大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年02月17日 | 写詩・写歌・写俳

<1510> 馬見丘陵公園の冬鳥たち

        それぞれに 暮してゐるよ 時を抱き 天地の間の 存在として

 奈良県立の馬見丘陵公園は奈良盆地のほぼ中央部に位置する自然公園で、散在する古墳丘と相まって見られる広い芝地や林が見られ、大小の溜池など水辺もあることから、野鳥の多いところとして知られ、この時期には冬鳥に接することが出来る。

  マガモやコガモ、カワアイサなどのカモ類。カイツブリの仲間のカンムリカイツブリ。ツグミの仲間のツグミ、トラツグミ、シロハラ。アトリの仲間のシメ。ホウジロの仲間のアオジ。ヒタキの仲間のジョウビタキ、ルリビタキ等々。その中の今回はカンムリカイツブリ(冠鳰)とトラツグミ(虎鶫)とシロハラ(白腹)を紹介したいと思う。

 カンムリカイツブリはカイツブリ目カイツブリ科の水鳥で、アフリカ大陸の一部やユーラシア大陸の中南部、オーストラリアに生息し、日本には冬季に渡って来る。カイツブリよりも大きく、カモに似るが、頸が長く、嘴も長く、最も特徴的なのは頭の上に黒い冠毛が見られることで、その冠毛が名のもとになったのがわかる。奈良県では非常に珍しく、希少種にあげられている。

 食性は動物食で、魚やカエル、昆虫などを食べる。公園内の下池で一羽確認出来るが、迷鳥ということか。池の中央付近で頭を羽毛に埋めながら水面に漂っている時間が長く、写真に撮りづらい面がある。写真は頸を立てたわずかな間に撮影したもの。頭を埋めながら風上へも移動しているので、水中で脚を使っているのだろうと思われる。

         

 トラツグミはスズメ目ツグミ科の鳥で、ツグミと似るが、体の表面が黄褐色で黒い鱗状斑が特徴的で、日に当たるとサイケ調に見え美しいという。中国北東部、朝鮮半島、オーストラリア方面に分布し、冬季は南アジアの諸島部に渡る。日本では留鳥、もしくは漂鳥として見え、主に亜高山から低山にかけて生息するが、稀に、馬見丘陵公園のような木々の多い公園などにも姿を見せる。雑食性で、ミミズや昆虫、木の実などを食べる姿が見られる。奈良県ではあまり見られず、希少種にあげられている。

 古来より、夜間に鳴く寂しいような独特の声が人の心を捉え、鵺(ぬえ)とか、鵺鳥(ぬえとり)と呼称され、その寂しいような声から「片恋」とか「うらなけ」といった言葉にかかる枕詞として用いられ、『万葉集』にも登場を見る。これはホトトギスと同様で、姿よりも鳴き声に関心が持たれたことを示すものである。夜に聞くということで、言わば、このトラツグミは万葉人の夜という時間帯を想像されるところがある。

 シロハラはトラツグミと同じくツグミ科の鳥で知られる。ヒヨドリに似て、体は灰褐色であるが、一回り小さく、尾がヒヨドリよりも短い。ツグミは腹部に斑点が見られるが、シロハラにはなく、白っぽいのでこの名がある。中国東北部からロシアの沿海方面に生息し、冬になると朝鮮半島から日本にも飛来して来る。トラツグミと同様、雑食性で、地上に降りて昆虫やミミズ、あるいは落ちた木の実などを食べる。

 なお、公園ではまだほかにも多くの野鳥が見られる。例えば、メジロ、ウグイス、シジュウカラ、カワセミ、ヒヨドリ、スズメ、ゴイサギ、アオサギ、バン、オオバン、カワウ、カラス、カルガモ、カイツブリ等々。まさに、この時期の馬見丘陵公園は野鳥のオンパレードである。 写真は左からカンムリカイツブリ、トラツグミ、シロハラ。

 


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