<947> 日本列島所々 (大和より思う)
四季の国列島日本を旅すなり 北から南へ 地図を辿りて
以前、地図を開いて点ずる地名を目に辿る旅の楽しいことを紹介したことがあるが、その地図の旅から日本の四季の風景を想像にまかせて選んでみた。以下がそれであるが、もちろんのこと、これは私の好みによるところで、ひとりよがりとも言えるであろう。東日本大震災では巨大津波によってその風景も随分傷んだと思われるけれども、日本列島の骨格に変わるところは私の心持ちの中にはなく、その想像の中に見える風景はみな美しく、ひとり机上に楽しむところのものである。では、早速、日本列島に見られる私選の風景十傑を紹介したいと思う。 写真は咲き誇る桃の花(奈良県の明日香村で)。
一つ 信州雪の山 純白の雪の嶺の向うに彼岸の国があると 身を切る冷たさの中で夢を抱く早春の身
二つ 大和の春霞 眠れる貴人はますます深い眠りに入り 扉を叩く恋人たちに表の桃の花は咲き満ちる
三つ 築後の秋日和 限りなく明るい青い空 天才詩人の異国趣味の仄暗い土間より出て来て聞く鵙の声
四つ 洛北綾錦 寂光に映える紅葉の一葉一葉 滅んだものたちの歌の数々 その言葉の照り翳り
五つ 奥州若葉光 馳せ参じた武者の数多の命 雨上がりの朝の緑滴る奥また奥の秘話林間の道
六つ 房州浜千鳥 大地と大海を二分けするところ その汀 朝に昼に夕に夜に千鳥の幾羽かの群
七つ 日向の朧月 眼の奥の怒も情念も揺れ動くものみな納まるとき やすらかに語るものの 神の国
八つ 伊予の星月夜 明滅するのは漁火か それとも人家の灯か はたまた星の煌めきか 夏の夜の海
九つ 備州枯野原 鳴きつつ飛び行く鵯一羽 脛に傷の癒えない少年が夢を抱いて駈けた日の心の眺め
十は 道東雪の寒林 悲劇のヒロインは何処へか レクイエムは聞かれず 透明に近い陽の射す雪の寒林
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