大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年11月13日 | 植物

<1780> 大和の花 (82) タニソバ (谷蕎麦)                                      タデ科 イヌタデ属

        

 山地の湿り気のある溝などに生える1年草で、全国的に分布し、朝鮮、中国、台湾、ロシア、東南アジア、アフガニスタン、インド等に見られるとう。大和(奈良県)で私が出会ったのは、標高800メートルほどのところから標高1500メートル付近の道端であった。タデの仲間だろうとは思われたが、はっきりしなかったので図鑑で調べ、タニソバ(谷蕎麦)とわかった。

 高さは40センチほど、暗紫色を帯びた茎はよく枝分かれし、横に広がる特徴がある。葉は互生し、卵形で基部はくさび形であるが、葉柄には翼があり、耳状に広がって茎を抱く特徴がある。花期は8月から10月ごろで、葉腋に小花が集まってつき、花は葉に乗っかるように見えるものが多い。小花の花被は4裂し、うっすらと紅色を帯びる。 写真は分枝して花をつけるタニソバ(左・中・大台ヶ原山で)と花のアップ(右・葉裏や花柄に点々と腺毛が見える。曽爾高原で)。     落葉散る落葉は役目を終へて散る

<1781> 大和の花 (83) ミヤマタニソバ (深山谷蕎麦)                              タデ科 イヌタデ属

                                                   

  山地の半日陰の地に群生して見える1年草で、本州、四国、九州に分布し、国外でゃ朝鮮半島に見られるという。大和(奈良県)では標高800メートルから1500メートル付近でよく見かける。高さが50センチほどになる足許の草花で、先が長く尖ったカイトのような三角状の葉が群がるので、登山道などで出会っても、間違うことはなく、それとわかる。葉の表面には八の字状の黒斑が入るのも特徴の1つである。

  花期は8月から9月ごろで、葉腋から二又の柄を出し、白色のミリ単位の小さな花を1~数個咲かせる。花弁はなく、白い萼が5裂した花をつけ、葉の上に乗っかるように咲くものが多い。この写真を見てもわかるように、まことに小さな可愛らしい花である。天川村の大峯奥駈道の標高1500メートル付近で撮影。    草も木も千差万別 花もまた地上における営みにあり

<1782> 大和の花 (84) クリンユキフデ (九輪雪筆)                            タデ科 イブキトラノオ属

                           

  山地に生えるタデの仲間の多年草で、茎は真っ直ぐ伸びて30センチ前後になる。根生葉と茎葉が見られ、根生葉は長い柄を有し、卵状心形。茎葉は柄がなく、茎を抱くようにつくものが目につく。花期は4月から6月ごろで、茎の先には3センチほど、葉腋には短い穂状花序を出し、白い小花を密につける。小花に花弁はなく、萼が5裂する。雄しべは萼より外に突き出る。

  クリンユキフデの名は、この白い萼の花を雪に見立て、穂状花序を筆と捉え、葉腋の花それぞれを合せて塔の九輪をイメージしたことによる。本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国に見られるという。大和(奈良県)では大峰山脈の標高1300メートルより上部の冷温帯落葉樹林下に自生しているが、自生地、個体数とも少なく、奈良県のレッドリストに絶滅危惧種としてあげられている。減少要因ははっきりしないが、シカによる食害が懸念されている。 写真はクリンユキフデの花(ともに弥山の登山道)。

    孤と自由 自由と孤の身や冬の室

 

<1783> 大和の花 (85) ハルトラノオ (春虎尾)           タデ科 イブキトラノオ属

            

  山地の林内に生える多年草で、冬場は日差しが当たるが、夏場はほとんど日の当らないようなところに小群落をつくって生える。高さは10センチから20数センチほど。くすんだ濃緑色の卵形の根生葉を有し、ときおり登山道の足許に見られる。花期は4月から6月ごろで、花は葉と別に独立した茎を伸ばし、先端に出した数センチの花穂に白い小花を集めて咲かせる。クリンユキフデと同じく小花には花弁がなく、5深裂する白い萼が目につく。雄しべが萼より外に伸び出し、花の姿を特徴づけるのもクリンユキフデに似るところである。

 本州の福島県以南、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では標高1000メートルから1500メートル辺りで見受けられるが、シカの食害や森林の伐採などの影響による環境の変化が減少の要因とみられ、奈良県のレッドリストには絶滅危惧種として見える。なお、名にトラノオ(虎の尾)とある草花は、花序にトラの尻尾をイメージしたもので、ほかにもタデ科の仲間のイブキトラノオ(伊吹虎の尾)があり、別種にサクラソウ科のオカトラノオ(岡虎の尾)、ノジトラノオ(野地虎の尾)、ヌマトラノオ(沼虎の尾)、ゴマノハグサ科のルリトラノオ(瑠璃虎の尾)、ヒロハトラノオ(広葉虎の尾)、ヒメトラノオ(姫虎の尾)などがある。 写真は葉の群がる中から花茎を出して白い花を咲かせるハルトラノオと花穂のアップ(ともに金剛山の山頂付近)。

  冬の室 開く図鑑の春の花

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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