大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2015年11月21日 | 写詩・写歌・写俳

<1424> 大和山岳行 (21) 高 見 山

        一組の 夫婦と出合ふ 冬の山

 今日は東吉野村の高見山(一二四八メートル)に登った。高見山は三重県境に連なる台高山脈の北端に位置する山で、山頂には高見明神を祀る高角神社の祠がある。高見明神は神武天皇の東征のとき、道案内をした八咫烏の化身、もしくは、大化改新のとき討たれ、首が高見山まで飛んで来たという伝説の主、蘇我入鹿ではないかとも言われている。このため昔は高角山と呼ばれ、大和と伊勢の分水嶺に当たることもあって、高水山(たかすいやま)の名でも呼ばれた。

                                

  麓を大和と伊勢を結ぶ伊勢街道の一つである和歌山街道が通っていて昔から人々の往来があった。持統天皇が伊勢への行幸に際し通った道と目され、『万葉集』にこのとき従駕した石上麻呂が詠んだ歌(巻一の44番)に去来見乃山(いざみのやま)と見えるのは高見山という。まことに秀麗な山で東洋のマッターホルンと呼ぶ人もいるほどで、その姿は何処から見てもよくわかる。極めて眺望のよい山で、樹氷で名高い山でもある。

 今日は南東側の大峠から登った。奈良県側の道に崩落の危険があり、通行止めになっているため、国道一六六号の高見トンネルを抜けた三重県側から大峠に向かった。大峠に車を止め、そこからすっかり葉を落としたリョウブ、ミズナラ、ヒメシャラ、カエデ類、ツツジ類、ブナなどの落葉樹の自然林の中をこれら雑木の落葉を踏みながらほぼ直登の形で登った。登山開始時点では山頂付近に霧がかかっていたが、予報通り、天気がよくなり、霧も晴れて、山頂には一時間ほどで着いた。

                             

 何年ぶりかの山頂だったが、みごとな樹氷が出来ていた北西側の尾根の斜面のブナなどの高木がすっかり姿を消しているのには驚かされた。南斜面の樹木は傷んでいないので、北からの風にやられたようである。見晴らしがよくなったので、登山者には都合のよいことかも知れないが、冬場の樹氷には打撃である。樹氷は樹木がなくては様にならないので、これはピンチと言える。

 今日の今一つの印象は、登山道の付近にマユミが点在し、葉を落とした冬木の中で紅い実をつけているのがよく目についたことである。 植生の観察には花の時期だけでなく、実がよく目につく冬の時期に歩くのもよいと感じた。 写真上段は高見山(木津峠付近から)、写真下段はすっかり葉を落とした登山道周辺の木々(左)、紅い実を沢山つけたマユミ(中)、ブナなどの樹木が姿を消した樹氷が現れることで知られる高見山山頂付近の斜面 (右)。 [教訓] 世は常ならず。