弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

コロナ対策の行方

2021-04-11 11:12:53 | 歴史・社会
日本でのコロナ対策の無策については目に余るものがあります。しかし、ここで私が何を言っても、のれんに腕押し、糠に釘で、最近は発言をする気力も失っていました。
先日、コロナ対策政策立案能力(2021-03-21)は書きましたが・・・。

日経新聞に以下の記事が掲載されたので、取り敢えずその中のポイントだけを抜き出してみようと思います。
コロナ、統治の弱点露呈 政治主導・デジタル・国と地方
2021年4月7日 日経新聞
『政府が初めて緊急事態宣言を発令して7日で1年となる。いまも止まらない新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の統治機構の弱点を浮き彫りにした。デジタル化の遅れや国と地方のあいまいな責任と権限、既得権が臨機応変な対応を妨げ、政治主導の動きも鈍かった。新型コロナが明らかにした脆弱さを一から見直すべき時に来ている。』

《幕張メッセを1千床規模の臨時の医療施設に》
臨時の医療施設は当時、緊急事態宣言下でしか認められておらず、消防法、建築基準法、地方自治法などの要件クリアのために奔走していたものの時間切れとなった。
強制力がない限り医師らを一気に集められない実態も分かった。

《政治主導不在》
官僚は既存の法や制度にとらわれる。危機時にそれを突破するのが政治の役割といえるが、その政治も既得権の壁を越えようとしない。衆院解散・総選挙を控え、日本医師会への配慮もにじむ。
海外では非常時に国が強制措置をとるための緊急事態条項を持つ国がある。
日本は戦前の反動で国が私権を制約することへの警戒感は強い。

《デジタル化》
HER-SYSは、入力項目を120から40に減らしたものの、医療現場で「使い勝手が悪い」との不満が残る。
新型コロナでも初の患者が出て入院患者の特徴の分析結果をまとめるのに7ヶ月かかった。

《国と地方》
病床の確保は都道府県が実施し、国は強制できない。保健所は市や特別区も運営主体となる。
----------------
以上が日経新聞記事です。記事の最後で「統治機構と政治主導の死角を検証し、見直す時期が来た」とはしているものの、具体的な検証と見直しは全く記載されていないようです。これからの記事に期待、ということでしょうか。

「8割おじさん」の西浦教授の発言も見つかったので書き留めておきます。
政治家、覚悟のかけらもなかった 「8割削減」西浦教授
2021年4月2日 朝日新聞
『「第1波のとき、厚生労働省のクラスター対策班・・・で分析した結果が官邸に届くまでに、厚い壁のようなものが何枚もありました。科学的な知見を採り入れた政策判断と、官僚制システムがかみ合っていない」
「当時の厚労大臣だった加藤勝信さんには毎日のように会って、かなり厳しいことも言わせてもらっていました。しかし、その後、官邸での会議に専門家の提言が直接出されるわけではないのです。厚労省内で調整して、ようやく事務次官や医系技官のトップの医務技監が官邸に伝える」
「昨年3月、・・・僕は重症者数のシミュレーションをして、このままだと病床が足りなくなるという試算を会議に出したのですが、厚労省側からは『混乱を招く』と大反対された。一方で、会議の直前になって、政府側から『こういう別の対策が入ります』と言ってくる。前日の夜に資料が回覧されるものもあり、専門家の意見を採り入れたり、変えたりできない状態でした」』

《ワクチンについて》
新型コロナワクチンについて、あまりにも短期間での開発だったので、実際の大量摂取で弊害(副反応)が心配されましたが、諸外国の実績では圧倒的に摂取のメリットが高いようです。これに安心して日本もワクチン接種を進めたいところですが、先進諸国内では圧倒的に低い摂取率です。
日本での摂取を増大するために、「日本でもワクチン開発を進めるべきだ」という議論はよく聞きます。なぜ「ワクチンの開発」なのでしょうか。「既存の、例えばファイザーが開発したワクチンのライセンス生産」という話がなぜ出てこないのでしょうか。効くワクチンの量が確保できれば良いのであって、日本発である必要はありません。
しかし、「ファイザー」「ライセンス生産」で検索しても記事に遭遇しません。
唯一見つかったのは、国境なき医師団による以下の記事です。
新型コロナウイルス:ファイザーとモデルナのワクチンは、生産者を増やして世界的な普及を」 2020年12月08日
『一方、ファイザー/ビオンテックは、英国で先週、ワクチンが緊急承認されているが、知的財産権で守られた技術のライセンス許諾や、技術移転をする予定はないとの見解を示している。世界規模の生産と供給の拡充を実現するには、同社も世界的なライセンス共有を進め、他のワクチンメーカーへの技術移転を全面的に行うべきである。』
昨年12月という古い記事ではあるものの、その後「ファイザーがライセンス生産を認めた」との情報が全く見当たらないので、今も変わらないのでしょう。
他社へのライセンスを認めるか認めないのかの決定権はファイザーが持っているのでしょうが、世界中が声を大にして要求すれば、このパンデミックですから、ファイザーも態度を変えると思います。
これが特許権だけの問題だとしたら、日本であれば特許法93条の《公共の利益のための通常実施権の設定の裁定》を利用して強制通常実施権を得ることが可能でしょう。しかし、今回のワクチンについては、特許権の問題ではなく、ノウハウが重要でしょうから、やはりファイザーがノウハウをライセンスしない限り解決しないのでしょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自分の来し方を辿ってみた | トップ | 日米首脳共同声明 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歴史・社会」カテゴリの最新記事