<629> ナヨクサフジ
川筋も 夏への衣替へをせり なよくさふぢの 花の色もて
奈良盆地(大和平野)のちょうど真ん中辺りを東西に流れる大和川の一帯では、今、マメ科の蔓性植物であるナヨクサフジが大きな群落をつくり、そこここで花を咲かせ、河川敷などを青紫色に染めている。
ナヨクサフジは在来のクサフジの仲間で、西洋原産の外来種である。我が国にはシロツメクサなどと同様、牧草や緑肥として導入され、逸出して野生化したもので、本州以西に分布し、道端や川筋に多く繁茂している。同じマメ科ソラマメ属であるが、多年草のクサフジに対し、ナヨクサフジは一、二年草で、青紫色の小花を十から二十個連ねて咲かせ、クサフジと違い、小花の基部が後ろに丸く突き出る特徴がある。
最近、クサフジの仲間で在来のオオバクサフジがほとんど見られなくなり、大和では絶滅寸前にあるという報告がなされているほどであるが、大和川やその支流域ではナヨクサフジが席巻し、春はセイヨウカラシナ、秋はセイバンモロコシといった草花が群落をつくり、一面に花を咲かせるという具合で、よく目につく。いずれも地中海沿岸地方など西洋が原産で、昔は見られなかった草花である。
春 夏 秋
このブログの「<230>セイヨウカラシナ」の項でも触れたが、これら繁茂する外来の野生状況を見ていると、人の交流に沿ってもたらされた植物で、人の行き来の盛んなところに繁殖しているのがわかる。こうして野生化し、繁茂している外来種を見ていると、根を張り、その根によって次の年へと進む多年草と異なり、種子をもって子孫を拡大して行く一、二年草が多いのに気づく。種子は大量に撒き散らされることが多く、野焼きなどの障害があっても、それをクリアして生き延び、芽を出す強さがある。
こうして、一、二年草では、本体が枯れてしまっても、毎年、種子によって命脈を継ぎ、それが繰り返されることになる。そして、春のセイヨウカラシナ(アブラナ科の二年草)、夏のナヨクサフジ(マメ科の一、二年草)、秋のセイバンモロコシ(イネ科の多年草)といった具合に季節によってみごとに棲み分け、繁栄を見せているのである。 写真は左から、春のセイヨウカラシナ、夏のナヨクサフジ、秋のセイバンモロコシの花。いずれも大和川の中流域の土手や河川敷での撮影による。
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