Vision&Education

木村貴志の徒然なるままの日記です。

文化と教育

2018年08月18日 | Weblog
子供たちに「知っている画家の名前を挙げてみて。」と言うと、返ってくる答えは、ピカソやゴッホやダビンチといった海外の画家たちの名前です。日本の画家たちの名前はほぼ出てきません。以前は私もその一人でした。しかし、島根県安来市にある足立美術館と出会い、近代日本画の確立のために奮闘した横山大観らの人生とその作品に触れて目が開かれました。さらに、岡倉天心、菱田春草、木村武山、榊原紫峰、竹内栖鳳、北大路魯山人、河井寛次郎、様々な芸術家たちの作品と人生、そして遺した言葉にどんどん魅せられていきました。それは、私自身が生まれ育った母国の日本文化を吸収し、日本人としての感性と教養を深めていく過程であったとも言えます。
 日本一の日本庭園を持つ足立美術館の創設者・足立全康氏が語ったように、「文化」には強い力があります。国と国の付き合いも元をただせば人間と人間の付き合いであり、その人が文化的な豊かさを持っているかどうかで、会話の方向性も自ずと変わってきます。グローバル化の中で、お金と仕事の話しかできないビジネスパーソンでありたくはないと思いますし、子供たちにも豊かな教養人であって欲しいと願います。ヨーロッパなどでは小さな子供たちが学芸員の案内で美術館をよく見学していますが、やはり子供の頃から沢山の本物の芸術に触れ、深い学びを経験した専門家に学ぶことが大切だと感じます。
 心から感動できる芸術の分野は、人それぞれに違うものだと思います。新奇な芸術が好きな人、異国の芸術が好きな人、伝統的な美を好む人、様々です。私はと言えば、その国の自然と風土を背景に生まれた、何百年、何千年の命を持つ芸術作品が好きです。日本に限らず、それぞれの国で、それぞれの自然・歴史・文化・宗教を背景とした芸術が興ってきましたから、それをできる限り沢山知り、美に感動する心を持ち続けたいと思います。
 文化・芸術の教育も、私は素人ながらもっと改善していく必要があると感じています。小学生の時分に私が一番困ったのは、「絵を自由に描きなさい。」と先生に言われることでした。デッサンの基礎も知らないのに自由にというのは難しいと感じたのです。だから足立美術館で出会った北大路魯山人の言葉には非常に納得させられました。「個性だとか、創作だとか、口でいうのはやすいことだが、現実に表現が物をいうようなことは、なまやさしい作業でなし得られるものではない。さあ自由なものを作ってみろと解放されたとしても、決して自由はできないものである。第一過去の人間が作った美術に充分心眼が開かなくては、かなわないことである。過去といっても千年も二千年も前からの美術、芸術に眼が利かなくては、かなわないことなのである。食器師だからというので陶器ばかり観ているぐらいの注視力では乙な器は生まれるものではない。三百年前の茶碗が作りたければ、千年前の美術が分からなくてはかなわぬものである。」
芸術家にならない、なれない私は、もっと教養としての芸術を学び、人生を心豊かなものにしたいと思います。
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