弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

金賢姫拘束の真相(5)

2008-04-26 11:31:26 | 趣味・読書
昨年の12月15日にフジテレビ放送の『大韓航空機爆破事件から20年 金賢姫を捕らえた男たち~封印された3日間~』を見て以来、このブログでは4回にわたって金賢姫拘束に至るできごとで知り得た事実を述べてきました。
昨年12月16日 金賢姫拘束の真相
  12月26日 金賢姫拘束の真相(2)
  12月28日 金賢姫拘束の真相(3)
今年1月29日 金賢姫拘束の真相(4)

参考文献としては、
砂川昌順著「極秘指令~金賢姫拘束の真相
李鍾植著「朝鮮半島最後の陰謀―アメリカは、日本・韓国を見捨てたのか? 「非道な北朝鮮」と「愚かな韓国」
を読みました。

フジテレビの番組を見るまで、金賢姫拘束に至る主役は韓国官憲であると単純に信じていました。ところが、日本の在中東大使館員たちが独自の調査で、バーレーンに潜伏する金賢姫らに到達し、バーレーンから出国しようと試みた金賢姫らを拘束するに至ったらしいことがわかりました。
私はそれでも、韓国官憲ルートと日本大使館ルートがそれぞれ独自に金賢姫に到達したのかなと、類推していました。たとえ日本大使館ルートが存在しなくても、韓国官憲ルート単独でも金賢姫に到達しえたのではないかと。

ところが、砂川さんが書いた極秘指令~金賢姫拘束の真相によると事実は異なるようです。
複数の情報相互間で矛盾がある場合、砂川さんの本の内容に(たとえ誇張はあるにしろ)嘘はないものとして扱いました。矢原さんがご存じの範囲で「それは違う」というところがありましたら、ぜひ教えてください。

《在バーレーン日本大使館での動き》
1987年11月30日午後、アラブ首長国連合の日本大使館から極秘大至急電報が入ります。「大韓航空機が行方不明になったことと、その飛行機からアブダビ空港で降りた客の中に2名の日本人名らしき客がいること、貴国に入国していないか調べてほしい」という内容でした。
調査開始時の時刻は4時6分です。
大使館員として航空会社に問い合わせても相手にしてもらえません。砂川さんは裏ルートを使い、ガルフ航空の搭乗者名簿の閲覧に成功、「シニチ、マユミ」という2名の名前を見つけました。
砂川氏は直ちに空港に向かいます。出入国管理官室で膨大な入国カードの調査を開始します。砂川氏は、2人が搭乗機を予定より早い便に変更したと自分で推理し、その推理に基づいて入国した時刻を勘で予想し、入国カードの山の一部から調査を開始します。勘は当たり、チェックをはじめて6、7分経過後に2人の入国カードが見つかりました。
その日の夜、本国の外務省から出張でやってきた審議官との夕食会の席上で砂川氏は「バーレーン中のホテルに電話をかけまくりましょう」と提案します。まず最初に目星をつけたリージェンシーホテルに電話をしたら、果たして2人は滞在していたのでした。砂川氏が蜂谷真一と電話で話をします。話の様子から、砂川氏はこの2人がただの旅行者でないことに気付きました。テレビ番組では、参事官が蜂谷真一と話を交わしたことになっています。

《韓国官憲ルート》
空港において、砂川氏立ち会いの下で蜂谷真一の所持品チェックをしたところ、在バーレーン韓国大使館の金書記官の名刺が見つかりました。名刺には、大韓航空機の墜落を示唆する文字がボールペンでメモ書きされていました。ホテルで金書記官が2人に接触したことを物語っています。
2人が自殺を図り、病院へ搬送された後、韓国大使館の金書記官が空港に飛び込んできます。「ホテルで会った時は、二人は単なる旅行者だと思ったのですが・・・。まさか、こんな事態になるとはまったく想像だにしていませんでした」
韓国当局から2名について外務省を通じて在バーレーン日本大使館に照会があったことなど、一切登場しません。
これが真実とすると、韓国ルートにおいて、蜂谷真一と真由美にバーレーンで面会までしていながら、単なる旅行者であって爆破犯人であるとは気付かず、あやうく取り逃がすところだった、ということになります。


