゐる。
 潤沢な頭数を擁し濡れ場を釣瓶打つ始終が勢ひはあるものの、近年今上御大が完成させた現代ピンクひとつの到達点・伊豆映画と比べると、御当地映画としての仕上がりは随分粗い。代つて成田誠が遂に熱く爆発させる、夏子に向けられた乙吉の純情は十二分にエモーショナル。に、せよ。清十郎があまりにもクズ過ぎて、なほ清十郎を庇ふ夏子の姿は素直な感情移入を妨げ、顛末の最終的な落とし処も、どさくさと通り過ぎられる。時代を超えて悩ましい風かおるのオッパイ以外に、側面から飛び込んで来る思はぬ見所は、女優部の到着を待つ小舟の上、戯れにダンスを踊るたこ八郎の妙に堂に入つたリズム感。ダンサーとして全然普通に成立する踊りぷりに、この人こんなセンスあつたんだと目を見張つた。


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 「痴漢各駅停車」(昭和53『痴漢各駅停車 おつさん何するんや』のVHS題?/製作・配給:新東宝興業/監督:稲尾実/脚本:福永二郎/企画・製作:伊能竜/撮影:志村敏/照明:斉藤正明/音楽:芥川たかし/編集:酒井正次/記録:豊島睦子/助監督:西田洋介/監督助手:佐々木正人/撮影助手:志賀葉一/照明助手:岡本健次/効果:サウンドプロ/録音:東音スタジオ/現像:ハイラボセンター/音楽提供:ビクターレコード/大阪ロケ協力:大阪十三サンボード・ラブラブ/唄:ヨーコブルースばんど/出演:久保新二・野上正義・川口朱里・北乃魔子・中野リエ・北沢万里子・沢木みみ・長友達也・桂サンQ・桜マミ)。出演者中、沢木みみがポスターでは沢木ミミで、北乃魔子に至つてはポスターに記載がなく、代りにといふか何といふか、岡田綾子とかいふ全く別かつ謎の名前が。企画・製作の伊能竜は、向井寛の変名。監督の稲尾実が、VHSジャケには深町章。ピンクでスクリプターのクレジットを目にすると、軽くビビる。
 久保チンが待つホームに電車が到着するのを、妙に視点の高い謎アングルで捉へる、カット跨いで電車のロングにタイトル・イン。即ヨーコブルースばんどの「おつさん何するんや」起動、クレジットが俳優部に突入して、改めて車中の久保チンに寄る。四菱産業社員の早井のりお(久保)が、ビリング推定で中野リエに痴漢。騒がれるも、どさくさ逃げる。判子を一捺し貰ひに部長室に顔を出した早井を、四菱のかう見えて営業部長・助川太郎(野上)が捕まへる。朝同じ電車に乗つてゐた助川は、早井の拙い痴漢に物申す。てな次第で、一緒に乗つてみた通勤電車。助川は巧みな指戯で、騒がれることもなく不完全消去法で北沢万里子を絶頂に導く。ズリ落ちた女のニット帽を、優しく被せてあげるガミさん超ジェントル。ところが傍らの早井が手を伸ばすと、途端に多分北沢万里子?は騒ぎだす。大体感服した早井が助川に弟子入りする格好で、久保チン×ガミさんによるチン道中が出発進行する。
 配役残り沢木みみと長友達也は、早井宅に到着した助川が、何故か持参するドリルでゴリゴリ押入れ越しに壁に穴を開け出歯亀に垂涎する、絶え間ない夫婦生活を営む隣の新婚夫婦。桜マミは、そんな助川をも苦しめる、性欲の旺盛すぎる妻。助川が呼ぶ名が、その都度シズコにもヒロコにもツルコにも聞こえる。現在2代目快楽亭ブラックの、通算四番目の名前となる桂サンQは、サンフランシスコのマッカーサー社から四菱との商談で大阪に来日する、社長の倅の取締役部長・ジョージ。ジョージの接待で、まづは十三のステージ・パブ「ラブラブ」に。川口朱里はそこでジョージが喰ひつくクラブ歌手、いはずと知れた林家木久蔵(現:林家木久扇)の「いやんばか~ん」を披露する。四菱コンビはジョージに川口朱里を宛がふが、野球のバット並の巨根に失神。北乃魔子は代りに招聘する、一晩での外人十人斬りの伝説を持つパン女。そして、看過能はざる大きな小ネタ。助川がチョンガーの早井を細君に揶揄していはく、「相手がゐないから変な歌歌ひながらカイてる」。ここでいふ“変な歌”とは、同年発表された久保チン永遠の名曲「マスマスのつてます」を指す。
