<3666> 奈良県のレッドデータブックの花たち(171) タヌキモ(狸藻) タヌキモ科
[学名] Utricularia japonica
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種(環境省:準絶滅危惧)
[特徴] 池沼や水田などに見られる水生の多年草で、根を持たず、水に浮遊し、水中に茎を伸ばしてよく分枝し、長さが5センチほどの羽状に裂ける糸状の葉を密に互生する。葉には長さが3~4ミリの緑色を帯びた半透明の捕虫嚢を有し、この嚢(ふくろ)によって水中のミジンコなどの小動物を捕らえ、嚢の中のバクテリアによって消化し、有機栄養物補給する食虫植物として知られる。
花期は7~8月で、10~20センチの花茎を水上に立ち上げ、枝を分けてその先に直径1.5センチほどの黄色花冠の唇形花をつける。花冠は下唇部が広く、中央の膨れた部分に鮮やかな紅色の模様が入り、よく目につく。ほとんど結実せず、茎の先に葉が集まった球形の芽をつくり、水底に沈んで越冬する。よく似るノタヌキモ(野狸藻)は結実し、越冬芽をつくらない。また、タヌキモでは花茎に鱗片状の葉がつくが、ノタヌキモにはつかない。
[分布] 北海道、本州、四国、九州。国外では東アジア、オーストラリア。
[奈良県の分布] 奈良市、宇陀市。
[記事] 大和地方(奈良県域)では山間や丘陵地の溜池に生育するが、自生地が極めて少なく、開発、整備などによる水中植物における生育環境の悪化があるようで、絶滅の危惧が全国に及んでいるようで、懸念されている。 写真はヒツジグサと同時に花を見せるタヌキモ(左)と花のアップ(右)。
生まれ来たってあるからは
誰も故郷のないものはない