酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「人生に乾杯!」~心を打つロードムービー

2010-02-01 00:20:00 | 映画、ドラマ
 <小沢VS検察>をテーマに掲げた「朝まで生テレビ!」では、検察OB3人の温度差が興味深かった。小沢幹事長の手は間違いなく汚れているが、腐敗度では<政官財の既得権益連合体>に遠く及ばない。メディアも守旧派の端くれで、検察の〝正義の仮面〟を剥ぐ上杉隆氏や郷原信郎氏らを地上波からパージしている。

 さて、本題。ハンガリー映画「人生に乾杯!」(07年、ガーボル・ロホニ監督)を名画座で見た。久々の2本立てにも緊張は最後まで途切れなかった。
 
 主人公は81歳のエミル、70歳のヘディの老夫婦だ。1950年代後半、ハンガリー動乱がソ連軍によって弾圧され、数千人が尊い犠牲になった。当時、党幹部の運転手だったエミルは、機転を利かせてブルジョアの娘ヘディを救う。

 宿命的な出会いで結ばれた二人だが、半世紀たてば愛もさすがに色褪せる。月々の年金だけでは家賃を払えず、アパート立ち退きの瀬戸際だ。エミルが生き延びるために思いついた手段は、何と銀行強盗だった。

 ソ連製のチャイカを駆る老夫婦を追うのは、美人刑事アギとドジな恋人で部下でもあるアンドルだ。老夫婦が一枚も二枚も上の追跡劇が展開する中、エミルとヘディの間に流れる風は次第にぬるみ、警官カップルも絆を深めていく。愛に満ちたコミカルなロードムービーに、ルーズでファジーなハンガリー社会の断片が織り込まれていた。 

 ダイヤのイヤリングなど二人の思い出の数々、30年前の悲しい事件、エミルを陥れた男、〝要塞〟に暮らす旧友の風変わりなキューバ人……。エピソードがちりばめられた逃避行は、いつしかお伽話になり、終着点(通過点?)へと突き進んでいく。

 併映の「サンシャイン・クリーニング」は、ローズ(エイミー・アダムス)とノラ(エミリー・ブラント)の美人姉妹が、失敗続きの人生から這い上がろうと悪戦苦闘する物語だ。「人生に乾杯!」同様、カタルシスと勇気を与えてくれる佳作だった。

 昨年暮れ、WOWOWで放映された「結党!老人党」も、年金問題など老人たちの厳しい状況を背景にしたドラマだった。辺見庸氏や広瀬隆氏の講演会に参加して驚くのは、平均年齢の高さだ。高齢者は考え、そして怒っている。

 一方で草食化した若い世代は、<抵抗の力学>を失ってしまった。老い先短い身とはいえ、閉塞感に覆われたこの国の未来を考えると、暗澹たる気分になってしまう。



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