 DMMで見られる、ビデオ安売王で販売―あるいは日本ビデオ販売より発売―されてゐた「Viva Pinks!」レーベル作を、配信開始日順に虱潰して行く殲滅戦。第五戦はぐつとクラシカルに、稲尾実(のちの深町章)昭和53年、怒涛の全十八作中第七作。同年スマッシュヒットを飛ばしたヨーコブルースばんど(野毛洋子)デビュー曲のタイトルを公開題に冠し、主題歌に使用してゐる。この時期の新東宝にしては珍しく、レコード会社とも正式に話を通して。
 新版込みで後年の深町章といへば、濡れ場に喰はれるデフォルトの制約以上に尺を比較的ゆつくり乃至はモッサリ回し、最後の最後で狙ひ澄ました一ネタをピシャッと通す、や否や丸め込むかのやうに映画を畳む。幕引き際の鮮やかな手管の印象が―開巻の神速を誇る新田栄とは対照的に―個人的には強いものであるが、土台がプロダクションから違ふといつてしまへばそれまでともいへ、早井と助川の―何処から先がアドリブなのか判らない―丁々発止を推進剤に、矢継ぎ早に次の局面、そのまた次の局面へと目まぐるしく移行する展開の、ザックリいへば深町章と同じ人が撮つてゐるとは思へないスピード感に目を見張る。少なくともある時点で既に合つてゐた息が、量産型娯楽映画の途方もない反復なり修練の末にひとつふたつ次元を超えた、話を逸らすと今作の二十一年後にはピンク映画版「真夜中のカーボーイ」に行き着く、久保チンとガミさんの百戦錬磨、縦横無尽のコンビネーションが兎にも角にも素晴らしい。
 物語的には膠着した事態を、毒を以て毒を制す奇策で打開する。より正確にいふと映画の前半苦しめられた毒を以て、後半新たに飛来した毒を制す、見事に練られた構成が出色。一難去つて元難に戻るラストもユーモラスに、よく出来た量産型娯楽映画を堪能した堪能した、と、行きたいところではあつたのだけれど。申し訳程度にオーラスに捻じ込んでもみせるものの、本筋と電車痴漢が実は全く関係ない。電車痴漢に対するプロテスト・ソングをわざわざ公開題と主題歌に引つ張り出しておいて、序盤助川には“痴漢道”まで説きかけさせておきながら、痴漢が要は有体なタグづけに過ぎず、あくまで痴漢電車としては明らかに失敗作であると難じざるを得ない。

 最後に、もうひとつクレジット周りの小ネタ。大阪ロケ協力で大阪十三サンボードとあるが、劇中抜かれる看板実物を見るに、正確には半濁音のサンポードである。


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 「いんらん家族 花嫁は発情期」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:本多英生/撮影助手:斉藤博/照明助手:小田求/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/スチール:津田一郎/出演:桜井あつみ・摩子・しのざきさとみ・神戸顕一・荒木太郎・池島ゆたか)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 タイトル開巻、住宅街のロングにプップカプーとコンバット風な劇伴。巫女装束におどろおどろしい白塗りの霊媒師・愛子(摩子)が、こんちこれまた津田一郎の自宅に到着する。愛子を出迎へたといふか招いたのは、当家・園山家に半年前に入つた明子(桜井)。家内をムームー唸りつつ見回した愛子が、やをら奇声を発し大麻(おほあさ)を乱舞した上での一言が、「間違ひない!」。まあ、それは間違ひないんだろねと思はせるに足る妙な説得力はさて措き、明子が訴へた通り、園山家には淫乱の霊が取り憑いてゐるといふのだ。上司の薦める縁談で異性との交際経験すらないまゝ見合結婚した明子に、夫の渉(神戸)は諸々の過剰な性交渉を強要。同居する義父の高志(池島)に窮状を訴へてはみたものの、高志にも犯されるに及んで、明子は週刊誌で知つた愛子を頼つたものだつた。既視感?少し待つててね。
