戦後、日本に生まれた私たちは、
国家なき個人の幸せという幻想を刷り込まれ、
家族なき個人の幸せという幻想を刷り込まれた、
そんな世代であった。
DINKs(Double Income No Kids)という言葉が、
選択肢としてもてはやされたが、
それは個人が経済的に豊かであることを
最高の価値と思い、
私的な欲求を満たすことのみを
優先することと同義であった。
必然的に、個人は公的な意識など持たぬようになり、
家や国という概念が、他人事になった。
その当然の帰結として、国民の数は減少し、
国家が衰退の一途を辿るということになってしまった。
私たちの世代は、
砂漠で見えるという蜃気楼のごとき幸せを夢見て歩き続け、
それが蜃気楼であったことを、
文学的修辞としてではなく、
現実のこととして、身を以て体験することになった、
日本史上初めての愚かな世代なのかもしれない。