真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「半裸本番 女子大生暴行篇」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/撮影:下元哲/照明:加藤博美/音楽:サイキックローズ/編集:酒井正次/助監督:瀬々敬久/監督助手:広瀬博巳・佐野正光/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:松本キヨシ/協力:橋爪達成/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:中島小夜子・新藤愛子・伊藤清美・香園寺忍・荒木太郎・中根徹)。
 「連続OLレイプ餌食」のVHS題開巻、レトロなパソコン通信の画面に、“ROSE BUDからの暴行招待状”と称して、OL・星川十紀子(伊藤)の勤務先住所等が記載された履歴ファイルが着弾する。シャワーを浴びる十紀子が、マスクを着けた黒尽くめの暴漢に強姦される。帰還後パソコン画面を覗き込み、マスクを外した中根徹は我に帰る。OA機器セールスマンの水野真(中根)が、交際する女子大生・一子(中島)の部屋でセックスする。優しくしてとの一子の要求にその場は従ひながらも、水野はまともなセックスなんて詰まんねえんだよなと、ローズバッドからの新たなるデータを待ち侘びる。
 配役残り新藤愛子は、赤の他人の女子大生と女子高生が二人暮らしする不自然さはさて措き、一子のルームメイト・ハナワ望。何時でもカメラを持ち歩き、目下の愛機は高校の写真部備品のキヤノンRC-250(昭和63年発売)。水野は自らに近づいて来る望を利用しての、ローズバッド捜しを思ひたつ。荒木太郎はその過程で浮上する、望が面識はある程度の今でいふギーク・ササハラケイジ。そして香園寺忍が、念願叶つて水野に劇中二人目のデータが送られて来る、この人もOLの宮本悠子。水野と一子の長電話に、電話ボックスの外で無防備にキレる丸顔のオッサンは、佐藤寿保でも瀬々でもなく不明。排斥された格好の水野が踵を返して男にパンフレットと名刺を渡す件は、デフォルトの中根徹からそこはかとなく香る殺気に、てつきり全殺しにでもするのかと思つた。
 “メカと心霊の不可解な結合!”だの、“恐るべきパソコン犯罪!”だのと、VHSジャケには例によつて箍の外れた惹句が狂ひ咲く佐藤寿保1990年第一作。となるとシテンノーには距離の遠い当サイトが踏んで来た道としては、“BRAIN SEXが股間を爆裂する”ジャンピン・ジャック・パイレーツ殺人実況「ロリータ恥辱」(昭和63/主演:藤沢まりの)や、“夢野史郎のサイキックなシナリオを俊英・佐藤寿保監督がシュールな演出で描”きはしたが“サスペンス調の傑作”ではない「レズビアンレイプ ‐甘い蜜汁‐」(1991/主演:高樹麗)なり、清々しいほどの電波映画「《生》盗聴リポート ‐痴話‐」(1993/主演:伊藤清美)といつた、佐藤寿保が好き勝手をし倒した死屍累々の荒野を想起しかけた、ところが。同じものを手に入れたのか、そもそも何故Q-PICが水野の手許にあるのかが要領を得ない、宮本悠子暴行現場写真が―手作り感香る―雑誌に掲載され焦燥する水野が、苛立ち紛れに自身の凶行をどさくさ暴露してのける無防備な作劇には万歳しつつ、確かに伏線は明確に匂はされてゐなくもないとはいへ、それにしても予想外の切り口からローズバッドの正体が明かされるクライマックスには正方向に度肝を抜かれた。兎にも角にも、サイキックな大風呂敷をも魅力の下駄で無理を感じさせず定着せしめ得る、中島小夜子の絶対美少女ぶりが圧倒的。恥づかしながら初見だつたのだが、本当に驚いた。もしかすると、一歩間違へば当時的には早過ぎたのかも知れないアイドル風の容姿も勿論素晴らしいが、セーラー服がこんなに似合ふ人を見たことがないとさへ思へる、少女と大人の女との境界線上で妖しく揺れ動く、尻から太股にかけてのラインが超絶、本当に心の底から堪らない。俺は何を堂々と、鼻の下を伸ばしてみせてゐるのだ。今の目にも一欠片たりとて古びない、ハードかつ煽情的な十紀子と悠子のレイプ・シークエンス。序盤をじつくり攻める中島小夜子と中根徹の普通の絡みに、生理が来た一子が見る悪夢と、正直意味はよく判らないが比類なく鮮烈なオーラスの、一撃必殺を都合二度撃ち抜く中島小夜子のいはゆる野外露出ショット。サイキック・サスペンスが今回は見事に完成したのに加へ、裸映画的にも申し分ないどころでは済まない出来栄え。尤もさうなると、三番手四番手のものと比べ遜色ある訳では全くないものの、ササハラケイジの扱ひにも詰めの甘さを残す、新藤愛子の濡れ場は展開的に蛇足と思へなくもない辺りがピンク映画の、表裏一体の作る側からは難しさで、安穏と見る側にとつては奥深さ。

 改めて、公開題―凄い映画あんだから新版公開すればいいのに、新東宝―は「半裸本番 女子大生暴行篇」。“半裸本番”なる中途半端かそれがどうしたな用語は兎も角、勿論といふか何といふか、女子大生暴行以外の他篇は別に存在しない。


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