 配役残りしのざきさとみは、明子がゐるにも関らず、渉が家に連れ込むホステス・悦子。荒木太郎は愛子の除霊の過程で現れた、既に故人である高志の母の、祝言直後に出征し戦死した前夫。何処かで聞いた話?だからもう少し待つててね。
 深町章1992年第七作は、十三年間に全七作が製作された「いんらん家族」シリーズの第三作。改題後の偽「いんらん家族」に関しては、あるとしても知らん。改めて沿革をまとめておくと、1991年第一作「いんらん家族 義母の寝室」(脚本:周知安/主演:井上真愉見)と第七作の「いんらん家族 姉さんの下着」(脚本:周知安/主演:浅野桃里)が、「いんらん家族」シリーズ第一作と第二作。今作挿んで、第四作が1993年第五作の「いんらん家族 若妻・絶倫・熟女」(脚本:深町章/主演:石川恵美)、第五作の1994年第五作「超いんらん家族 性欲全開」(脚本:双美零/主演:林田ちなみ)は未見であるが、DMMの中にあるのでその内見る。第六作が少し間を空けて、1997年第八作「いんらん家族 好色不倫未亡人」(脚本:深町章/主演:槇原めぐみ)。正直、2003年第五作「いんらん家族計画 発情母娘」(脚本:岡輝男/主演:麻白)をシリーズ最終第七作にカウントするのは、我ながら些か無理があるやも。
 初心な新妻が見舞はれた桃色の悲劇は悲しい真実を経て、ケロッと喉元過ぎた喜劇に帰結する。幼さも残す容貌と、可憐さと絶妙な肉感性とを併せ持つ肢体とのスレッスレの隔離が堪らない桜井あつみを主演に据ゑ、脇を固めるのも全盛期のしのざきさとみに、いはずと知れた絶対美人の摩子。一級の三本柱を擁し何れも訴求力の高い濡れ場の連打が、尺自体五十三分チョイと一目散に大オチ目指して駆け抜ける。手堅く仕上げられた佳品寄りの小品と、手放しで褒め称へて済まされたならどんなによかつたらうに。
 日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベルを、見られるだけ網羅すべく展開中の殲滅戦。初戦で見た1991年第二作「ザ・夫婦交換 欲しがる妻たち」(脚本:周知安/主演:川奈忍)が、1998年第七作「隣の女房 濡れた白い太股」(1998/主演:久保新二)と全く同じ映画。より直截には、深町章が周知安(=片岡修二)に書かせた脚本を自脚本と称して再利用してゐる事実に、ブチ当たつた己の妙な引きの強さに感心しかけたのは、引きの強さどころか、単なる確率の高さに過ぎなかつた。今回も今回で、2005年第五作「変態家族 新妻淫乱責め」(主演:山口玲子)が、差異の方が余程少ないリサイクル映画。差異といふか、殆ど誤差だ。苗字が違ふだけで役名まで同じ、ウーヨーキーゲンレーホーウーヨーミナーと、要は南無妙法蓮華経を引つ繰り返した愛子が唱へる呪文も同じ。明子が訴へる園山家の異常度を、段々と度を越すに従つて相撲の番付に譬へるのも一緒。何より悔しかつたのが、先に「変態家族 新妻淫乱責め」を観て佐々木ユメカにアテ書きしたかのやうな名台詞だと感動した、「アタシとヤッていいつて誰が決めたのよ?」が前後の遣り取りまで含めそのまんま。何がアテ書きか、アホか、俺は道化か。異なるのは舞台が津田スタから今をときめく伊豆映画の聖地・花宴に移つてゐるのと、渉と高志のアドリブ気味の舌先三寸に、大きくは渉が高志の眼前で明子を嬲るシチュエーションくらゐ。あ、あと愛子が明子の話を聞くのが、「新妻淫乱責め」ではパイプ椅子を置いただけの海岸といふ画面(ゑづら)がシュールな安普請。唯一の救ひは元映画に挙句派手に劣るトナマタに対し、「新妻淫乱責め」は互角に戦へはする点か。何れにせよ、一言で片付けるならば、随分だな、深町とでもいつたところである。とかくこの調子だと、誰も気づいてゐないことはあるまいが又か程度に騒ぎだてしないだけで、まだまだ出て来る気がする。


