大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年03月02日 | 写詩・写歌・写俳

<911> 馬酔木 (あせび) と 白梅 (はくばい)

       白梅は 万葉きっての 花なれり

 昨日、お水取りの撮影に出かけたとき、撮影場所の確保のため、午後二時半ごろ自宅を出た。雨が降り出したので、今日は撮影者が少なかろうという気になって、途中、大和郡山市に寄り道し、外堀緑地公園の辺りを見て歩いた。白梅が満開でメジロが十羽ほど来てしきりに花に嘴を差し込んでいたのが見られた。二、三日前まではまだ花がなく、辺りは閑散としていたのに、いつの間にか花の彩が見られるというのはよくあること。これは梅の花などにも言えることで、その花に春が来たんだと感じる。公園の白梅は、まさに雨の中であったが、そんな感じがした。

 メジロは相当近くに寄っても逃げる気配がなく、しきりに枝を飛び交っていた。お水取りのお松明を撮影のため、四百ミリレンズを持っていたので、そのレンズを取り出して撮った。メジロは花粉の媒介をすることでよく知られる鳥で、椿が典型的な鳥媒花であるが、梅にも当てはまるようである。梅にとって花粉の媒介はミツバチが主役であるが、雨の降り出しにミツバチの姿はなかった。公園には誰も見かけなかったが、こうしたひっそりとしたところにも、生の一端、一つの世界、持ちつ持たれつの光景が見られる。

    

     奈良は古都 花は馬酔木と 思はるる

  一方、奈良の春を代表する馬酔木であるが、大仏殿の横から二月堂に上がる石段脇に大きい二株が並んでいる。あまり日当たりのよいところではないが、早咲きで、お水取りの始まるころ咲き始める。この三年ほど連続して、三月一日にお水取りの写真撮影に出かけているが、この馬酔木を見て二月堂に向うことにしている。昨日もこのコースを歩いたのであったが、今年は雪にも見舞われ、寒かったので、花は遅いかと思っていたら、よく咲いていた。想定からすれば、今年の花は遅いはずであるが、こういう意外な光景に触れると、草木というのはどのように自分の体調というものを調節しているなだろうかと思われて来る。

    梅 馬酔木 咲きしに思ふ 奈良大和

 梅も馬酔木もともに早春のころから咲き始める花で、昔の人たちは春を迎えるそんな中で、いち早く咲き出す花に興味を抱き、親しんで来たのがわかる。それは、四季に敏感な生活があり、生活自体が四季によって成り立っていたからであろう。『万葉集』には梅を詠んだ歌が百十九首、馬酔木を詠んだ歌が十首にのぼる。梅は庭などに植えられたものであり、馬酔木は自然に生えているもので、万葉歌にはほとんどに花が詠まれている。梅は当時まだ紅梅はなく、すべて白梅で、馬酔木の花も白色であったから、白い花に注目していたことが思われる。奈良大和と言えば万葉、万葉と言えば奈良大和であるから、白梅と馬酔木には万葉の奈良大和が思われるわけである。 写真は花を咲かせるアセビ(東大寺大仏殿横)とハクバイに来て蜜を吸うメジロ(大和郡山市の外堀緑地公園で)。

 

 


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