弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

金賢姫拘束の真相(2)

2007-12-26 22:32:06 | 歴史・社会
フジテレビ「金賢姫を捕らえた男たち~封印された3日間~」について、12月16日に記事にしました。
番組では、金賢姫拘束に至る捜索劇で、UAEとバーレーンの日本大使館に勤務する3人のノンキャリア外交官が決定的な役割を果たしています。一方、前報にも紹介したように、世の中では「韓国官憲が金賢姫らを突き止めた」ことになっています。例えば大韓航空、空中爆発事件(キム・ヒョンヒ事件)については前回書きました。

そこで、ネットで調べられる範囲で調査してみました。

ノンキャリヤ外交官が日本を救ったという記事を見つけました。2007年12月11日・流山の星野さん発信です。
「砂川さんは・・・バーレーンに赴任します。そこで大韓機事件に遭遇することになります。
事件発生から丸1日以上が経過して、ようやく在アブダビの日本大使館から「大至急電」が飛び込んで来るという有り様でした。「親子連れの日本人らしき男女2人が最後の寄港地、アブダビで降機した模様。貴国に入国していないか、至急、確認願う」といった内容が、中東各国の日本大使館に配信されて来ました。
しかし、現地で様々な人脈を得ていた砂川さんは、事件発生直後から多くの情報を掴んでいました。当時の中東各国の状況、航空事情などから、「高飛びするならバーレーンに入国している可能性が高い」と直感。交際のあった空港職員、スチュワーデス、ホテルマンなどからの情報を元に、様々な困難を乗り越えて、ハチヤシンイチ、マユミが泊まっているホテルを突き止めたのです。」

7年以上も前に計画されていた『大韓航空機爆破事件』は以下のように記しています。
「このとき(事件発生直後)、韓国当局は、日本国旅券を所持する怪しい男女二人の存在をつかんでいた。
二人の身元確認電話が日韓両国当局からホテルに入り、在バーレーン韓国大使館副領事金正奇がホテルを訪れ二人を尋問。
12月1日8時頃迄に「蜂谷真由美」の旅券が偽造であることが判明。日本政府が現地の日本大使館員と地元警察官をホテルに差し向けたところ「蜂谷真一」名義の旅券も偽造と判明。.. 二人を連行しようとすると、二人は青酸カリのアンプルを口中で噛み砕き、金勝一は即死、金賢姫は重体で病院に搬送され、なんとか一命をとりとめた。」
この記事は、李鍾植著「朝鮮半島最後の陰謀」(幻冬舎)がネタ本になっているようで、こちらは古書で購入して上記のとおりの内容であること確認しました。


これらの情報から浮かんでくる状況として、どうも《在中東日本大使館ルート》と《韓国官憲ルート》がそれぞれ独立で、事件の核心に迫っていった事実があるように思います。
今回入手した各種情報のうち、相互に矛盾しない部分はいずれも真実とします。相互に矛盾する部分についてはフジテレビ番組内容を正としました。
バーレーン日本大使館の砂川氏らが金賢姫らと接触したいきさつは、日本政府からの指令ではなく彼らの独断であり、地元警察官と共にではなく空港入管当局と共にであり、ホテルで拘束ではなく空港で拘束とします。また、日本外務省は、バーレーン日本大使館に対して韓国ルートの存在を全く通知していないとします。

《在中東日本大使館ルート(日本外務省を含む)》
(1) 在UAE日本大使館員の矢原純一氏の機転により、アブダビで降りた乗客の中にSHINICHI, MAYUMIという日本人らしい名前があることを発見。直ちに、中東各地の日本大使館に、それら日本人が滞在していないか、照会する。
(2) バーレーンの日本大使館員の砂川昌順氏と塩原順氏は、空港で2人の入国カードを発見し、さらに滞在ホテルを探し出して電話での接触にまで成功する。日本外務省の調べでMAYUMI(蜂谷真由美)のパスポートが偽造であることがわかったが、大使館員には捜査権がないので手を出せない。大使館の参事官は、バーレーン警察の協力を得ることも許可しない。
(3) 金賢姫らがホテルをチェックアウトするとき、砂川氏もホテルに詰めており、ホテルの協力でパスポートのコピーまでは取ったが、そこで金賢姫らを見失う。
(4) 砂川氏らは空港に急ぐ。蜂谷らがバーレーン空港から出国しようとするそのとき、砂川氏は意を決して入管当局者に頼み、蜂谷らのパスポートを確保する。さらに事情聴取をしようとしたとき、蜂谷真一は服毒自殺して果てた。

《韓国官憲ルート(日本外務省を含む)》
(1) 韓国当局は、大韓航空機が消息を絶った段階から北朝鮮の関与を示唆していた。
(2) 翌30日午後、韓国政府は日本外務省に《アブダビで降りバーレーンに入国した「蜂谷真一」と「真由美」という日本人親子のパスポート照会》を依頼してきた。
(3) 更に、同日夜には在バーレーン韓国大使館の副領事金正奇がホテルに宿泊している蜂谷親子に接触し渡航目的などを確認した。

こうして、日本大使館ルートと韓国ルートはそれぞれ独立に、奇しくも同じ30日夜に蜂谷親子との接触に成功します。
そのあと、日本大使館ルートは独断で空港での出国阻止行動を取りました。それが事件解決の直接のきっかけになりました。一方、韓国官憲ルートは出国阻止を企画したのか否か、そこは不明のままです。少なくともバーレーン日本大使館の砂川氏らは、日本外務省を通じての韓国からの要請を受け取っていません。
日本外務省は、韓国ルートと日本大使館ルートの両方が事件の核心に迫っていることを知りながら、そのことを日本大使館に通告していません。このことが、日本大使館員3人のお手柄につながったわけですが、なぜ日本外務省は主導的に動かなかったのか、そこは不明のままです。

また、韓国当局は、ホテルで蜂谷親子に実際に面会までしていながら、バーレーンからの出国を阻止する行動を取っていません。二人を泳がせるつもりだったのでしょうか。

フジテレビ番組には砂川昌順著「極秘指令~金賢姫拘束の真相」という種本があるようです。アマゾンに購入手配をかけました。この本から何かわかったら、またアップします。


この事件でお手柄だった3人の日本大使館員は、そもそもどのような経歴の人たちだったのか。またその後どのような人生を歩んだのか、とても興味があります。
長くなったので別の機会に。
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