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 「個人レッスン 触つてあげる」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:夏季忍/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:山崎光典/監督助手:渋谷一平/撮影助手:村川聡/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・南野千夏・中悠奈・南城千秋・荒木太郎・久須美欽一・川崎季如)。脚本の夏季忍と企画の伊能竜は、それぞれ久須美欽一と向井寛の変名。
 大学のキャンパスの画に、南城千秋の声で「真亜子ちやんどうだつた?」。返して「合格したは一郎君は?」、「落ちた」。二人で一緒に城西大を受験したものの、ストレートで咲いたガールフレンドの真亜子(中)に対し、成竹か鳴竹一郎(南城)の桜は散つた。真亜子は一郎に一年待つ旨と、それまでは会ふのを控へる一旦の別れを告げる。息子の大学受験不合格に際して、嫁に家を出て行かれた生活上のハンデを気に病む一郎の父親(久須美)の姿挿んで、一郎は真亜子の名を呼びオナニー、一方真亜子も真亜子で自慰に燃えてゐた。それにつけても、南城千秋はマスをかく芝居が日本一サマになる。成竹課長の部下で、一浪とはいへ一流大学卒の苗字不詳コースケ(荒木)は、一郎の浪人生活に予備校よりも家庭教師を勧め、大学の後輩を招聘するコネクションを確約する。尤も、野郎の家庭教師なんぞことごとく断られ、その時部屋に来てゐたほど懇意のファッションマッサージ嬢・春風うらら(石川)が、当人の気軽な思ひつきで一郎の家庭教師をすることに。
 配役残りイコールかわさきひろゆきとわざわざ断らずとも、一目瞭然吃驚するくらゐ変らない川崎季如と、ビリングに軽い違和感を覚えなくもない南野千夏は、うららの常連客・原黒金蔵か金三と、うららは成竹家につき店を休んでゐるゆゑ、代りに対戦する譲。本番禁止の貼紙があるにも関らず、当たり前のやうな勢ひで騎乗位に跨る麗しき世界。原黒に話を戻すと、南野千夏と一緒くたで純然たる一幕限りの単なる濡れ場要員かと思ひきや、全日本学生援護協会理事を名乗り、浪人生の親に裏口入学を騙るペテン師として大再登場、この人のトメは肯ける。
 Viva Pinks!戦第二戦はまたしても深町章の、1991年第五作。尺自体五十三分にも満たないコンパクトさに加へ、周知安(a.k.a.片岡修二)のやうに何かしら展開を左右するなり鍵を握るネタを盛り込むでなく、夏季忍(a.k.a.久須美欽一)による脚本は良くも悪くも無駄がない。付け焼刃の予想外どころか全然普通なうらら先生のカテキョぶり、うららに仮想娘を見る成竹と、父親を知らず、素直にその眼差しを受け止めるうららの思慕、そして原黒が起爆する一悶着。諸々ドラマの種もなくはないにせよ、下手な色気を窺はせるでなく、見事再び訪れた桜の季節に雪辱を果たした一郎と真亜子の、何故か青姦の締めの濡れ場まで一直線。昭和のコーヒー文化風にいへばアメリカンな裸映画ながら、反面石川恵美の穏やかで柔らかなエモーションに委ねられたとも目し得る始終は、長閑で心地よい。そんな中ハイライトは、家庭教師初日、晩御飯まで振る舞つた流れで、うららは成竹家に一泊。成竹がバスタオルと称して脱衣室に忍び込んでゐるのも知らず、シャワーを浴びるうららが浴室のガラス戸に―正直不自然に―尻を押しつける、オッパイならぬ尻ガラスも華麗に挿みつつ、先に成竹が夜這ひを敢行。狸寝入りがクロスカウンターする愉快な一戦の完遂後、うららは手洗ひに。そこに後塵を配した一郎が、親爺の菊穴に誤爆する定番シークエンスは、久須りんの満更でもなさ加減まで含め笑かせる。


