母親が子どもを殺したり、
子どもが親を殺したり、
若者が子どもたちを殺したり、
実に気分の悪くなる事件が多くなった。
孟子は、秩序ある社会を実現するためには、
親や年長者に対する親愛・敬愛の心を忘れない
「孝悌」の心が大切だと説いた。
『孟子』滕文公(とうぶんこう)上篇には、
この「孝悌」をベースに「五倫」について書かれている。
①父子の親 「父と子の間は親愛の情で結ばれなくてはならない」
②君臣の義 「君主と臣下は互いに慈しみの心で結ばれなくてはならない」
③夫婦の別 「夫婦にはそれぞれ異なる役割があり、馴れ馴れしくなってはいけない」
④長幼の序 「年少者は年長者を敬わなければならない」
⑤朋友の信 「友はたがいに信じ合うことが大切だ」
こうしたことを身につけていなければ、
人間は禽獣に等しい存在になると孟子は戒めたのである。
この価値観は、戦後教育の中で否定され続けてきた。
封建的であるとか、男女平等に反するとか言うのがその理由である。
確かに男女が平等であることも大切だし、
みんなの意見を聞いて物事を決めることも大切だと思う。
しかし、
それらを多少我慢してでも、
子どもが親を殺したり、
親が子どもを殺したりということが、
頻発する社会にしないことの方が、
よほど大切なのではないか。
そんなことさえ考えさせられる昨今である。