<1427> バッタ
落葉敷く バッタ終末期の 目玉
落葉を踏みしめながら山道を歩いていると、ときおり足許で跳び動くものに出会う。よく見ると、バッタの仲間のミヤマフキバッタである。この時期の山は低山帯でも朝晩はかなりの冷え込みになる。ときには霜の降りることもある。虫たちには厳しい時期である。
寒さがもっと厳しくなると、草の茎に掴ったまま命の果てたバッタを見かけることがあるが、山地を生息圏に持つミヤマフキバッタで、このほど出会ったバッタもこのバッタである。全国各地に見られ、木の葉や草を食べる。翅の短いのが特徴で、夏から秋に活動するので、この時期は一生を終える終末期に当たる。
見ていると、今一つ敏捷さを欠き、日差しに温められた岩の上では逃げる気配もなくじっとしていた。カメラを近づけると頭部の両側についている目玉が一瞬動いたかに見えた。我が方の錯覚かも知れないが、確かにこのバッタには一生の最終期に違いなく、なお、瞠っている目は何かを見ている。何を見ようとしているのか、見ている。
この世の最後の風景と言えようか。確かにそれは自らの命に見合う愛しさにある風景と言ってよいのではないか。後二、三日は落葉の褥や衾の中で夜の寒さを凌ぐのに違いない。写真は落葉が敷く山道で見かけたミヤマフキバッタ。 山満面 初冬の日差し 暖かし