弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

原発事故最近の推移

2011-04-17 00:26:19 | サイエンス・パソコン
福島第一原発の各号機の状況については、首相官邸災害対策ページの資料経産省「 福島原子力発電所の状況」資料日本原子力技術協会のファイルなどでチェックしています。

1号機の原子炉(圧力容器)圧力Bがじわじわ上昇し、1MPaG(10気圧G)近くまで上がっていますが、これは異常と理解しなくて良いのでしょうか。同じ圧力容器の圧力Aは0.4MPaG付近で安定していることからすると、圧力Bの測定器が異常になっている可能性は高いでしょうが。
ニュースによると、3号機圧力容器のフランジ部付近で測定している温度が上昇しているそうです。一方、日本原子力技術協会のファイルで3号機を見ると、給水ノズル温度は現在測定値が存在せず、圧力容器下部温度は120℃付近で温度は安定しています。フランジ部温度測定器が異常だと考えてよろしいのでしょうか。

最近のニュースでの話題は、2号機のトレンチにたまった高濃度汚染水を2号機の復水器に移送する話ばかりでした。しかし、号機毎に2万トンの高濃度汚染水が溜まっているのに対し、復水器の容量はそもそも3千トンであり、ほとんど足しになりません。何で報道機関がこれほど復水器への移送にのみ期待をかけるのか、理解に苦しみました。
そして、復水器に700トン弱移送したところで復水器が一杯になったということで、それもよくわからない話ですが、移送を終了したらトレンチ内の水位が元に戻ってしまったとニュースではがっかりしています。そもそも、圧力容器の冷却に3炉合計で毎日500トンの水を注入しているのであり、その水が出ていく先といったら今の高濃度汚染水の溜まりしかないのですから、当たり前のように思われるのですが。

高濃度汚染水の移送先のタンク確保がニュースになっています。
高濃度汚染水については、すでに溜まった水の移送先を確保することと同時に、これ以上汚染水が増えないようにすることが重要です。このブログでも、3月29日圧力容器の冷却方法、4月9日福島第一原発の現状は?で話題にしてきました。汚染水を増やさないためには、圧力容器の冷却水を循環系にすることが肝要です。
しかし、循環するためのアイデアがニュースに出ては消え、出ては消え、未だに具体的な計画が公表されません。
「溜まっている汚染水は塩水だから戻せない」という理屈はわかります。しかしそれを言うなら、現在溜まっている汚染水の塩分濃度実績を公表して欲しいです。そして、「汚染水から塩分を除去する外付けの設備を3月○日にスタートして建造中であり、4月□日に設置予定である」というアナウンスをするべきです。今のニュースを見る限り、現在進行形で準備が進んでいるとはとても思えません。
「汚染水は放射能を持っているから循環できない」という理屈には承伏しかねます。もともと圧力容器から漏れ出た放射性物質なのですから、圧力容器に戻すことに何で問題があるのでしょうか。

昨日は以下のニュースが流れていました。
原子炉外付け冷却検討…建屋内の装置稼働進まず
読売新聞 4月16日(土)21時44分配信
『東京電力は16日、福島第一原子力発電所1~3号機の外側に新たな冷却装置を設置し、原子炉と配管でつないで炉心を冷やす「外付け冷却」の準備を始めたことを明らかにした。冷却装置は、板状の配管を組み合わせた「プレート式」。原子炉で温められた冷却水が通るプレートと、海水が通るプレートを交互に重ねて、冷却水の熱を奪う。海水の代わりに空気を通して「空冷式」として使うことも可能という。東電は、複数の熱交換器を取りよせ、能力や設置方法を比較、検討して、実際に導入が可能か判断する。』
この文章からすると、トレンチ(低温・塩を含む)や圧力抑制室(塩を含む)などの汚染水を循環するのではなく、圧力容器から出てきた水(高温・真水)を冷却して循環させるようですね。そもそもそれが可能なのであれば、何で今ごろになって計画をスタートしたのか理解に苦しみます。事故当初から並行していくつもの対策をスタートさせるうちの一つとして入っているべきですし、遅くとも残留熱除去系の再スタートが大幅に遅れることが判明した時点では検討を開始しておくべきです。今になって準備開始ですか。
それに、設備の検討は東電が行うのではなく、日立、東芝、三菱重工などの専門会社に任せた方が速いでしょう。あっという間に作ってくると思いますよ。

一方では同じ日に<福島第1原発>汚染水を冷却水に 浄化し再利用へ…東電というニュースも流れています。
毎日新聞 4月16日(土)20時7分配信
『福島第1原発事故で東京電力は16日、放射性物質で汚染された水を浄化して原子炉や使用済み核燃料プールの冷却に再利用するための新たな処理施設を、敷地内に設置する方針を明らかにした。
新たな処理施設は、フィルターや吸着剤などを使って放射性物質を取り除く。水処理に強い仏大手原子力企業「アレバ」などの協力を得て、「できるだけ新たな動力源を必要としないシステム」(東電)を目指している。処理した水は熱交換器を使って温度を下げ、冷却用として原発内で完結できるような利用法を模索する。・・・数カ月後の設置を目指している。』
私は上記で、「汚染水を圧力容器に循環するに際し、塩を除去する必要はあるだろうが放射性物質を取り除く必要はないのでは」と意見を述べました。このニュースは逆ですね。何を考えているのでしょうか。

そもそも、圧力容器冷却水を海水から真水に替えるのも、3月25日まで実現しませんでした。その直前、米国から強要されてやっと重い腰を上げたようにも見えます。私は3月25日に原発事故対策の迷走で「原子力災害対策本部も、原子力安全保安院も、東電も、思考停止に陥っているのではないか」と書きました。

現在われわれに見えている原発事故対応は、とても尋常とは思えないように遅々として進まず、後手後手に回っています。危機に瀕して日本人がこれほど無力だとはとても信じられません。一体何がそうさせているのでしょうか。

p.s. 4/17 13:50
1号機では格納容器への窒素ガス注入が続いていますが、注入しているのに格納容器圧力が0.19MPaabs付近で上昇が止まり、むしろ下降傾向だと報道されています。圧力が上がらない理由として3つが考えられます。
(1) 窒素を入れているつもりが入っていない。
(2) 格納容器からガスが漏れている。
(3) 格納容器内の水蒸気が凝集して水蒸気分圧が下がり、窒素は入っているのだが全圧が上がらない。
上記(1)かどうかは、比較的容易に確認できるはずで、窒素が入っていることに間違いはないでしょう。
(2)だとしたら、ガスとともに放射能も漏れるはずですから、周囲の放射能レベル上昇というサインが出ると予想されますが、そのような報道はありません。
結局、(3)の可能性が一番高いと推定されるのですが、どうなのでしょうか。
コメント (4)
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