《在UAE日本大使館での動き》
こちらについて、私は情報をほとんど持っていません。
番組紹介その他によると、「大韓航空機が突然消息を絶った」というそれだけの情報から、矢原さんは「爆破墜落した可能性が高い」「日本人が関与しているのではないか」「搭乗員名簿を自分の目で確かめるべきだ」とお考えになり、調べた結果、問題の飛行機からアブダビで降りた「シニチ」「マユミ」の2名の名前を発見します。
その後の2人の足取りは不明であるまま、中東の各日本大使館に「大至急調査して欲しい」との緊急電を発します。


ところで、写真でイスラームというブログサイトで、昨年末にこの話題が記事になり、矢原さんが発言なさっているのを拝見しています。

このサイトでの矢原さんの以下のご発言が気になっていました。
---矢原さんのご発言---
韓国警察が何故でてきたのか、これも不思議ですよね。
11月30日、私がしつこく調べているのに不審を抱いた、大韓航空のアブダビ支店長からの「日本大使館はいったい何を調べている?」との問いに初めて「二人の日本人名が搭乗者名簿にある。」と答え、ここから韓国側が大騒ぎし始めたのを覚えています。その後韓国大使館とは連絡をとりましたが、韓国警察とは一切接触も、情報交換もしていません。

韓国大使館との関係ですが、私が大韓航空に二人の日本人名を伝えた後、韓国大使館と情報交換を約束し、事実、色々な情報のやりとりをしました。ただ、大韓航空のK支店長や大使館の人たちは、手柄を自分のものにしたいという欲望があったのかもしれませんね。

シンイチとマユミの二人がバーレーンへ向かったとの情報を入手した後は、これをバーレーンに電報と電話で連絡し、その後は連絡を取り合っていましたから、これ以降のアブダビの様子はバーレーンでも承知していた筈です。二人が当初計画していたGF353便からGF003便に変更してバーレーンに向かったこと、バーレーンに二人が入国した情報も含めて、私が入手した情報は全てバーレーンにも連絡してあります。(番組では少々違うようになっていますが)

番組では、塩原、砂川そして私の三人の事だけが強調されていますが、他にも事件解決のキーパーソンが何人かいます。
今回JALが取材を拒否したため、彼らのことはあまり触れられていませんが、JAL(番組では日系航空会社となっていました)のT氏とY氏の協力なくして事件は解決していません。
---引用終わり---

世の中では、「金賢姫拘束に至った捜査の中心は韓国官憲が担っていた。日本は、韓国からの要請で蜂谷真一らのパスポートが偽造であったことを調べたのみ」という常識がありました。
今回のテレビ番組から「韓国官憲は独自に捜査を絞り込んでいたかもしれないが、日本大使館ルートも独自に調査を進めていた」のかな、と想像しました。

しかし、砂川さんの著書と矢原さんのご発言から、全く別の姿が見えてきます。
○蜂谷真一らの存在をあぶり出したのは、矢原さんの独創と努力の賜です。
○矢原さんの調査結果を知らされてはじめて、韓国サイドは蜂谷らの存在を知りました。
○そしてバーレーンの韓国大使館員がホテルで蜂谷らと面会までしていながら、日本人の旅行者としか認識せず、日本大使館が動かなかったらあやうく二人を取り逃がすところでした。


もう一点、二人がバーレーンに飛来したことの確定と、バーレーンの空港で二人の入国カードを発見するいきさつです。
砂川さんの著書では、二人がバーレーンに来たかどうかわからないままに調査を開始し、二人が搭乗便を変更したことは全く砂川さん単独の推理ということになっています。
一方、矢原さんのご発言では、二人がバーレーンに向かったことも、搭乗便を変更したことも、矢原さんが気付いてバーレーン日本大使館に連絡なさったということです。
この矛盾をどう考えるか。
砂川さんが緊急情報の第一報を受けてから二人の入国カードを発見するまで、ほんの数時間です。矢原さんが第二報、第三報を発信しても、受信したバーレーン日本大使館の電信担当官が解読し上司に報告し、外で飛び回っている砂川さんに到達するまでの間に、砂川さんが独自に解明した、ということは十分にあり得るだろうと思っています。


以上のような疑問点を抱えている状況ではありますが、そしてフジテレビの番組作成にはいろいろの問題があったようですが、それにしても、矢原さんのお働きがわれわれの目に触れたというその一点については、本当に良かったと思っています。

ぜひ、矢原さんには本当のところを語っていただきたいと思っています。

追伸:この記事の続編を金賢姫拘束の真相(6)で継続中です。
コメント (37)
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