ロレックス


SIGMA DP1 Merrill

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以前は、ロレックスが好きではなかった。
仕事で会う営業の人で、少し時計にお金をかける人のほとんどがロレックスをしており、どこか富の象徴のように使われているからだ。
自分はそれとは別の路線に行きたいと思っていた。

少し前に、古いロレックスをひとつ買ってみた。
オイスターデイトという一番安価なモデルだ。
古くて文字盤がくすんでいることもあるが、見た目に華が無く、何ともパッとしない時計である。

しかし実際に使ってみて、少なからず驚いた。
ベーシックなモデルではあるが、なるほどこの時計には何か独特の良さがある。
この程度のモデルでロレックスを語るなと怒られるかもしれないが、その魅力の一端を知ったような気がした。

それは一般に思われているような、高級品としての魅力ではない。
もっと男っぽい、どこか職人気質を感じさせる、真面目で実直な実用品としての良さなのだ。
高額な製品であるが故、オーナーの地位を現すアイテムとしても使われ、それが誤解を生んでいるように思う。
これは日常的に使う実用品として、非常に優れた時計だ。

頑丈なケースに入っているため、ぶつけても気にしないですむ。
手を洗う時に、少々水がかかっても平気である。
時間はほどほどに正確(日差30秒以内)で、「時計」としての機能も十分である。

高級イコール高性能ではない。
超高級品といわれる時計、たとえばパテック・フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンは、もっと繊細でデリケートであり、腕に付けている間は常に意識していなければならない。
高級品とは、オーナーにそれなりの労力を要求してくるものである場合が多い。
あなたはふさわしい人間かと、常に問いかけてくるのだ。

僕には、オイスターデイトはそれらとは正反対の存在のように感じられる。
体の一部となり、腕につけているのを忘れてしまうような、身近な存在である。
大きさもちょうど良く、形状が優れているのか、身体への負担もほとんど感じない。

実用品とは言っても、Gショックに比べればずっと味があり、モノとして所有する喜びがある。
ライバルのオメガと比べると、こちらの方が骨太で男性的に感じる。
言葉で説明するのが難しいのだが、常に着けていたくなるような、強い愛着を感じさせる存在なのだ。

実はあえてこの地味なモデルを選んだのには理由がある。
知人のベテランの時計師の方が、古いオイスターデイトを愛用しているのだ。
高級時計に散々接してきた人が、自分の時計として選んだのだから、それなりの理由があるのだろうと思った。
所有してみて、その意味が少し理解できた。

何の気負いも無く、日常の道具として使う。
華やかさは無く、使い込んだ実用品の趣を持つ。
またそういう使い方をするのが、一番カッコよく見える時計なのだ。

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