<1425> 再び 帰り花
帰り花 日が差し来れば 暖かし
昨日、高見山に登ったら山頂近くの疎林の中に紅色を帯びた花を咲かせている高さが二メートルほどの落葉低木が見られた。日当たりのよい南東斜面のところ。雲が切れて暖かな日が差して来ると、五ミリほどの小さな花が点々と点るように紅色を増して鮮やかに見えた。最初は実と思い、近づいて見たのであったが、実ではなく鐘形の花だった。
低木という条件や小さな鐘形の花であることから、ツツジ科のスノキの仲間ではないかと思われた。帰って図鑑を調べてみたら、やはりスノキの仲間以外に該当するものがなかった。スノキの類はツツジと同じで、五、六月ごろに花を咲かせる。ということは、初冬の今ごろ咲く花というのは帰り花ということになる。
帰り花と言えば、ナシやサクラなどのバラ科の木によく見られる秋から初冬の今ごろの時期に咲く季節外れの花を言うもので、狂い花とも呼ばれる。この帰り花はモチツツジなどツツジ科の木にも見られるので、昨日見た帰り花も珍しいものではないかも知れない。
狂い花とは役に立たないあだ花を言うものであろう。散々な言い方であるが、花には違いない。生殖としては役に立たない花かも知れないが、その本体からすれば、生命のバランスにおいてこの狂い咲きの花も大切な役目を担っていると思える。言ってみれば、狂い花は決して無駄花ではなく、無意味な花ではないと言える。 写真は高見山の山頂付近で見かけたスノキの帰り花。このブログの「<48>帰り花」参照。では、狂い花の題で一句。 咲くがよし 花なればそも 狂ひ花