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裁判事例 水漏れ事故の損害賠償債務と連帯保証契約

2008年09月23日 | 最高裁と判例集
甲府地裁判決 平成17年9月16日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 階下の事務所を水浸しにした加害者である賃借人の損害賠償責任とその父親及び賃貸人が被害者と締結した損害に対する連帯保証契約の効力が認められた事例


(1) 事案の概要
 Y3の所有するビルの3階居室を借り受けている賃借人Y1は、平成14年2月、ユニットバスの洗面台の蛇口を閉め忘れたため、床に水がたまり、同じくY3から借り受けている賃借人Xの2階事務所に水漏れによる損害を与えた。
 XのA社長は、現場に来ていたY1の父親Y2に対し、「私は下記の件に付損害を与えそれに対して保証、弁済することを確約いたします。」と書かれた連帯保証契約書面に、Y1とY2に署名を求めた。Y2はなかなか署名に応じなかったが、A社長のしつこい求めに根負けし、署名に応じた。また、A社長は、水漏れ事故が2回目であることから、本件ビルには構造上の問題があることを疑い、所有者・賃貸人Y3にも本件書面への署名を求めた。Y3も署名に躊躇したが、最後には署名に応じた。
 Xは、Y1、Y2、Y3に対して、連帯保証契約等に基づき損害賠償金3,940万円余を請求した。

(2) 判決の要旨
 ①Y1のXに対する過失不法行為責任の成立には争いがない。
 ②Y2は、具体的な保証意思はなかったと主張するが、Y2は、本件書面を読んだ上で署名したと認めざるをえない。また、25歳のひとり暮らしの息子が不始末をしでかした場合、被害者がその父親に対して賠償を求めるのは、法律上はともかく、社会通念上それほどおかしいとはいえないのが実情であるから、A社長の意図を、Y2は十分理解していたと認められる。また、警察への提出書類と認識したとの錯誤の事実は認められない。
 ③Y3は、冷静に考慮し、署名しており、被害現場の状態も自分自身で見ていたのであるから、Xに相当大きな被害が発生することも予想できたはずである。Y3は、十分承知したうえで署名したのだといわざるをえないから、保証意思があったのは明らかである。心裡留保の事実は認められない。「家主としての管理責任があると誤解した」としても、動機の錯誤に過ぎず、これが表示された事実はないから、錯誤無効は成立しない。脅迫の事実も認定することができない。
 ④Xは、Y1に対しては不法行為に基づき、Y2とY3に対してはいずれもその連帯保証契約に基づき、3,940万円余を支払うよう請求することができる。原告の主張は全部正当である。


(3) まとめ
 本件では、保管されていた商品が被害にあったことから損害額が大きなものとなった。裁判所は、原告の損害額を4,110万円と認定したが、請求額が3,940万円余であることから、原告の請求を全部認容するにとどめている。


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