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 「ザ・夫婦交換 欲しがる妻たち」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛巳/監督助手:今岡信治/撮影助手:後藤友輝/照明助手:田端功/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:川奈忍・水鳥川彩・早瀬瞳・荒木太郎・池島ゆたか)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。ところでVHSジャケには、早瀬瞳が早見瞳。涙なくては語れないのがDMMに行くと、そのことに由来するクレーム評価があつたりもする。否、ここは断固、よしんば早見瞳がゐないにせよ、早瀬瞳で何の文句があるのかと声を大にして私は問ひたい。
 タイトル開巻、夫婦の寝床に鳴る目覚まし時計に、第一声が「私は平凡なサラリーマンだ」と池島ゆたかによる適当なモノローグ起動。どうにかかうにか家も建て嫁も貰つた園山高志(池島)は、乳を放り出し遅れて起きた妻の明子(川奈)を朝つぱらから抱きつつ絶倫を自認する。到底明子一人では満足出来ない園山にとつて、当面の切なる願ひは素人との浮気。妹が遊びに来るといふのに、明子は今日も今日とて、先日の高校に続き今回は中学のクラス会。尤も、園山にとつてそれは好都合でもあつた。それもそれとして園山家の隣家は、共働きの二人共々係長である園山の部下の、渉(荒木)と悦子(水鳥川)の轟夫妻。今日とて今日も友達と飲みに行くといふ渉に目くじらをたてる悦子に、園山は地味に狙ひをつけてゐた。一方、既に姉に幾許かの借金を焦げつかせる明子の妹・佐伯良子(早瀬)は、五十万の借金を新たに切り出すも見事に爆死。そんな、南酒々井の夜。明子不在の園山家では、五十万の財源を姉から義兄に変更した良子と、義妹に鼻の下と食指を伸ばす園山の思惑とが、双方向の誤解が上手いこと噛み合つたまゝ進行する。配役すこしだけ残り、ひとまづ首尾よく園山から金を得た良子が電話をかける、一緒にオーストラリアに行く彼氏の声は多分ひろぽん。
 深町章のコッテコテな量産型娯楽映画から、麿赤児の限りなく前衛映画まで。この期に正確な総数は不明ながら、恐らく大した数でもないにしては―痴漢透明人間をも含む―途方もない種々雑多感が堪らない、日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベル。DMMで見られるだけ片端から網羅するかと、一覧の下から未見作を探して最初に当たつた、深町章1991年第二作。と、してみたところ。ある意味己の妙な引きの強さに驚いたのが、今作、七年後の正直微妙な翌年正月映画、「隣の女房 濡れた白い太股」(1998/主演:久保新二)の元ネタ。元ネタも元ネタ、深町章―と酒井正次に津田一郎―以外の面子に劇中固有名詞、園山家―トナマタでは黒井家―ロケーションが津田スタではなく水上荘である形式的差異以外には、違ふ箇所の方が余程少ないくらゐ本当に全く同じ物語。良子が明子に五十万を無心する件で気がつき、改めてトナマタにも目を通して吃驚した、何が自脚本か。顕著な一例を挙げると、初戦に於いて、遅刻を理由にハモニカを拒否する遣り取りまでそのまんま、良子が義兄に振る舞ふ矢鱈と豪勢なディナーが冷食なのも。挙句、黒井からみわに渡る五十万を豪快に端折り展開の底が抜けるトナマタが、重ねて綺麗処をキチッと三枚揃へた今作に女優部の顔ぶれでも大きく、大ッきく水をあけられる始末とあつては、片岡修二にトナマタを見せて、感想のひとつも聞いてみたいところである。よくある話の一言で、片付けられさうな気もせんではないが。序盤早々にオチが露呈するのは、全体的な構成さへしつかりしてゐれば問題ない。寧ろ容易な予想がピシャッと的中する、一種の快感も与へられやうもの。尤もその点に関しては、パクリ元たる今作自体から然程強靭でもないものの。


