真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「普通の女の子 性愛日記」(昭和60/製作:TWIN‐CAM JAPAN CORPORATION/配給:株式会社にっかつ/監督:佐野日出夫/脚本:白鳥洋一・佐野日出夫/企画:進藤貴美男/撮影:落合遼一・岩神卓郎・森井美光・岡沢勝美/照明:中村友彦・野村秀之・村松春雄/録音:佐伯晃・小池洋二/TD:山梨一寿/助監督:古野克己・田渕英夫・松田行二/VE:青木正治/ヘアー&メイク:黒川尚子/スタイリスト:滝和幸/MUSIC:佐耆弘徳・園田容子・中浜真二・篠崎勲/Vocal:林千珠子/車両:樋口博/編集:坂田翔/協力:ホテルL&L《柏インター》・THEPhenomenon Studio・小松越夫《劇団 火の鳥》・ルナティック・オフィースピエロ・ST.クレオール・ビデオスペース アルファー/出演:渡瀬ミク《新人》・早見瞳《新人》・庄司恵子・田口ゆかり・美沢映子・外山えりか・田口美穂・塩谷営理子・岡本忍・梅沢薫《友情出演》・杉田一夫・関けんじ・飛場英二・佐藤恒治・弾十郎・伊藤彰洋)。出演者中、田口ゆかりから岡本忍までと、飛場英二に弾十郎は本篇クレジットのみ。但し田口ゆかりに関しては、ポスターには正しく載る田口あゆみのよもやまさかありえない歴史的大誤爆。ビリング推定で弾十郎が、ポスターでは青山文彦か。それと正直、何にこんな大勢が関つてゐるのかてんで判らない。
 朝の室内をのんびり舐めて、“大沢直子 二十歳OL”(渡瀬)が起床。直子は置手紙に従ひ、出勤前にルームメイトの“庄野ユキ 十九歳 秘書専門学校一年生”―この二人にのみクレジットが入る―(早見)を起こして行く。出勤風景を軽く押さへた上で、霧深い森の中を、直子が素頓狂な扮装で走るイメージ。“一番悲しかつたこと”として高校時代、本間たかし(弾十郎=青山文彦?)の子供を中絶、高校も中退した過去を振り返つてタイトル・イン。本社の課長・三田村雄介(伊藤)との不倫が、同僚女子社員(美沢映子以下五名?岡本忍は男かも知れんけど)の密告により発覚した直子は、最終的には転勤を拒否し退職する。
 配役残り、だからゆかりでなく田口あゆみは、会話を聞くにユキの高校以前からの友人と思しき野々村紀子。ユキが紀子に紹介して貰ふバイトといふのが、客先に出張してオナニーを見せる斬新な風俗。多分当時五十一歳の梅沢薫が、その顧客の車椅子紳士・坂上?脱ぎもしない癖に妙にビリングが高い庄司恵子は、雄介の妻・洋子。杉田一夫は娘に説教を垂れるヒット・アンド・アウェイで直ぐに退場する、直子の父親・直道。またこの男が父親の威厳も貫禄にも何もかも欠き、そんな馬の骨を何でまたわざわざ連れて来たのか最も謎の多い一幕。佐藤恒治は、劇中直子が最後に出会ふメガネ・青山紀彦。タケシ役とされる関けんじが、一旦退職後一時期ホテトルをしてゐた直子の客なのか、ユキ周りの名前なのかは不明。飛場英二に関しては手も足も出ない、とんちピクルス似の、直子が勤めてゐた事業所の長・スガワラ?
 「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演:朝霧友香?)で豪快に火蓋を切つた、エクセス提供東映ナウポルノ第四弾で「聖女地獄絵図」(昭和55/脚本:梅沢薫/主演:吉田さより=風祭ゆき)が―その内―来る予習にと、DMMに一本だけ入つてゐるのを見てみた佐野日出夫、jmdb準拠で最終第九作、因みに「聖女地獄絵図」は第六作。見てみた、ところが。ビデオからビスタにブローアップした買取系ロマポの無惨なファースト・カットに、脊髄反射で愕然とするや否や、あとは奈落の底に真つ逆様。壮絶な画質の火に油を注ぎ、全ての繋ぎがことごとくキレを欠き、当然グジャグジャに混濁する時制。時代のダサさの直撃をむざむざ被弾する、壊滅的に貧相な俳優部。不倫相手を刺したヒロインが、鉄道自殺―また御丁寧に傍迷惑な死に方だ―を制止された弾みで出会つた新しい彼氏と、ラブラブのハッピーエンド。だなどと、そもそも自堕落の極みの物語。ついでに、冗談みたいに馬鹿デカいボカシ。ホコテンでユキと軽く交錯した直子が、青山と連れ立つて歩くラスト。両手にケミカルな色のジュースを持つて、直子の下に駆け寄る青山の挙句―始終結構多用する―スローモーションのショットの、爆裂するダサさにも大概震へたが、田口あゆみを本クレで田口ゆかりに誤植する衝撃が、地獄巡りに近い一篇にある意味華麗に止めを刺す。どんな映画にも、何処かひとつチャーミングなところがある。淀川テーゼの信頼性さへ揺るがしかねない、詰まらなくすらない救ひやうのない面白くなさが、一種の破壊力にグルッと一周しかけるキナ臭い一作。佐野日出夫がどうかう以前に、石川江梨子名義による菊池エリの銀幕初陣「団地妻 W ONANIE」(昭和60/構成・監督:奥出哲雄)に触れた際にも思つたことだが、斯様な寒々しいのも通り越し糞々しい代物を小屋に木戸銭を落とした客に見せておいて、ロマポが終つたのもむべなるかなとこの期に改めて呆れ果てた次第。今更ないはずもがなをこの際敢て文字にしておくと、映画がビデオに対抗するのに、ビデオに寄せる戦略は根本的に間違つてゐた訳だ。


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