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管理委託会社に支払っていた賃料を賃貸人に直接請求され、債権者不確知を理由とした供託の効力

2008年09月22日 | 最高裁と判例集
 賃貸用建物の管理委託会社に賃料を支払っていた賃借人が賃貸人から直接賃料の支払いを求められた場合に債権者不確知を理由として行った弁済供託の効力 (東京地裁平成15年2月19日判決、判例タイムズ1136号)

 (事案の概要)
 ①Xは平成10年2月、本件建物(賃貸用)を競売により取得し、従前からの賃借人Yに対売る賃貸人の地位を継承した。

 ②同時にXはZに対し全面的に本件建物の管理を委託した。ZはYとの間で賃料を月額21万円に増額する旨合意した。

 ③XとZは管理をめぐって争いになり、Yは平成14年1月Zから、XがZを差し置いて賃料を請求してもXには支払わないでもらいたい旨要請され、他方、Xから直接Xに支払うよう要請されたため、債権者を確知できないとしてXZ両者を被供託者として同年2月3月分を供託した。

 ④これに対しXは、右は債権者を確知し得ない場合に当たらないから供託は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料の支払いを求めた。

 (判決要旨)
 ①Zは本件建物の管理を全面的に委託され、その管理権限に基づいてYに明渡を求める調停を申立てたことがあること。

 ②調停を申立てる権限があることについてはXも了解済みであったと窺われること。

 ③Yが前賃貸人と取交わしていた賃貸借契約がXを賃貸人、Yを賃借人とする契約書に差し替えられていること。

 ④ZはYとの間賃料改定を行っている等をあわせ考えると、Yにおいて、Zを本件建物の賃貸人であるか、賃貸人でないとしても、自ら固有の権限で、訴訟上でも、その取り立てが可能な権限を有する立場にあると判断してしまうことは無理からないところというべきである。

 Zの立場が現に賃料の固有の取立権者であったとすれば、債権者不確知を理由とする弁済供託にいう「債権者」と同視して差支えなく、実際に固有の取立権限がなかったとしても、YがZを取立権者であると判断したことに過失はないといわなければならないから、本件供託は、少なくとも債権者であるYにおいて過失なく債権者である本件建物賃料の賃貸人ないしその取立権者を確知することができない場合であったとして、有効なものであったと認めるのが相当である。本訴請求は理由がない。

 (寸感)
 マンション・アパートや貸地を何件も持っている地主の管理人がどこまで権限を持っているのか、賃借人には分かりにくい。本件の事実関係のもとでは判決は妥当である。

 一般的には、どちらに賃料を支払ってよいか分からないとき、管理会社が賃貸人の代理である場合には、債権者不確知を理由とする供託は無効とされている。だれを相手に供託すべきか迷ったらちょっと慎重になった方がよい。 (2004.02.)


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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