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 「欲しがる女5人 昂奮」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:瀬々敬久/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:恵応泉/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:橋本杏子・川奈忍・しのざきさとみ・風見怜香・中島小夜子・池島ゆたか・山本竜二・荒木太郎・芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。クレジットにはないが、スチールは津田一郎の筈。
 タイトルからイン、俯瞰の並木道に、主人公の自己紹介モノローグ。二部上場商事会社の総務課に勤務する園山タカシ(池島)は、三年前係長昇進と同時に同じ課の妻と結婚。マイホームも買ひ、順風満帆な日々を送る園山の目下満更でもない悩みの種は、部下からの公私に亘る相談であつた。と、ロイホ窓越しの結構なロングからカメラがグーッと寄ると、轟(荒木)が園山に、矢張り総務課の江藤サンへの恋の悩みを打ち明ける。童貞の轟に押しの一手とやらを教授すべく、園山は轟の部屋にホテトル嬢のユウ(風見)を呼ぶ。
 配役残り川奈忍が、そんな訳での江藤倫子。山本竜二は、園山らが勤務する会社の佐伯専務。何だかんだで事は上手く運び、轟と関係を持ちつつ、倫子は実は元々佐伯の愛人であつた。しのざきさとみは、この人は恐らく社外の佐伯愛人―劇中―二号。しのざきさとみの濡れ場に際して佐伯がバイブを持ち出す件、山竜がバイブを口に咥へて責めるのが、ジョイトイとクンニが融合したサイバーパンクの趣で斬新に映つた、何がサイバーパンクだ。閑話休題―与太を吹くにもほどがある―橋本杏子は、倫子の悲運に秋田から園山を訪ね上京する、ホステスの姉。一旦ピリオドが打たれての一年後、芳田正浩は、総務課の新しいヤリ手部下。そして中島小夜子が、芳正が係長に自慢気に語るテレクラ武勇伝中に登場する、二十代半ばの人妻。中島小夜子が芳正と絡んでゐるのを見ると何故か無性に腹が立つ、この正体不明の感情は一体何なのか。これこそ正に、知らんがな(´・ω・`)
 深町章1990年第二作は、残りの四作は瀬々の第一作第二作と佐藤寿保といふ伝説の絶対美少女・中島小夜子にとつて、唯一のオーソドックス・ピンク。尤も、公開当時前月に封切られた「半裸本番 女子大生暴行篇」(監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎)ではエターナルを撃ち抜く鮮烈な輝きを放つた中島小夜子が、案外今回豪華五枚並ぶ綺麗処のワンノブゼンに大人しく畏まつてもしまふのは、物語なり撮影部なり深町章と佐藤寿保の演出の相違云々も兎も角、寧ろ登場順に川奈忍としのざきさとみに、当時女王として君臨する最初の“最後のピンク女優”橋本杏子。何処からでも頭を狙へるビリング―後述する構成上、今作のビリングに然程意味はないが―に名を連ねた、如何せんな分の悪さが否応なく影響してゐるやうに思へる。オッパイで先頭打者に飛び込んで来る、風見怜香にも言及せえよ。
