スイープ運針


SIGMA DP3 Merrill

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時計の秒針の動きに、スイープ運針とステップ運針というものがある。
ステップ運針というのは、主にクォーツ時計に見られる秒針が1秒毎にカチッカチッと動くもので、スイープ運針は機械式時計に代表される滑らかにスーッと動くものだ。
滑らかといっても、一般の機械式腕時計の場合、一見動きが連続的に見えるだけで、よく観察するとカクカクカク・・と細かいステップで動いている(何振動のムーブメントを積んでいるかで1秒間のステップの回数が決まる)のがわかり、本当の意味での連続運動ではない。

なぜクォーツ式腕時計の多くがステップ運針かというと、よく聞くのは電気消費量が大きくなるということで、秒針を連続的に動かそうとすると、バッテリーが長時間もたないのだという。
しかしかつてセイコーからスイープ運針のクォーツが出ており、連続的に動かすのは技術的には難しいものではないらしい。
そのモデルがあまり売れなかったために、メーカーはスイープ運針のクォーツ式腕時計の開発に積極的ではないと言う人もいる。
一方で壁掛け時計や目覚まし時計にはスイープ運針のものも多く、これは寝るときにステップの音がうるさいという理由で、スイープ運針の要望が多くあるのも理由だという。

個人的に、クォーツ式でありながらスイープ運針をする「腕時計」に強い興味がある。
というのも、もし自分が時計を設計するなら(そんなことはあり得ないが・笑)、アンティーク時計のクラシカルなデザイン法則に則ったものにしたいからだ。
かといって中途半端に機械式にしても、単なる昔の時計の再現になってしまい意味がない。
例えば最新のソーラー式電波時計でありながら、50年代頃のスモール・セコンドの時計と見分けがつかないデザインにして、それでいて時刻はまったく狂わない・・そんな時計が欲しい。
その場合、当然のことながら、ステップ運針で秒針に動かれると、せっかくの演出が台無しになってしまうのだ(笑)



少数ではあるが、クォーツ、又は駆動方式の一部にクォーツを使っていながら、秒針がスイープ運針で動く製品がある。
代表的なのはセイコーのスプリングドライブであり、もうひとつがブローバのプレシジョニストだ。
ブローバはシチズンにより2008年に買収されており、プレシジョニストのクォーツ・ムーブメントはシチズンが作っているという。
なのになぜかシチズンからは、このムーブを積む機種は発売されていない。

これが驚くべきクォーツで、秒針が秒間16ステップの滑らかな動きをして、精度は何と年差10秒だという。
自称世界最高精度のクォーツなのだ。
こんな凄いものを、シチズン・ブランドでなぜ出さないのか・・・
とても不思議な話である。
ソーラー電波でスイープ運針の時計を作れば、相当面白いものが出来ると思うのだが・・・

しかもスプリング・ドライブは高いが、ブローバはビックリするほど安い(笑)
eBayで展示品処分の新品のプレシジョニスト96B130を百数十ドルで落札した。
重量級のステンレス・ボディ、バックルは観音開きが付いており、見た目は十分に立派、十数万円と言っても通用するだろう。

世界最高精度のクォーツが、処分品とは言え1万円ちょっとというのも、拍子抜けするというか、いかにもクォーツらしい話だ。
考えてみたら、これを大量に出すとグランド・セイコーやザ・シチズンのクォーツモデルの存在理由が薄れてしまい、市場が混乱するのは確かである。

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