弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

間違いだらけのクルマ選び(2)

2008-04-10 20:31:38 | 趣味・読書
徳大寺有恒さんの「間違いだらけのクルマ選び」については、2年前に紹介したことがあります
そこにも書いたとおり、1976年に最初に刊行された「間違いだらけのクルマ選び」は、それまでおかしな方向に走っていた日本の乗用車の動向を、たった1冊で正しい方向に転換させる力があったと感じております。

その初年度「間違いだらけのクルマ選び」を、私は間違えて廃棄してしまったのです。とても残念に思っていたのですが、最近になって思い立ち、ヤフオクを調べてみると、出品されているではないですか。
さっそく、希望落札価格で応札したところ、すぐに落札しました。送料込みで1360円でゲットすることができました。さっそく入手した本を手に取ってみました。
  
1976年当時、日本の乗用車は、外からの見てくれとアクセサリーの豪華さばかりを競い合い、クルマの基本性能がなおざりにされる状況でした。徳大寺氏はこの本の中で、そのような現状をめった切りにし、国産の主立った乗用車を個別に徹底的に批評したのです。

この本が出るずっと前、富士重工は「スバル1000」という優秀なクルマを販売していました。当時は画期的なFF(FWD)車でした。ヨーロッパのアルファロメオがこのクルマを下敷きに新車を開発したとのことです。日本のファミリーカーがこぞってFF化するのは、1976年よりまだ後のことです。
ところがこのスバル1000が、トヨタの凡庸なカローラ(当時は当然にFR)に完敗してしまうのです。

1970年頃、日産のブルーバードは510型の時代で、SSSというタイプを出しており、クルマ好きの間では名車と言われていました。FRですが4輪独立懸架です。ところがこのブルーバードが、トヨタの凡庸なコロナに負けてしまうのです。コロナは後輪がリジッドアスクル・リーフスプリングでした。
その後、ブルーバードも後輪独立懸架を止めてしまいます。そして、その610型はブルーバードUと呼ばれ、外観は流線型ですが内部空間の狭いクルマに変身しました。

日本の自動車産業は大いに発展していましたが、その内実は、チャラチャラしたつまらない方向に向かっていました。
ヨーロッパではすでにフォルクスワーゲンのゴルフが登場しており、実用車というのは、外観は小さく、内部空間は広いことが必要であり、FFとすることでその要件を実現していました。
日本はというと、見てくれは大きくかつ格好良く、逆に内部空間は決して広くなく、ドライバーからの視界は最悪であり、くだらないアクセサリーだけが満載です。ラジアルタイヤは装着されておらず、オートマも普及していません。

そのような時代に徳大寺氏のこの本が発売されました。一大センセーションを巻き起こしたと私は理解しています。
私自身は、その後の自分のクルマ選びにおいて、常にその時点で発売されている最新の「間違いだらけ・・・」を購入し、徳大寺氏が及第点をつけた車種を選ぶように心がけました。

そして日本の乗用車の開発動向はその後大きく転換します。ファミリーカーはFFが当たり前、ラジアルタイヤ標準装備、外観は小さく内部空間は広くドライバー視界も広く、4輪独立懸架と、徳大寺氏が指し示した方向に収斂していくのです。
私は、日本自動車業界のこの方向転換は、徳大寺氏の影響が極めて大きかったと推理しています。まさに「社会現象」です。

ところがその影響で、日本のクルマはどれを見ても(私には)同じクルマに見えるようになってしまいました。私から見れば没個性ですね。
コメント
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