 係長風情がザクザク部下の首を刈れる、件の商事会社のワイルドな社風はさて措き、轟の相談を起点に、新規俳優部の投入と御役御免に連動して、話がつらつら連なつて行く展開は実に秀逸。芳正が的確な読みを開陳する時点でサルにも明らかとはいへ、狙い澄ましたオチもピシャッと決まる。小一時間女の裸を心豊かに楽しませた上で、気がつくと何気に完成してゐる、開巻も回収した起承転結。一見何てことない裸映画に見せて、深町章と片岡修二の両輪が見事に噛み合つた地味ながら、量産型娯楽映画の佳品である。


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 「小説家の情事 不貞の快楽」(2003/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/現像:東映ラボ・テック/出演:里見瑤子・若宮弥咲・池谷紗恵・なかみつせいじ・高橋剛)。
 白壁の宿の外観カット、庭では里見瑤子が優雅にお茶を愉しみチャッチャとクレジット起動。なかみつ先生が和室で執筆中、人形を抱いて徘徊する若宮弥咲を階段の下からチラ見せ。原稿が上がつたらしき様子と、家内を窺ふ里見瑤子、若宮弥咲がフラーッとベランダに姿を見せてタイトル・イン。
 作家の柿沢孝二(なかみつ)は原稿を渡した担当編集の三船美佐(里見)に、妻を見たかと問ふ。交通事故に遭ひ第一子となる筈であつた胎児も流産した柿沢の妻・明子(若宮)は、外傷は癒えたものの、未だ記憶は戻らずにゐた。一方、美佐から感想を求められてゐた、美佐の同棲相手で作家志望の倉田順(高橋)の原稿を、柿沢は無言で返す。明子を抱へる柿沢同様、美佐も美佐で事実上のヒモの倉田との生活はすつかり煮詰まるのも通り過ぎてゐた。酔ひちくれ、金を無心し、気紛れに体を求める倉田に半ば匙を投げた美佐は、友人宅を渡り歩いた末に仕事で出向いた柿沢家にて、泊る当てがないと遠回しなのか最短距離なのかよく判らない膳を据ゑる。過去に一度柿沢と美佐は関係を持ち、柿沢いはく明子は実はそのことを知つてゐた。柿沢は明子が不貞を働いた夫を苦しめるために、正気を失したふりをしてゐるのではないかと疑心暗鬼を募らせる。
 配役残り、綺麗な三番手ぶりを披露する池谷紗恵(ex.池谷早苗)は、家主がゐぬ間に倉田が連れ込む女・市原美香。前貼りを使用してゐなかつたのか、絡みの最中で画面全体にボカしがかゝり、暫しそのまゝで突つ走つてのけるのはあまりに豪快な疑問手。美香に話を戻すと、事後倉田が金を払ふまで、日が暮れても三船家に長居するよく判らない業態の嬢。
 深町章2003年第二作は、2004年第一作「小説家の情事2 不倫旅行」(脚本:河本晃/主演:久保新二)に六作遡る「小説家の情事」無印第一作。無印第一作とはいつてみたけれど、久保チンがチャンカチャンカ牽引する艶笑譚の「不倫旅行」と、シリアスなメロドラマである今作とは特にも何も全く以て無関係。偶々小説家の主人公が配偶者以外の人間と情事に及ぶ二作を、新東宝が戯れだかいい加減にナンバリングしてみたに過ぎない。「やりたがる女4人」(2007/脚本:かわさきひろゆき)が小説家の情事3であつても構はないし、「作家と妻とその愛人」(2002/脚本:岡輝男)が「小説家の情事0」であつても罰は当たらないそれだけの話感が、実に量産型娯楽映画的ではある。
 映画の中身的には各々の袋小路の底で互ひに救ひを求めた、初老の男と妙齢の女。さして展開の手数に富むでもない割に、小一時間とはいへ長く感じる時は途方もない無間地獄と化さなくもない尺は案外サクサク進行。ウッスラと気配のする出来合ひの悲劇に、脇目を振れることなく一直線。誰一人幸せにはならない暗い話も熟達の妙技で一息に観させる、精緻な工芸品にも似た一作である。

 地味に歴史的に重要なのが、m@stervision大哥の定点観測が正確であつた場合、今をときめく伊豆映画の聖地こと「白壁の宿 花宴」の、今作が―柿沢邸として―初登場作となる。


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